Ex冒険者カイル

うさぎ蕎麦

文字の大きさ
12 / 105
1章

4話「初依頼2」

しおりを挟む
「魔力の消耗はどう?」
「結構使っちゃったみたい」

 キース・クレッセントを使う代償はあるみたいだ。

「なら次は俺の番だな」
「そうはさせないよ、私だって近接戦得意なんだから!」

 ルッカさんは、キース・クレッセントの先端を俺に見せ付けながら言う。
 三日月状で鋭利な刃になってるそれは、ある程度の近接攻撃能力を持っている様に見える。

「そんな事だろうと思った。 さっ、敵さんが来るぜ?」

 今の雷魔法に驚いた見習いオーク達がこちら方へ向かって来る気配を探知した。
 俺はホールス・ソーラを構え、応戦の準備を整えた。

「ち、ちょっと待って下さい」

 ルミリナさんが『防御障壁(プロテクション)』『筋力増強(パワーアップ)』を3人に掛けた。
 続いて俺も、念には念を入れて同じ魔法を掛けた。

「ありがとう、敵さん俺達に気付いたみたいだな、平原まで下がろう」
「ええ!? ここで良くない?」
「炎の魔法使いたくないの?」
「むぅー、ずるいよっ」

 ルッカさんが頬を膨らませ拗ねて見せた。

「決まったな、下がるぞ」

 見習いオーク、豚の獣人型魔族だ。
 俺は見習いオークの群れに対し『氷矢(アイスアロー)』を3発放ちヘイトを稼ぐと平地に向け後退した。
 予想通り、見習いオーク達は俺たち目掛けて突撃して来た。
 第一陣の数は10体だ。

「行くよ!」

 見習いオーク達を平地まで誘い出した所で、ルッカさんが『炎球(ファイアボール)』を5発放った。
 ルッカさんの放った炎球(ファイアボール)が見習いオーク達に直撃すると、一瞬で全身を炎で包み込み黒焦げの物体へ変化させた。
 当然、力尽き果てその場に崩れ落ちる。
 命を失った魔物は5秒程経った所で魔石へ変化させた。
 残り5体。

「俺の番だ」

 俺は残った見習いオークに対し『機動減少(スロウリィ)』を掛け移動速度を激減させた。
 それを見た、ルミリナさんが同じ魔法を重ね掛けし、見習いオークの機動性は亀よりも遅いレベルまで落ちた。
 俺は残った見習いオーク達の右側に回り込み、斬撃を仕掛けた。

「!!!?」

 俺に斬られた見習いオークが目を見開き驚愕の表情を浮かべる。
 俺の方へ振り向いた時、既に奴の上半身と下半身は分離していたからだ。
 コイツもまた、5秒程したところで魔石へ変化した。
 ホールス・ソーラもまた、素晴らしい性能だと感じた。
 普通の鉄剣なら、見習いオーク相手でも2、3回は斬らないと倒せないと思うからだ。
 俺は3度バックステップを踏み、一度距離を取って態勢を整え2体目の見習いオークへ斬撃をしかけ、同じく一撃で仕留める。
 同じ戦法で、合計4体の見習いオークを討伐した所で、

「私だってッ!」

 キース・クレッセントを大きく振り上げ、ルッカさんが見習いオークに接近戦を仕掛けた。

「全く、ルッカさんはウィザードなのに」

 俺は呆れながら、すこしだけ距離を取った。
 ルッカさんの一撃は見習いオークの腕を切り飛ばした。
 返す一撃で胴を薙(な)ぐぎ致命傷を負わせるが、一撃で両断するまでには至らない。
 倒し切れないと分かったルッカさんは、一度バックステップを踏み上方へ跳躍すると、両手で持ったキース・クレッセントを見習いオークの頭上から振り下ろした。

「どうよ!」

 ルッカさんの一撃を受けた見習いオークは昏倒し、おびただしい量の血を流している。

「これだけ出血していればもう良いんじゃないか?」
「そうね」

 にっこりと笑顔を見せポーズを決めるルッカさん。
 その後ろでは、慣れない人間から見れば惨状と思える状況を見せられたルミリナさんが目を逸らしていた。
 1分程経った所で、オークは魔石へと変化した。
 多分失血死だろう。

「確か10体倒せば良かったよな?」
「そうね、でも、まだ魔法力はあるよ」
「じゃ、もう少し倒しておこうか」
 ルッカさんは、もう一度森の奥に居る見習いオークに雷魔法を放ち、別の小隊を誘い出した。
「へぇ、なんかボスっぽい奴出てきたじゃん」
「でも弱そうだよ?」

 見習いオークの小隊の中に、1体だけ1回り大きいオークが居た。
 多分見習いオークを指揮している、見習いを卒業したオークだろう。
 ただ、ルッカさんが言う通り俺達からしたら大した事は無い。
 さっきと同じ様に、平原に誘い出してルッカさんの魔法で数を減らし、オーク達の機動力を魔法で奪ってから1体ずつ斬り捨てる。
 やっぱり最後のオークはルッカさんが近接攻撃で倒しがって、俺は静観。
 見習い多くよりも少し手数が増えたが似た様な感じで討伐に成功。

「まだやる?」
「んーん、飽きちゃった」

 というルッカさんだが、多分魔法力が底尽きたのだろう。

「じゃ、帰ろっか」

 見習いオークの討伐を終えた俺達は魔石を回収し、セザールタウンへ帰還した。


―魔王城―


 セザール国と魔族国との国境を越えた先に魔王の居城がある。

「魔王様、シュヴァルツサーヴァラーとやらに強くて裏切りそうな人間を見付けましたぜ」 

 使い魔らしき小型悪魔の報告を受けた魔王は沈黙を守っている。

「あっしはその人間を利用しに行きまっせ」
「神々の遺物はどうだ?」
「人間から奪い取るつもりですぜ、自分が利用する人間に奪わせてから神々の遺物事そいつを奪うつもりでっせ」

 再度魔王は沈黙で肯定の意を示した。

「あっしは行って来ます」

 小型悪魔は任務遂行の為魔王城を飛び立った。


―冒険者ギルド―

 
 夕陽が沈むころ合いに俺達は冒険者ギルドへ戻って来た。
 受付にはリンカさんが暇そうにあくびをしながらボーっと冒険者ギルドの入り口付近を眺めていたが、俺と目が合うとにこやかな笑顔を見せ手を振った。

「カイルさんおかえりなさーい☆ 早かったですね! やっぱり成績トップですから、見習いオーク程度さっさとバッサバッサのギッタンギッタンにしちゃいましたか?」

 俺が受付の前辿り着くと、瞳を輝かせながら両手で俺の手を握り締めるリンカさんだ。
 隣に居るルッカさんとルミリナさんをガン無視して。

「いや、ルッカさんやルミリナさんの力があってこそだよ」

 俺が二人をカバーすると、
 リンカさんとルッカさんがほぼ同タイミングで視線を重ね、痛烈に睨み合う。
 まるで中間地点に火花が散る勢いで。
 ルミリナさんはやっぱり、おどおどしている。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

お好きになさって下さい、私は一切気にしませんわ

Kouei
恋愛
婚約者のクレマンド様は、いつも私との約束を破ってばかり。 理由は決まって『従妹ライラ様との用事』 誕生日会にすら来なかった彼に、私はついに告げた。 「どうぞ、私以外のご令嬢をエスコートするなり、お出かけするなり、関係を持つなり、お好きになさって下さい。私は一切気にしませんわ」 二人の想いは、重なり合えるのだろうか …… ※他のサイトにも公開しています。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

【完結】悪役令嬢ですが、断罪した側が先に壊れました

あめとおと
恋愛
三日後、私は断罪される。 そう理解したうえで、悪役令嬢アリアンナは今日も王国のために働いていた。 平民出身のヒロインの「善意」、 王太子の「優しさ」、 そしてそれらが生み出す無数の歪み。 感情論で壊されていく現実を、誰にも知られず修正してきたのは――“悪役”と呼ばれる彼女だった。 やがて訪れる断罪。婚約破棄。国外追放。 それでも彼女は泣かず、縋らず、弁明もしない。 なぜなら、間違っていたつもりは一度もないから。 これは、 「断罪される側」が最後まで正しかった物語。 そして、悪役令嬢が舞台を降りた“その後”に始まる、静かで確かな人生の物語。

処理中です...