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1章
40話「闘神の斧」
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-魔王城-
セザール大陸に存在する、人間と魔族が住む国境線を越えた先に魔族が拠点とする城がある。
魔王軍は、賢神の石を手に入れたダストを迎え入れようとし、ダストもまた満身創痍であり帰る場所も無かったが故その申し出を受け入れたのであった。
「ルッセルんなろう! ふざけるんじゃねぇぇ! テメーさえ居なければセザールタウンは俺様の物になってたじゃねぇかああああ!」
魔王軍によりダストに与えられた個室に辿り着くや否や、ルッセルに対する悔しさに満ち溢れた叫びをあげた。
その声量はダストの小柄さとは正反対であり、近くに居た他の魔族にも聞こえた。
新しい来客の異常事態を心配したのか一人の魔族がダストに近付いて来た。
彼は獅子獣人系の魔族で、分厚い筋肉の鎧に包まれておりいわずとも武闘派である事が伺える。
「ほう、貴様が人間を裏切った奴か、贅沢な事言ってんじゃねぇ、貴様は賢神の石を俺等魔族の元へ持ち運ぶ功績を上げただろうが」
「うるせぇ! ルッセルさえ居なければ今頃俺様がセザール国王になってんだよっ!」
武闘派の魔族に対しても一切怯む様子の無い事から、ダストがルッセルに負けた事がどれだけ悔しかったのかを物語っている。
「フン、なら次勝てば良いだけの事だ」
「ぐっ、テメェに俺様の気持ちが分かってたまるかっつーの! どいつもコイツも何かにつけてルッセル、ルッセルって言いやがる俺様の気持ちがッ」
ダストは魔族との体格差をもろともせず詰め寄り鋭くにらみつけた。
「俺は人間で言う武人とやらだ、貴様がライバルと思う相手に勝てない気持ちは分からんでもない、貴様は生きているのだろう? 貴様、死に行く仲間の事を知らない訳は無かろう?」
「だからなんだっつーんだ! 死んだ奴はよえぇのが悪いだけじゃねぇかっ!」
「死んだ者はライバルを越える機会すら失われる、だが貴様はまだ生きている、貴様がライバルとして憎んでいるルッセルを越える機会は残されている」
まさか、魔族に説教されるとは! ダストは悔しさのあまり唇を噛み締めた。
「クソが!! ふざけんじゃねぇ!!!!」
「今は傷を治せ、俺が聞いた話だが、貴様の持つ【賢神の石】の他にもアーティファクトとやらは存在する、魔王軍は手始めに【闘者の斧】とやらを手に入れるつもりらしい」
魔族の話により戦力増強の目途を確認できたのか、ダストが肩に居れていた力を抜いた。
「それは、お前が使うのか?」
「それは分からん、俺が選ばれるなら使うに過ぎん」
ダストが見る限り、今自分の目の前に居る魔族こそ【闘者の斧】とやらを扱うにふさわしいと思ったが――。
アーティファクトの適正に関する問題があるかもしれない、いや、こんなどうでも良い奴の事を考えても仕方があるまい。
「フン、精々【闘者の斧】に選ばれる様頑張る事だな、俺様はお前に言われた通り傷を治す事に専念させて貰う、覚えてろ、ルッセル! クソがッ」
ダストは魔族に対し吐き捨てると、自分が与えられた部屋へ向かった。
―セザール学園学長室―
「大変な事になったんだなぁ」
青色の羊の着ぐるみを着た3頭身サイズのおっさん、純愛な仔羊様が学長の椅子に座りながらおにぎりを貪っている。
「そうですね、【賢神の石】を魔族に奪われてしまったのは痛手です」
その目の前にはヴァイスリッター、ギルドマスターのルッセルが居る。
「そうなんだなぁ~まぁさか、ダスト君が人間を裏切るなんて想定外だったんだなぁ~」
おにぎりを半分食べ、目の前に梅干が現われたところで仔羊様はがっくりと肩を落とす。
「私もそう思います、【賢神の石】の力に溺れセザールタウンを支配しようとする事までは予測が付きましたが」
だからと言って、仮にダストが人間を裏切る事が予測出来た所で同じ現在がある事には変わらないだろう。
「セザール学園の今年の新入生と在学生見てもカイル君以上の、下手したらルッカ君以上の素材は無いんだなぁ~、引き続きカイル君達の育成は任せるんだなぁ~」
仔羊様は梅干しを取り出し嫌そうに見つめると渋々一飲みにし、強烈な酸味に負けたのか何とも言い難い表情を見せた。
「分かりました、これからの作戦は如何致しましょうか?」
「そうなんだなぁ~調査班の報告によると、どうも【闘者の斧】ってアーティファクトがセザール大陸にあるらしいんだなぁ、なんて言ってたんだなぁ? そう、炎獄の谷ってところにあるって噂何だなぁ」
「炎獄の谷ですか? 以前私が探索した事がありますがその様なモノがある感じはしませんでしたが」
少なくとも自分が練度の高い人間である時に探索したエリアに存在するアーティファクトを見落とすとは思えない。
「神々の遺物なんだなぁ、ある日突然出没するのはよくある話なんだなぁ~。 炎獄の谷はAランク冒険者ならどうにか出来るんだけどもぉ~、ダスト君の件があるんだなぁ、何処に魔族に寝返る人間が居るか分からないんだなぁ~」
冒険者ギルドに依頼してSランク冒険者に任せる方が楽と思いたいが、仔羊様の言う通りの人間に対してその情報が渡るリスクもあれば、手にしたアーティファクトが魔族に渡ってしまう危険も増えるだろう。
「それもそうですね、つまり、我々のギルドが秘密裏にアーティファクトを手に入れろと言う訳ですね」
「そうなんだなぁ、君のギルドにはエリク君やセフィア君って優秀な人材が居るんだなぁ~それ以外の高ランク冒険者は信用出来ないんだなぁ~ルッセル君なら分かってると思うんだけどぉ~」
仔羊様は残りのおにぎりを全て口に放り込みもごもごさせた。
「やはり学長も同じ事をおっしゃいますか」
「なぁにを言ってるんだなぁ~? ボォクは善愛な仔羊なんだなぁ~、そーゆー事だから宜しく頼むんだなぁ~」
仔羊様はくるりんぱ、をして転移魔法を発動させた。
仔羊様が何処かへ行った事を確認したルッセルは学長室を後にした。
セザール大陸に存在する、人間と魔族が住む国境線を越えた先に魔族が拠点とする城がある。
魔王軍は、賢神の石を手に入れたダストを迎え入れようとし、ダストもまた満身創痍であり帰る場所も無かったが故その申し出を受け入れたのであった。
「ルッセルんなろう! ふざけるんじゃねぇぇ! テメーさえ居なければセザールタウンは俺様の物になってたじゃねぇかああああ!」
魔王軍によりダストに与えられた個室に辿り着くや否や、ルッセルに対する悔しさに満ち溢れた叫びをあげた。
その声量はダストの小柄さとは正反対であり、近くに居た他の魔族にも聞こえた。
新しい来客の異常事態を心配したのか一人の魔族がダストに近付いて来た。
彼は獅子獣人系の魔族で、分厚い筋肉の鎧に包まれておりいわずとも武闘派である事が伺える。
「ほう、貴様が人間を裏切った奴か、贅沢な事言ってんじゃねぇ、貴様は賢神の石を俺等魔族の元へ持ち運ぶ功績を上げただろうが」
「うるせぇ! ルッセルさえ居なければ今頃俺様がセザール国王になってんだよっ!」
武闘派の魔族に対しても一切怯む様子の無い事から、ダストがルッセルに負けた事がどれだけ悔しかったのかを物語っている。
「フン、なら次勝てば良いだけの事だ」
「ぐっ、テメェに俺様の気持ちが分かってたまるかっつーの! どいつもコイツも何かにつけてルッセル、ルッセルって言いやがる俺様の気持ちがッ」
ダストは魔族との体格差をもろともせず詰め寄り鋭くにらみつけた。
「俺は人間で言う武人とやらだ、貴様がライバルと思う相手に勝てない気持ちは分からんでもない、貴様は生きているのだろう? 貴様、死に行く仲間の事を知らない訳は無かろう?」
「だからなんだっつーんだ! 死んだ奴はよえぇのが悪いだけじゃねぇかっ!」
「死んだ者はライバルを越える機会すら失われる、だが貴様はまだ生きている、貴様がライバルとして憎んでいるルッセルを越える機会は残されている」
まさか、魔族に説教されるとは! ダストは悔しさのあまり唇を噛み締めた。
「クソが!! ふざけんじゃねぇ!!!!」
「今は傷を治せ、俺が聞いた話だが、貴様の持つ【賢神の石】の他にもアーティファクトとやらは存在する、魔王軍は手始めに【闘者の斧】とやらを手に入れるつもりらしい」
魔族の話により戦力増強の目途を確認できたのか、ダストが肩に居れていた力を抜いた。
「それは、お前が使うのか?」
「それは分からん、俺が選ばれるなら使うに過ぎん」
ダストが見る限り、今自分の目の前に居る魔族こそ【闘者の斧】とやらを扱うにふさわしいと思ったが――。
アーティファクトの適正に関する問題があるかもしれない、いや、こんなどうでも良い奴の事を考えても仕方があるまい。
「フン、精々【闘者の斧】に選ばれる様頑張る事だな、俺様はお前に言われた通り傷を治す事に専念させて貰う、覚えてろ、ルッセル! クソがッ」
ダストは魔族に対し吐き捨てると、自分が与えられた部屋へ向かった。
―セザール学園学長室―
「大変な事になったんだなぁ」
青色の羊の着ぐるみを着た3頭身サイズのおっさん、純愛な仔羊様が学長の椅子に座りながらおにぎりを貪っている。
「そうですね、【賢神の石】を魔族に奪われてしまったのは痛手です」
その目の前にはヴァイスリッター、ギルドマスターのルッセルが居る。
「そうなんだなぁ~まぁさか、ダスト君が人間を裏切るなんて想定外だったんだなぁ~」
おにぎりを半分食べ、目の前に梅干が現われたところで仔羊様はがっくりと肩を落とす。
「私もそう思います、【賢神の石】の力に溺れセザールタウンを支配しようとする事までは予測が付きましたが」
だからと言って、仮にダストが人間を裏切る事が予測出来た所で同じ現在がある事には変わらないだろう。
「セザール学園の今年の新入生と在学生見てもカイル君以上の、下手したらルッカ君以上の素材は無いんだなぁ~、引き続きカイル君達の育成は任せるんだなぁ~」
仔羊様は梅干しを取り出し嫌そうに見つめると渋々一飲みにし、強烈な酸味に負けたのか何とも言い難い表情を見せた。
「分かりました、これからの作戦は如何致しましょうか?」
「そうなんだなぁ~調査班の報告によると、どうも【闘者の斧】ってアーティファクトがセザール大陸にあるらしいんだなぁ、なんて言ってたんだなぁ? そう、炎獄の谷ってところにあるって噂何だなぁ」
「炎獄の谷ですか? 以前私が探索した事がありますがその様なモノがある感じはしませんでしたが」
少なくとも自分が練度の高い人間である時に探索したエリアに存在するアーティファクトを見落とすとは思えない。
「神々の遺物なんだなぁ、ある日突然出没するのはよくある話なんだなぁ~。 炎獄の谷はAランク冒険者ならどうにか出来るんだけどもぉ~、ダスト君の件があるんだなぁ、何処に魔族に寝返る人間が居るか分からないんだなぁ~」
冒険者ギルドに依頼してSランク冒険者に任せる方が楽と思いたいが、仔羊様の言う通りの人間に対してその情報が渡るリスクもあれば、手にしたアーティファクトが魔族に渡ってしまう危険も増えるだろう。
「それもそうですね、つまり、我々のギルドが秘密裏にアーティファクトを手に入れろと言う訳ですね」
「そうなんだなぁ、君のギルドにはエリク君やセフィア君って優秀な人材が居るんだなぁ~それ以外の高ランク冒険者は信用出来ないんだなぁ~ルッセル君なら分かってると思うんだけどぉ~」
仔羊様は残りのおにぎりを全て口に放り込みもごもごさせた。
「やはり学長も同じ事をおっしゃいますか」
「なぁにを言ってるんだなぁ~? ボォクは善愛な仔羊なんだなぁ~、そーゆー事だから宜しく頼むんだなぁ~」
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