Ex冒険者カイル

うさぎ蕎麦

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2章

74話「新たな力」

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「フフッ」

 アリアさんが俺をチラ見している、一体何を考えているのだろう?
 そんな事よりも、このじいさんの正体を掴む事が先決だ。
 俺はさっきアリアさんが指差した方へ更に近付くと、何やら斧の様なモノがある事にようやく気付く。
 
『フン、ようやくワシを見付けおったか、よいか? 斧を抜く時はOh~Nоと叫ぶんじゃぞ!』

 何処か心の奥底でドヤっている様な声でじいさんが言った。
 
「はいはい、おーのー」

 仕方ないので俺はじいさんの言う通りにした。
 うん? 待てよ? この斧が今まで俺達に話掛けて来た来たって事だよな? 世の中不思議な武器もあるもんだ。
 
『ワシの渾身のギャグを前に覇気のかけらも見せぬとは何たる不始末ッ』

 ギャグ? 何が? どの辺が?
 
『貴様ッ布団が吹っ飛んだの美学を知らぬと言いそうじゃなッ』

 布団が吹っ飛んだ? 冬場にそんな事があったら風邪引きそうだ。
 
『ぐぬぬ、猫が寝こんだッこれでどうじゃっ!』
 
 ああ、つまり布団が吹っ飛んじゃったら猫が風邪をひいて寝込んだのか。

『そんな訳あるかぃッ! 闘者の斧があるのは塔じゃ! はぁはぁ、これでどうじゃ!? 腹を抱えて笑い転ぶじゃろ!』

 いや、ここ炎獄の谷だし闘者の斧が何処にあるのか分かんないんですけど。
 って貴方闘神の斧じゃありませんか?

『ぐぬぬっ、良いんじゃ、ワシが若い頃は闘者の斧じゃったから!』

 物凄い言い訳をしながら、擦り切れそうなまでの歯ぎしりをしている様な気にさせられるじいさん。
 ふとアリアさんの横目で見ると、右手で口を押え左手でお腹を押さえながら必死に笑いをこらえていた。
 つまり、アリアさんからしたらこのじいさんが言ってる事が面白いと言うワケか?

『ふぉーっふぉっふぉ、貴様に受けまいとこのお嬢ちゃんにはワシの偉大なギャグが分かって貰えた様じゃ!』

 アリアさんの様子を認識したのかいきなり得意気になるじいさん。
 偉大なギャグと言われても俺は全く分からないし、アリアさんがどーして笑いをこらえてるのかも分からないが。
 しかし、こんなへんてこなじいさんが本当に闘神の斧なのだろうか?

『そうじゃ! ワシが闘神の斧じゃ! さぁワシを媚びるのじゃへつらうのじゃ! ワシのギャグで大いに笑うのじゃ!』

 いやあ、さすがはとうじんのおのさまでございます、あーてぃふぁくとのかがみでございます、とてもすばらしきぎゃぐでありますがゆえおなかをかかえてわらってしまいそうです。
 と、感情の一切籠っていない事を思って見る。
 どうせ考えてる事に対して細かい事は分からないだろう。

『フン、そんな事だと思ったわい、じゃが、賛美した事実だけは認めてやるかのぉ』

 あ、やべ、余計な事考えたらそのせいでバレるの忘れてた。

『ふぉっふぉっふぉ、ひよっこじゃのぉ、じゃがそれも悪く無いわい、ほれほれわしを掴むのじゃ』

 何だか、にへにへ笑顔のエリクさんと同じ様な空気をまとってる気がする。
 しかし、折角のアーティファクトを手にしないわけにもいかない。
 ふむ、両手斧でかなり大きいぞ? デビッド辺りなら兎も角俺に持てるのか?
 俺は、刃からほのかに赤いオーラを放つ闘神の斧を手にした。

『安心せい、こう見えてもダイエットは得意じゃ!』

 闘神の斧が言う通り、見た目とは裏腹に羽の様に軽い。
 それになんだろう? 身体の奥底から闘士がみなぎって来る気がする!

『かと言って物理的な威力はあるのじゃ! どうじゃ! ワシは凄いじゃろ! カッカッカッカッカ』

 得意気に言う闘神の斧だが、物理法則を完全に無視出来る能力は素直に賛美するしかない。
 さて、闘神の斧が見付かったが、ルッセルさんに言われた通り迎えに来るまでここで待つしか無さそうだ。

 
*ルッセル達*


 カイル達が偶然ながらもアーティファクトを見付けた間も、ルッセル達とルカンの戦闘は繰り広げられている。

「ルッセルさん! 下がって下さい!」

 エリクがルカンに向けて氷属性の大魔法を放った。
 ルカンを氷漬けにさせて身動きを封じる戦法だろう。
 エリクが放った大魔法はルカンに直撃し、下半身を氷漬けにする事に成功した。
 
「フンッ! それがどうしたッ!」

 だが、ルカンは気合を込めて一喝する事で自らの身体にまとわりついた氷を粉砕した。
 
「中々の闘気ですね、こちらも負けてられません!」

 ルッセルが剣に闘気を乗せ乱れ突きを放つが、ルカンは同じく闘気を乗せた斧を盾の代わりとしその攻撃を全て防ぎ切った。

「この程度の闘気で俺を倒すつもりかッ! 片腹痛いわっ!」

 ルッセルの攻撃を受け切ったルカンは一度バックステップを踏み、斧を構えた後に勢いをつけルッセルに渾身の一撃を放つ。
 ルッセルは飛翔の術の力を使い、上空へ向け舞い上がりそれを回避。

「マスター!」

 今度はセフィアがルカンの急所を狙い援護射撃を放つが、ルカンの闘気が込められた肉体を前に放たれた矢はカキン、と虚しい音を立て床に落ちるだけだった。

「それがどうしたあああああっ」

 ルカンの放った一撃はルッセルこそ捉えられなかったものの、地面に直撃すると巨大なクレーターが産み出され、同時に周囲に衝撃波を発生させた。
 それを見たエリク、セフィアも同様に飛翔の術の力を使い上空に舞い上がり回避した。
 
「やるわね、けど私が放った矢には毒が塗られているわ」
「流石ですね、では僕は別の属性魔法を撃ちます!」

 エリクは風属性の大魔法をルカンに向けて放った。
 エリクの放った大魔法は、周囲の熱気を取り込み『灼熱竜巻(フレアトルネード)』となりルカンを襲った。

「こしゃくな真似をするなぁっ!」

 セフィアの毒にやられたのか、ルカンは一瞬片膝を着くが魂を込めた咆哮を上げると再度立ち上がった。
 続いて、迫り来る『灼熱竜巻(フレアトルネード)』に対して、斧を地面に突き立て地面に対し踏ん張る事で耐えて見せた。

「チィッ、あの様子じゃ闘気で私の毒を無効化したみたいね! ごめんけどマスター、一旦下がるわ!」
 
 自身は耐久性の高い相手を苦手とする事を自覚しているセフィアは素直に戦線から離脱した。

「炎属性も風属性も有効打になってないみたいですが、地属性ならどうですか!」

 エリクは地属性の大魔法を完成、発動させた。
 ルカンの足元を中心に地面が激しく揺れ出したと思えば、彼の足元に地割れが発生しその巨体を奈落の底へと飲み込んだ。
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