Ex冒険者カイル

うさぎ蕎麦

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3章

85話「魔聖将ルミナス3」

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「よっしゃあっ! 大丈夫か、カイル!」
「大丈夫、問題無い。 デビッド、お陰で助かったよ、有難う」

 俺の無事に喜んだデビッドが肩をポンと叩いた。
 この時俺は『睡眠(スリープ)』の魔法を完成させデビッドに放った。
 
「ガッハッハ、俺の手に掛かれば、大した事無いぜ? クッ、何か急激に眠気が襲って来た、すまん、少し寝ちまうぜ」
 
 俺の魔法が効いたデビッドは、ドサッとその場に崩れ落ち大きな寝息を立てた。
 悪いな、デビッド。
 あの魔族と戦うとお前は無事で済まない。

「行くぞッ!」

 俺はルミリナさん達の元へ向かった魔族を追った。
 闘気のお陰で自力で出せる速度よりも早く移動が出来た。
 ルミリナさん達が居る場所と大した距離は離れていないが、氷漬けにされて身動き取れなかった時間が大きく響いている。

『ふぬっ、魔族の奴め、聖女クンの元に辿り着いたぞい』

「分かってる!」

 俺は疾風の如く走り、ルミリナさん達の元に追い付いた。

「カイルさん! こっちに来ちゃダメです!」

 魔族の『拘束(バインド)』により身動きを封じられたルミリナさんが叫んだ。

「あら~ボクちゃん? あたしの氷魔法抜けちゃったかしら? 大人しくしてたら危害を加えないんだけどね★」
「貴様ッ!!ルミリナさんを離せッ!」
「やぁねぇ? あたしはこう見えても魔族よ? 離せと言われて離す訳無いデショ」

 魔族が雷属性の魔法を俺に向けて放つ。
 ライトニングアローか!
 この程度なら問題無い、と俺は避けずに突撃する事を選択。
 思った通り、多少の痛みと引き換えに距離を詰める事に成功。

「……レヴィン殿。 改めて撤退を進言致します……」

 ルッド君が覚悟を決めた鋭い声で言い放つ。
 それはつまり、ルミリナさんを見捨てろと言う事だ。
 ルッド君は、今この瞬間全滅するよりも体勢を立て直し、各々の上官へ報告をし戦力を整えた上で救出した方が良いとの判断だろう。
 間違いなくルッド君の判断が正しい。
 リーダーとして進言を受け入れ撤退を命令しなければならない。
 けどっ、一人の女の子を守れないなんて漢としてすたってしまう!
 闘神の斧を持つ今の俺にはルッド君の進言を受け入れる事は出来ない!

「ルッド君!! ルッカさん!! 後方に居るデビッドを叩き起こして3人で逃げてくれ!」
「ちょ!! カイル!? アンタ何言ってるのよ! 敵は強いんだよ!! 1人でどうするのよ!」
 
 ルッカさんの言う事は正しい。
 だけど、ベテラン冒険者でも無ければアーティファクトを持たない人間が太刀打ち出来るとは思えない。

「……御意に」
 
 ルッド君は吹き矢を取り出し、
 
「ルッド君! 仲間を見捨てるなんて見損なったわッ」

 ルッカさんが撤退の意思を見せない事を確認したところで首筋に矢を当てた。

「後は任せた」

 ルッド君が塗った薬物が効き、その場に崩れ落ち寝息を立て始めたルッカさんを確認した俺は、彼女達を担いで逃げれる様に『筋力増強(パワーアップ)』を掛けた。

「……ご武運を祈ります……」

 ルッド君は、ルッカさんを抱え撤退した。

「ふ~ん? 相変わらず勇敢ねぇ、聖女1人見捨てるだけでボクちゃんの命は保証されるのにねぇ?」

 魔族は呆れた表情を見せている。

「女の子を見捨てるなんて漢の片隅にも置けない真似なんか出来る訳ねぇッ!」

 今、魔族はルミリナさんを捕縛する為地上に居る。
 仕掛けるなら今しかない! 例え大振りだろうが数撃てば当たる!
 俺は魔族に向かって突撃した。

「人間の女はそう言うのが好きなのかしら? 興味深いじゃない?」

 魔族は俺の仕掛ける大振りな連撃に対し、最小限の動きで回避される。
 やはり、連撃の際に生じた隙に対して魔法で反撃される。
 それでも俺は痛みを堪えながらも連撃を続けた。

「魔族がどう考えるとか知ったこっちゃねぇ! 俺が守りたいと思うから守るだけだ!」

 一撃当てればどうにか出来る。
 そんな考えが支配している俺は更に大振りな攻撃を仕掛けようとした。

「その斧、ルカンちゃんの腕を奪ったんデショ? あはっ、当たってあげる訳にはいかないジャナイ?」

 今までよりも膨大な隙に対し、魔族は俺の腹部目掛けローキックを仕掛ける。
 鈍痛が走り、1歩後退させられるが大した事は無い!
 まだ行けるっ!
 
「それでも当てなければいけない理由があるんだ!」
 
 俺は身構え、今よりも大きな一撃を放とうとした。
 
「そう? 人間も大変なのね~★ あたしアナタの攻撃避けるの飽きちゃったのよ。 クスッ、面白いと思わない?」

 魔族は後方へ向けた鮮やかな跳躍を見せ、空中で1回転するとルミリナさんの背後に降り立ち、軽く背中を押した。
 その衝撃でルミリナさんが数歩前に押し出されてしまった。
 まずい! このままの勢いではルミリナさんに攻撃を当ててしまう!
 俺は魔族に向けて放とうとした2撃目を慌てて止めようとした。
 が、勢いは止まらない。

「卑怯な奴め! クソがぁッ!」

 俺は闘気の力を動作のブレーキに次ぎ込み、ルミリナさんに当たってしまいそうな一撃を無理矢理止めた。
 だが、闘気の力で無理矢理止めたその力は反動も生じ後方へ吹っ飛ぶ羽目になった。
 俺は不安定な着地をしたまま、ルミリナさんの背後に回った魔族を睨みつけた。
 
「あら? 残念ね? けど、ボクちゃんが攻撃を止め無くてもあたしが止めてたけどね」

 魔族が、クスクスと笑いながらルミリナさんの腕を掴んだ。
 ルミリナさんが、恐怖に支配された涙を浮かべながら声にならない悲鳴をあげ振り払おうとするが、か弱き少女の力で抵抗する事は出来なかった。
 
「止めろ! ルミリナさんを離せ!」

 俺は体勢を戻し、地面を強く蹴りルミリナさんの元へ向かった。

「あはは★ ぼくちゃん、楽しかったわ★ またどこかで会いましょうね~」

 魔族は、抵抗するルミリナさんを魔法で眠らせ抱えると空高く舞い上がった。
 
「ふざけんな! 誰がテメー何かにルミリナさんを渡すか!」

 闘神の斧が何かを言っている。
 だが、そんな事関係無い! 俺は残ってる闘気を空中制御のエネルギーに変換し上空目掛けて地面を蹴った。

「あはっ★ 残念でした、あたしは魔王城へ帰るだけなのヨ★ 魔王様が闘神の斧について命令なさったらまた遊びに行くネ★」

 魔族は暫くの間俺を空中で弄んだ後、先程の氷魔法を同じ手順でぶつけ魔王城へ向け帰還した。
 一方の俺は、氷魔法を頭上から受け同じ様に地面に向け叩きつけられ、同じ様に氷漬けにされてしまったのだった。

『ふぉっふぉっふぉ、中々の漢気じゃったぞい!』

 いや、じいさんの反対押し切った事は反省してる。

『カッカッカ、若いモンはそれが良いんじゃ!』

 しかし、ルミリナさんが魔族に誘拐されてしまった。
 俺にもっと力があればあんな事には。

『気持ちは分かるがのぉ、あれは事故みたいなモンじゃ。 お主よりも腕が立つ者の誰も予測が出来なかったんじゃろう? 引き摺るでない、大切なのは如何に早く気持ちを切り替え次の作戦を成功させるか、じゃ!』
 
 だけど、何か辛いモノがあります。

『人はそうやって成長するモンじゃ。 起こってしまった事は仕方無いのじゃ。 もしもこの先同じ事が起きた時に成功させる事も大切なのじゃ!』

 すみません。
 数秒程沈黙が生じた所で、

『お主の漢気のお陰で闘気の充填には時間が掛からんぞい。 この程度の氷、でろでろのどろっどろにしてやるわい!』

 それからしばらくして、闘神の斧のお陰で俺は氷漬けから解放された。
 先に撤退していたルッド君と合流、ヴァイスリッターへ帰還した。
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