Ex冒険者カイル

うさぎ蕎麦

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1章

82話

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「クク……麻痺矢ですよ……」

 ルッド君がデビッドに説明し、攻撃の合図を送った。
 
「助かったぜルッド! よっしゃ、コイツは俺に任せろ!」
 
 デビッドは、目の前で痺れて動けないオーガに対して気合を込めた一撃を放つ。
 だが、オーガの強靭な筋肉の鎧を前にデビッドの一撃は有効打ではないみたいだ。
 しかしデビッドは深い事を考えず、目の前のオーガに対して何度でも渾身の一撃を放った。
 恐らく、いつか倒れるから倒れるまで斬り続けると考えているのだろう。
 俺だったら渾身の一撃が耐え切れられた場合、別の手を考えてしまうから逆に難しいかもしれない。
 
「おーほっほっほこのわたくしにひれふするが良いですわ!」
 
 続いて魔聖セリカさんが氷の範囲魔法を放ち、氷の嵐を発生させた。
 嵐の中心部に居た6体のオーガ達が全て氷漬けにされた。
 まるで氷の像となったオーガ達に対し魔聖セリカさんは、
 
「何て醜いのかしら! 罰が必要ですわ!」

 空から氷漬けのオーガに強襲、蹴りによる乱舞で氷漬けのオーガを1体ずつ粉々に蹴り砕いたのだ。
 どうも、魔聖玉を使う事でルミナスさんの格闘性能も引き継いでるみたいだ。
 魔聖セリカさんの戦いに感心しながら、俺は目の前に居るオーガ2体を一撃で両断した。
 
「ふふふ、オーガは残り5体、最後の集団はこの漆黒の覇者エリク・ロードがトドメを刺すワン!」

 エリクさん、いつの間にそんな言動をする様に?
 と思ったら締めは『ワン』かよ!
 俺は深い溜息をつきながら、エリクさんが詠唱する様子を傍観する。

「おーほっほっほ、トドメなんて美味しい役柄を犬っころにさせる訳ありません事よ! おすわりっ!」

 魔聖セリカさんが、緑色のオーラを展開させカッコ良いポーズで犬の付け鼻をして詠唱しているエリクさんに命令を下す。
 
「わん!」

 魔聖セリカさんに命令されたエリクさんは、詠唱を中断しワンちゃんがするお座りと同じポーズをする。
 舌を出しながら喜ぶ姿はまさに犬そのものだ。
 ここまで来るとしっぽの一つでもつけて欲しくなるところだ。

「良い子ねぇ~後でご褒美上げるわよ」

 魔聖セリカさんが上機嫌に言うと、再度空中へ舞い上がり魔法の詠唱を始める。
 彼女の身体からは灰色のオーラが展開される。
 灰色のオーラを展開させる魔法に心当たりが無いと思いながら魔聖セリカさんを見ている内に魔法は完成された。
 魔聖セリカさん魔法を放つとオーガ達を灰色の霧で包み込みこんだ。
 霧に包みこまれたオーガ達は気持ちの悪い悲鳴をあげだしたかと思うと徐々に静かになった。
 
「つっ、この臭いはッ」

 オーガ達が静かになったかと思うと鼻を酷い臭いが襲った。
 何かが腐った様な臭いだろうか? 異常なまでの不快臭に対し俺は鼻をつまみ息を止めた。
 ルッド君は対臭アイテムを咄嗟に出し、デビッドはしかめっ面をしている。
 術者の魔聖セリカさんは術者だけあり顔色一つ変えていない。
 最後のエリクさんはと言うと、鼻を抑え悶え苦しみ地面を転がり回っていた。
 ひょっとして、あの付け鼻は犬と同じ嗅覚になるのだろうか?
 俺は不快臭に耐えながらもエリクさんを憐れんでいた。
 
「おーほっほっほ、ネクロマンス術ですわ! この玉の力は素晴らしいですわ」

 不快臭漂う中、誇らしげな魔聖セリカさん。
 確か今の魔法、生きているオーガに対して掛けたよな?
 俺が知ってるネクロマンス法は死体に対して掛ける必要があったが。
 魔聖セリカさんが言っている事と今起きた現象から推測すると、あの魔法自体殺傷能力を持ち合わせており、殺傷に成功した場合アンデッドとして使役出来ると言う事だろう。
 5体のアンデッドオーガを使役した魔聖セリカさんは、奴等を先頭とし次の魔物グループの討伐に向かった。
 一応、俺と魔聖セリカさんで『機動向上(クイック)』を掛けた事でアンデッドにしては中々の移動速度を与える事に成功した。
 
 腐臭で悶えているエリクさんに対しては二人の『魔法抵抗(レジスト)』を掛ける事で難を逃れる事が出来た。
 付け鼻外せと言われそうだが、魔聖セリカさんの命令でそれはダメだったらしい。
 続いて見えて来た魔物の集団は、サーベルタイガーの群れだった。
 数は大体50位。
 
 こいつ等は、猫が人間位の大きさになった挙句鋭い牙を兼ね備えた感じだ。
 当然初心冒険者が適うハズも無く、オーガと同じくCランク位の腕が無ければあっさりと餌食になってしまうだろう。
 オーガに比べれば攻撃力は高く無いが、その代わりに機動力を確保している。
 パーティで討伐するとなれば、プロテクションを掛けられたナイトが攻撃を受け、その隙に後衛が攻撃を叩みこむ戦法で良いだろう。
 
 さて、それは良いが相変わらずやる気満々のデビッドだ。
 何時もの通りサーベルタイガーの群れに1人で突っ込みそうだ。
 ファイターである彼はナイトの様に強力な防具を身に付けていない。
 となると、サーベルタイガーの餌食になる危険は高い。
 ルミナスさんと戦った時みたいに少々眠って貰おうか?

「ククク……レヴィン君、僕にお任せを」

 ルッド君だ。
 何か策があるのだろうか?
 彼はサーベルタイガーそっくりの人形を産み出し遥か後方へぶん投げた。
 
「デビッド君、あちらです」

 ルッド君がそっとデビッドの肩を叩き、自ら産み出した人形を指差す。
 俺には、人形にプロテクションを掛けてくれと囁いて。

「挟み撃ちだと!? よっしゃ! 後ろの奴は俺に任せろ!」

 デビッドは、ルッド君が出した人形とは気付かずにサーベルタイガーの人形に向け突撃をした。
 良いぞルッド君、これでデビッドの心配は無くなったぞ。
 俺は闘気を身に纏い、サーベルタイガーへと突撃した。
 
「行くぜっ!」

 俺はサーベルタイガーに向け一閃を放つ。
 だが、オーガの時とは違い素早いサーベルタイガーを一撃で仕留める事は簡単では無かった。
 完全な空振りこそないものの、咄嗟の反応で足を1本切断や致命傷を避けた切り傷に抑えられてしまった。
 しかし、弱らせた相手をルッド君の後方射撃により仕留める事に成功。
 セフィアさん程ではないが、ルッド君もかなりの射撃制度を誇っており、サーベルタイガー相手にも急所、若しくは急所付近をしっかりと狙い撃ってくれていた。

「おーほっほほ、いけない仔猫ちゃん? わたくしがお仕置きして差し上げますわ!」
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