Ex冒険者カイル

うさぎ蕎麦

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1章

83話

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 魔聖セリカさんがアンデッドオーガを囮にしているところに爆裂魔法を放ち、アンデッドオーガごとサーベルタイガーを木っ端みじんとさせた。
 続いて、別のグループに対しネクロマンス術を使い、アンデッドサーベルタイガーを産み出しサーベルタイガーへ攻撃命令を下した。
 
「さぁさぁ、踊り狂いなさい!」

 上空より同士討ちを見届ける魔聖セリカさんだ。
 アンデッドサーベルタイガーに襲撃されたサーベルタイガーは、最初こそ戸惑ったものの同胞とは違う事に気付き、反撃に転じ見事に同士討ちの構図を完成させたのだった。
 同士討ち後に残ったサーベルタイガーは俺とルッド君の連携によりしっかりと討伐した。
 
「はぁ、はぁ、カイル! こっちも終わったぜ!」

 ルッド君が作った人形を壊し終えたデビッドが息をあげながら戻って来た。
 む、プロテクションの効果を高め過ぎたか?
 いや、このタイミング出来たのだから丁度良かったか。

「デビッド、助かったぜ」

 俺はデビッドに礼を言うと次の魔物の集団目指して移動した。
 その後も、オークの群れ、ワイバーンの群れ、ジャイアントゴリラの群れ等Cランク位冒険者がパーティを組んで倒せる位の強さである魔物達をせん滅した。
 今回の討伐戦で最後にしようと判断した相手、樹に擬態し通りかかる獲物に襲い掛かる魔物、トレント達をセリカさんがアンデッド化させ魔物達への罠として残しておいた。
 
 
―ヴァイスリッター―


 無事魔物達の討伐を終えた俺はルッド君、デビッドと別れを告げエリクさん、セリカさんと共にヴァイスリッターへ戻った。
 ヴァイスリッターへ戻ってすぐ、奥からルッカさんがやって来てセリカさんに話掛けた。
 一瞬、セリカさんがルッカさんに何かやらかしたっけ? と一触即発な展開を危惧したが余計な心配だった。
 どうやらルミナスさんの魔聖玉について聞いている様だ。
 そう言えば今朝ルッカさんが俺の家にやって来た時魔聖玉の話をしたら珍しく目を輝かせていたな。
 久しくヴァイスリッターにやって来た理由も納得が出来る。
 
『そうねぇ、お嬢ちゃんにもアタシの力を使わせて良いと思うわ、でもねぇ? お嬢ちゃんからは強い野心を感じるのよ。 魔族だったアタシが言うのもなんだけど』
 
「私に野心? そんなの無いと思うよ」

 ルミナスさんの問い掛けに対し、ルッカさんがキョトンとしている。
 確かに俺もルッカさんは強くなりたい気持ちこそ持っているが、野心を持っている様には見えない。

『深層心理の問題なのよ、本人は自覚出来ないモノだから仕方無いわ。 アタシはそれとなく探知出来るんだけど。 多分だけど、一般の魔物や魔族を相手にしている内は問題無いと思うのよ。 ただ、賢神の石を前にした時は、貴女の持つ心の隙を突いてくると思って。 アタシも元は魔族だから、アタシの力を貸している時にやられたら何も起きない保証は無いわよ』

 ルミナスさんの言う通りならルッカさんが無理して魔聖玉を扱う必要は無いと思うけど。

「要は賢神の石に近付かなければ良いんでしょ? なら大丈夫よ!」

 俺の考えとは真逆に、ルッカさんはためらう事無く魔聖玉へと手を伸ばす。
 セリカさんの時と同じく、手にした魔聖玉を中心に白い光が溢れ出しルッカさんを包み込んだ。
 光が収まると、魔族ルミナスの外見特徴を引き継いだ魔聖ルッカさんが現れた。
 魔聖セリカさんの時と同じく背中から生える翼で空を飛ぶ事も可能で、彼女は試しに宙を舞ってみた。
 
『アタシは忠告したわ。 ただ、貴女の気持ちも分かるけどね』
 
 ルミナスさんが意味深な事を言う。
 気になった俺がそれとなくルミナスさんに尋ねてみるが、
 
『乙女の秘密で良いんじゃないかしら?』

 クスクスと笑いながらお茶を濁された。

 
―仔羊の間―
 

「ルッセル君、ご苦労だったんだなぁ」

 報告の為訪れたルッセルに労いの言葉を掛ける仔羊様。

「いえ、私は指示を与えただけですので何もやっておりません」

 丁重なお辞儀を見せ、謙遜した言葉を返すルッセルだ。
 
「相変わらず固いんだなぁ。 かっちかっちのこっちんこっちんなんだなぁ? このボォクが分かってない訳無いんだなぁ~」

 仔羊様がおにぎりを放り上げ、ジャンプし咥え、食した。

「そうでしたね、ははは、仔羊様の様に有能な上官は中々居ませぬ故」

 ルッセルは改めて一礼をした。
 
「昆布だったんだなぁ。 君の言う通り手柄を全て自分のものにする指揮官も居れば、そんな指揮官の言葉すら見切れない無能な上官が居るのも事実なんだなぁ」

 仔羊様は、次のおにぎりを放り上げ同じく食す。

「仰る通りであります」

 ルッセルは一瞬間を作っていた。
 恐らく仔羊様が言った事に対して思い当たる節があったのだろう。

「むふぅ、ただの塩むすびだったんだなぁ。 でも、この塩の加減は神がかってるんだなぁ。 ルッセル君。 永氷の洞窟の場所は分かったんだなぁ。 勇神の剣を入手しに向かって欲しいんだなぁ」

 仔羊様が3つ目のおにぎりを放り上げ、食す。

「分かりました」

 ルッセルは仔羊様に敬礼をし、仔羊の間を後にした。
 
 
 ガリッ!!!!
 
 
 ルッセルが仔羊の間を後にしたところで何かを噛み砕く嫌な音がした。
 
「むはぁぁぁぁ。 梅おにぎりだったんだなぁ! やってしまったんだなぁ。 口の中に梅干しの種の殻が広がってるんだなぁぁぁ。 酸っぱいんだなぁ、ゴワゴワするんだなぁぁぁ、でもやめられないんだなぁぁっ」

 どうやら、勢いよく食べたおにぎりの具材が種有り梅干しだったらしく、勢い余って種ごと噛み砕いてしまい仔羊様の口の中が大惨事になってしまったらしい。


―ルカン達―


 永氷の洞窟は、吹雪が巻き起こる山岳地帯に存在している。
 ダスト、ルカン、スルーフの3人は極寒の試練場と言っても過言ではないエリアを抜け永氷の洞窟を目指していた。

「うぅ、寒いぜこの野郎っ」

 ダストが全身を震わせながらぼやいている。

「そうか? 闘気を纏う俺にはこの程度寒いとは思わん」

 闘気を纏うルカンが凍てつく冷気を物ともしていない様だ。

「心頭滅却すれば氷もまた暑しでござる」

 心の技を会得したスルーフからすれば、灼熱も極寒も平穏と変わらない様だ。

「うぅ、ちくしょう、アンタ等を見習って根性でどうにかしようと思った俺様が間違っていたぜっ」

 ダストは大きなくしゃみをしながら文句をつけた。
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