Ex冒険者カイル

うさぎ蕎麦

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2章

75話「闘神の斧を手に救援へ」

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 エリクの放った地属性大魔法の振動はカイル達にも伝わっていた。

「何かヤバイ事になってそうですね」
「そうね」

 と、相変わらずそっけない返事をするアリアさんだが、何故か俺にべったりとくっついて来た。
 ア、アリアさん!? どうしたんですか!?

『なんじゃお主ら? そーしょくどうぶつとやらに見えるがのぉ? 見かけによらずこんな所でもいいのかのぉ? フォッフォッフォ若い証拠じゃ、何、ワシも混ぜてくれんかのぉ~』

 お前、結局女でも良いのかよ?

『そんな事は無いゾイ、お主と言う新発見を前に女子(おなご)が居るからと指をくわえて諦める趣味がないだけじゃぞい!』

 それはドヤ顔で言う事じゃないと思うが。

『虎穴に入らずば虎児を得ずじゃ!』

 意味が分からないんだけど。
 
『何を、異国の地では有名な言葉じゃぞ! 大きな成果を得たければ危険を冒すしか無いのじゃ!』
 
 成る程、そう言う意味か。

『さてと、そろそろ真面目な話をするかのぉ。お主、強大な闘気を感じないかのぉ?』

 闘気? 確かルッセルさんが扱ってた気がするが。

『ほぉ~それなら話が早いわい、今猛烈な闘気と闘気がぶつかりあってるのじゃ、そうじゃのぉ、ワシの加勢が無ければそのルッセルとやらが危ういかもしれんぞい』

 まさか、あのルッセルさんが?
 
『そうじゃ、対する闘気の主は仲間の死が引き出す怒りによって闘気が増幅されておる、死すべき者が大切であればある程その闘気は増幅するのじゃ、これだけ増幅しているとなると恋人あたりかのぉ? それ位大切な相手で無ければここまで増幅せんわい』

 つまり、セフィアさんが撃墜した魔族は誰かの恋人? へぇ、魔族も意外と戦場でいちゃつくものなんだ。

『仮定の話じゃぞ? 恋人と言えど、ウホッもある訳じゃ魔族同士がウホウホするのも面白そうじゃのぉ~』

 どうしてニヘニヘした声を出す?
 アリアさん、この変態を止めてくれないか?
 と言おうとアリアさんを見てみたら普段ポーカーフェイスを貫く貴女がまたしても嬉しそうな表情をしているのだが何故だ?
 それは兎も角、俺はルッセルさんからは待機命令を受けていてここから離れるのは良くないと思う。

『フォッフォッフォ、真面目じゃのぉ~その真面目な性根をがっつり叩き直してウッキーにしてやるわい!』

 今度は猿の鳴き真似か? あいにく俺には猿の真似をする趣味は無いぞ、最も犬の真似する趣味の奴なら居るが。

『うーむ、残念じゃ、これで後キジが居れば鬼退治に迎えるのじゃが』

 イヌとサルとキジが集まって鬼退治? 何の話だ。

『何じゃ、知らんのか。これも異国に伝わる伝記じゃがのぉ~あるおじいさんが山でシバかれに行ってる間、お婆さんが川へ洗濯しに行ったら上流から巨大な桃が流れてきおってのぉ~』

 わざわざ自分からシバかれる為山に? まさかそのじいさん、未来のエリクさんじゃないだろうな? 妙な伝記に聞こえるが。
 
『で、その巨大な桃を山でシバかれてズタズタにされたおじいさんと一緒に食べた所、なんと二人共若返ったのじゃ! 若返った二人は何かに覚醒してきゃっきゃうふふした所桃太郎って子どもが生まれたのじゃ』

 若返った? 確かに伝記なら有り得そうな話だが。
 
『その桃太郎がきびだんごとやらをねだる、イヌとサルとキジをお供に連れて鬼を退治したってお話じゃ』

 鬼を退治? 命がけな割にずいぶんと安い報酬で戦ったんだな。

『どうやらその犬は二足歩行だったと噂もあるぞい! おっと話がそれたのぉ~ウッキーとは何も考えず目の前の敵を粉砕! 漢気あふれる戦い方じゃぞい!』

 ウッキーってけなしてる様に聞こえるのだが? その割に褒めるとは理解に苦しむぞ。
 つまり、デビッドみたいに何も考えずに突撃するのう○んって奴か。
 
『ふぉっふぉっふぉ、いやらしい事じゃあるまいし、わざわざ伏字にする事も無かろう』

 一応アンタに配慮したつもりだが。
 
『そうかそうか~ふぇっふぇっふぇ。そういう事じゃ、ワシが漢気あふれる戦い方を伝授するぞい!』

 いや、気持ちはありがたいのだが、脳筋連中を取りまとめる後衛の人間は死ぬ程負担が掛かるぞ。

『そんなの簡単じゃ、後衛とやらが何かをする前に敵を粉砕すれば良いだけじゃ』

 なるほど、何とも簡単な理論だ。
 だが、その理論が通用する敵が早々現れるとは思えんぞ。

『ふぉーーーっふぉっふぉ、ワシを誰だと思っておる! ワシはあーつぃふぁくと、闘神の斧じゃぞい! 泥船に乗ったつもりで堂々とするのじゃ!』

 いや、泥で出来たいつ沈むか分からない船で何を堂々とすれば良いのだ?

『フォッフォッフォ、お主は未熟じゃぞい、今のは分かった上でわざと間違え相手のツッコミを誘い出す高度なギャグじゃぞ!』

 やけに自信満々に解説する闘神の斧に、必死に笑いをこらえるアリアさん。
 俺には全くもって彼のギャグが理解出来ない故、彼等がその様な心理状態になる事は分からなかった。
 
『冗談はそこまでにしておいて、ルッセルとやらを助けに行こうかのぉ? 命令に従ったまま彼がやられてしまっては本末転倒じゃ、ワシを入手した時点で状況は変わっておるわい、足手纏いになる事はあるまい』

 確かに闘神の斧の言う通りかもしれない。
 万が一にもルッセルさんがやられてしまっては俺達の身も無事ではないと思う。
 
『じゃがお嬢ちゃんはここで待っておれい、残念ながら最悪人質に取られてしまうわい、溶岩の川の中で何かあった時はすぐに味方と合流出来る位置で待っておるのじゃ』

 闘神の斧の問いかけに対してアリアさんは静かに頷いた。
 
「カイル・レヴィン行きます!」
 
 闘神の斧を持った俺は掛け声と共に溶岩の川を飛び出しルッセルさん達の元へ向かった。
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