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1章
2話「仔羊様!?」
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「はぁ、新人さんですか? 装備を見ればすぐにわかりますから」
「そりゃどーも」
物凄い投げやりの受付嬢で名札を見ると、リンカと書いてあった。
どうやら俺達が身に付けている武器は見てない様だ。
「で? 新人の癖にカップルで来たのですか? 良いですか? 冒険者稼業はそんなに甘いモノじゃありませんよ?」
「はぁ? 誰がこんな奴とカップルですか!」
ルッカさんがムキになって否定した。
「そうですか、それは失礼しました。最近振られたばかりの私への当てつけかと思いました」
リンカさん、何だかトゲトゲしいんですが。
てーか、その話どーでも良くない?
「そりゃ、そんな性格じゃ、なぁ」
俺はボソリと呟くと、リンカさんがコホンと咳払いをした。
やべ、聞かれたみたいだ。
「セザール学園の卒業生ですか? この際年下で良いから誰か紹介してくれませんか?」
「フンッ! 誰がアンタみたいな年増を好きになるもんですか!」
ルッカさんは、リンカさんに敵意向きだしだ。
確かに言葉はキツイが、そこまでの事か?
「いや? 居るんじゃない? ほら、デビッド、アイツなら年上でも関係なさそうだぜ?」
「あはっ、カイルくぅん? ねぇ、明日の朝ご飯どうなっても良いのかなぁ? 私、手が滑って塩と砂糖入れ間違えちゃうかもよ?」
ルッカさんの言葉に俺の背筋がぞっとした。
「それは困るけど?」
「困るよね? 困っちゃうよね? 卵焼きに塩じゃなくて砂糖が入ってたら大変だよね~?」
つまり、甘い卵焼き。
「そうなのかなぁ?」
「良いの、良いからセザール学園にロクな男はいない。分かった?」
「うーん、まぁ、確かにルッド君とか個性的だし居ないと言えば居ないのか」
「そうですか、それは残念ですね。それではお名前をお伺いしましょうか」
リンカさんもまた、ルッカさんに敵意をむき出している。
「俺はカイル・レヴィンだけど」
「私はルッカ・ランティスよ!」
「はいはい、カイルさんにルッカさんね」
リンカさんは手元の資料をめくりながらテキトーに聞いている。
と思いきや、何故かリンカさんが急にメガネをクィッと上げた。
「わぁっ! す、すごいですねカイルさん!」
リンカさんは琥珀色の瞳をキラキラと輝かせ、にこやかな笑顔を見せた。
「何がですか?」
「全教科トップの成績で卒業なされたんですか! きゃーすごいすごい☆」
「まぁ、そうですけど」
リンカさんは、両手を胸元で組みながら今までと真逆の態度を取った。
「えへへへ、今度良かったら一緒にお食事でもどうですかぁ?」
リンカさんが胸元をチラっとみせながら上目遣いをして来た。
ご飯なら別に構いはしないがと思うが、
「ごめんなさいね、カイルは予定がつまってるの、向こう3年位」
ルッカさんが、俺の前に割り込んで来た。
「あらぁ? ルッカさんでしたかぁ? カイルさんの恋人じゃないんですよねぇ? アナタはカンケーないんじゃないですかぁ?」
二人は、何とも言い難いキツイ空気を出している。
その隣ではさっきの女の子が、この様子を見てアワアワしている。
「大丈夫?」
「え? あ、は、はい、その、大丈夫です」
女の子がぎこちない笑顔で返事をすると、
「カイルさん! 何浮気してるんですかッ」
「君は女の子なら誰でも良いのッ!?」
言い合っていたリンカさんとルッカさんが、俺の方を見て捲し立てて来た。
「俺は誰とも付き合って無いけど」
「プリーストなんて可愛くて純真な女の子に手出すのは私が許さないから!」
「そうですよ、プリーストは男からモテモテですからカイルさんには勿体無いですよ」
どーしてそうなるのだ。
と思う隣で女の子が「私は別に」と小声で俺をチラチラ見ながら呟いていた。
ふむぅ、そういう事なら俺としてはなんか困ってそうなこの女の子に手を貸したいところだが。
「ルッカさんって困ってる人見たらほっとけないんじゃなかったっけなー?」
「む、むぐぐぐぐ、そ、そうよ、カイルがどうしても言うんなら仕方ないんだからね!」
痛いところを突かれたルッカさん。
それでも自分の信念を曲げる気は無いみたいだ。
「カイルさん」
リンカさんが急に真顔となって俺に耳打ちを始めた。
「本気ですか? 新人プリーストなんて足手まとい連れてもカイルさんが損するだけですよ? 守る者も増えて負担は増えるけど、報酬は分配しなきゃいけなくなりますよ?」
「俺は気にしませんよ」
「はぁ、カイルさんはセザール学園トップでしたよね? そこのお嬢ちゃんは多分ド新人でカイルさんとの実力差は凄いですよ?」
「困ってる娘をほっとく訳にはいきませんよ」
ここで、話を横から聞いていたルッカさんが口をはさむ。
「私になら気にしないけど、この娘にまではひどくない?」
「そうですね。否定しませんわ、優しくて大人しそうで純粋そうなプリースト相手に私が言ったことはヒドイと思います」
リンカさんは非を認めているみたいだけど、瞳の奥底から何か信念の様なモノを感じられる。
「Dランクにもなれば、プリーストは物凄く男性からモテるんですよ。カイルさんよりも強い人達からのパーティの誘いが増えます、それも段違いに」
リンカさんからは、プリーストに何か恨みがあるかの様な気配を感じられる。
俺は彼女の言葉を黙って聞く事にした。
「使い物にならなかった時期を支えてくれた前衛の人達は簡単に捨てられます。私は何度も見てきました。それに、これが一番大事ですよ?」
リンカさんが俺がじっくりと見据え、少し間を置いた。
「私のカレシ、プリーストに奪われたのよッ」
リンカさんが一番言いたかったことはこれだろうか?
ずいぶんとヒートアップしていたらしく、耳打ちだったハズの声量はいつの間にか冒険者ギルド内にひびき渡るレベルになっていた。
それを聞いていた彼女の上司らしき人が軽く注意をし、リンカさんは顔を真っ赤にしながら「すみません」と申し訳無さそうに謝った。
「それでも私は構わないよ、ね? カイル?」
ルッカさんがニッと笑いながら俺に尋ねる。
俺は元よりそのつもりだ。
誰かを助ける事に代償を求めたいとは思わない。
「俺も構わない」
隣でおどおどしている少女が申し訳無さそうにしている。
「分かりました。冒険者ギルドとしてこれ以上干渉は出来ません」
リンカさんは、俺達が請けられそうな依頼書を見つくろい、机の上に並べた。
・ゴブリン討伐
・ワーラット討伐
・見習いオーク討伐
内容はこの3種類で初級者冒険者がこなすには丁度良い難易度だ。
「そりゃどーも」
物凄い投げやりの受付嬢で名札を見ると、リンカと書いてあった。
どうやら俺達が身に付けている武器は見てない様だ。
「で? 新人の癖にカップルで来たのですか? 良いですか? 冒険者稼業はそんなに甘いモノじゃありませんよ?」
「はぁ? 誰がこんな奴とカップルですか!」
ルッカさんがムキになって否定した。
「そうですか、それは失礼しました。最近振られたばかりの私への当てつけかと思いました」
リンカさん、何だかトゲトゲしいんですが。
てーか、その話どーでも良くない?
「そりゃ、そんな性格じゃ、なぁ」
俺はボソリと呟くと、リンカさんがコホンと咳払いをした。
やべ、聞かれたみたいだ。
「セザール学園の卒業生ですか? この際年下で良いから誰か紹介してくれませんか?」
「フンッ! 誰がアンタみたいな年増を好きになるもんですか!」
ルッカさんは、リンカさんに敵意向きだしだ。
確かに言葉はキツイが、そこまでの事か?
「いや? 居るんじゃない? ほら、デビッド、アイツなら年上でも関係なさそうだぜ?」
「あはっ、カイルくぅん? ねぇ、明日の朝ご飯どうなっても良いのかなぁ? 私、手が滑って塩と砂糖入れ間違えちゃうかもよ?」
ルッカさんの言葉に俺の背筋がぞっとした。
「それは困るけど?」
「困るよね? 困っちゃうよね? 卵焼きに塩じゃなくて砂糖が入ってたら大変だよね~?」
つまり、甘い卵焼き。
「そうなのかなぁ?」
「良いの、良いからセザール学園にロクな男はいない。分かった?」
「うーん、まぁ、確かにルッド君とか個性的だし居ないと言えば居ないのか」
「そうですか、それは残念ですね。それではお名前をお伺いしましょうか」
リンカさんもまた、ルッカさんに敵意をむき出している。
「俺はカイル・レヴィンだけど」
「私はルッカ・ランティスよ!」
「はいはい、カイルさんにルッカさんね」
リンカさんは手元の資料をめくりながらテキトーに聞いている。
と思いきや、何故かリンカさんが急にメガネをクィッと上げた。
「わぁっ! す、すごいですねカイルさん!」
リンカさんは琥珀色の瞳をキラキラと輝かせ、にこやかな笑顔を見せた。
「何がですか?」
「全教科トップの成績で卒業なされたんですか! きゃーすごいすごい☆」
「まぁ、そうですけど」
リンカさんは、両手を胸元で組みながら今までと真逆の態度を取った。
「えへへへ、今度良かったら一緒にお食事でもどうですかぁ?」
リンカさんが胸元をチラっとみせながら上目遣いをして来た。
ご飯なら別に構いはしないがと思うが、
「ごめんなさいね、カイルは予定がつまってるの、向こう3年位」
ルッカさんが、俺の前に割り込んで来た。
「あらぁ? ルッカさんでしたかぁ? カイルさんの恋人じゃないんですよねぇ? アナタはカンケーないんじゃないですかぁ?」
二人は、何とも言い難いキツイ空気を出している。
その隣ではさっきの女の子が、この様子を見てアワアワしている。
「大丈夫?」
「え? あ、は、はい、その、大丈夫です」
女の子がぎこちない笑顔で返事をすると、
「カイルさん! 何浮気してるんですかッ」
「君は女の子なら誰でも良いのッ!?」
言い合っていたリンカさんとルッカさんが、俺の方を見て捲し立てて来た。
「俺は誰とも付き合って無いけど」
「プリーストなんて可愛くて純真な女の子に手出すのは私が許さないから!」
「そうですよ、プリーストは男からモテモテですからカイルさんには勿体無いですよ」
どーしてそうなるのだ。
と思う隣で女の子が「私は別に」と小声で俺をチラチラ見ながら呟いていた。
ふむぅ、そういう事なら俺としてはなんか困ってそうなこの女の子に手を貸したいところだが。
「ルッカさんって困ってる人見たらほっとけないんじゃなかったっけなー?」
「む、むぐぐぐぐ、そ、そうよ、カイルがどうしても言うんなら仕方ないんだからね!」
痛いところを突かれたルッカさん。
それでも自分の信念を曲げる気は無いみたいだ。
「カイルさん」
リンカさんが急に真顔となって俺に耳打ちを始めた。
「本気ですか? 新人プリーストなんて足手まとい連れてもカイルさんが損するだけですよ? 守る者も増えて負担は増えるけど、報酬は分配しなきゃいけなくなりますよ?」
「俺は気にしませんよ」
「はぁ、カイルさんはセザール学園トップでしたよね? そこのお嬢ちゃんは多分ド新人でカイルさんとの実力差は凄いですよ?」
「困ってる娘をほっとく訳にはいきませんよ」
ここで、話を横から聞いていたルッカさんが口をはさむ。
「私になら気にしないけど、この娘にまではひどくない?」
「そうですね。否定しませんわ、優しくて大人しそうで純粋そうなプリースト相手に私が言ったことはヒドイと思います」
リンカさんは非を認めているみたいだけど、瞳の奥底から何か信念の様なモノを感じられる。
「Dランクにもなれば、プリーストは物凄く男性からモテるんですよ。カイルさんよりも強い人達からのパーティの誘いが増えます、それも段違いに」
リンカさんからは、プリーストに何か恨みがあるかの様な気配を感じられる。
俺は彼女の言葉を黙って聞く事にした。
「使い物にならなかった時期を支えてくれた前衛の人達は簡単に捨てられます。私は何度も見てきました。それに、これが一番大事ですよ?」
リンカさんが俺がじっくりと見据え、少し間を置いた。
「私のカレシ、プリーストに奪われたのよッ」
リンカさんが一番言いたかったことはこれだろうか?
ずいぶんとヒートアップしていたらしく、耳打ちだったハズの声量はいつの間にか冒険者ギルド内にひびき渡るレベルになっていた。
それを聞いていた彼女の上司らしき人が軽く注意をし、リンカさんは顔を真っ赤にしながら「すみません」と申し訳無さそうに謝った。
「それでも私は構わないよ、ね? カイル?」
ルッカさんがニッと笑いながら俺に尋ねる。
俺は元よりそのつもりだ。
誰かを助ける事に代償を求めたいとは思わない。
「俺も構わない」
隣でおどおどしている少女が申し訳無さそうにしている。
「分かりました。冒険者ギルドとしてこれ以上干渉は出来ません」
リンカさんは、俺達が請けられそうな依頼書を見つくろい、机の上に並べた。
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