Ex冒険者カイル

うさぎ蕎麦

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1章

84話

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「ダスト殿、貴殿の挑戦は決して無駄になる事は無いでござる」

 スルーフはダストをそっとなだめる様に言う。

「くぅ、ウィザードの俺様に根性とやらは必要無いんだッ!」

 寒さに限界を感じたダストは『炎防壁(フレイムバリア)』を展開させ周囲の気温を確保した。
 
「今は修練の時あらず」

 ダストに対し、仕方ないと言いたげなスルーフだ。

「そうだな、俺も闘気を解いたら凍えちまいそうだ」
「そうだそうだ、無理するこったねぇんだぜ!」

 モフモフした毛を纏う狼型獣人のルカンですら闘気を外してしまえばこの極寒には耐えられない様であった。
 
「むぅ、この臭い。 ルカン殿、ダスト殿、永氷の洞窟でござる」

 犬型獣人スルーフが永氷の洞窟のありかを臭いで探知した様だ。
 視界もロクに確保出来ない真っ白な豪雪の中、この場所に辿り着けたのは彼の嗅覚のお陰だろう。
 スルーフ曰く、嗅いだ事の無い臭い且洞窟の様な臭いを追えば造作の無い事であるとの事だった。
 永氷の洞窟に辿り着いた3人は洞窟の中に入った。


―ヴァイスリッター―


 仔羊様より指示を受けたルッセルが、会議室にて永氷の洞窟へ向かうメンバーに対して作戦の説明を行っていた。
 ルッセルさんより指示されたメンバーは、ギルドマスターのルッセルさん。 わんわんウィザードのエリクさんにベテランレンジャーのセフィアさん。
 ヒーラーとしてアリアさんとルミリナさんのひいお婆さんにあたるロリBBAのエリナさんと俺だ。

 残念ながら魔聖玉の力を手に入れたとはいえセリカさんやルッカさんがメンバーに入る事は無かった。
 理由は、新しい力を手に入れたばかりで力を使い慣れていないからだった。
 セリカさんに関してはいつも通り全く持って興味を示しておらず、シュバルツサーヴァラー時代のメンバーと共にわっちゃわっちゃしていた。

 彼女達に近付く男達は多いのだが、ルッカさんよりも出るモノが出ていないマリアンさん以外殆ど興味を示していなかった。
 内輪で盛り上がるのも良い事だし特に気を掛ける必要は無いだろう。

 しかし、ルッカさんに関してはあからさまに不服そうな表情をしていた。
 かと言って特に何かしてくる事も言う事も無かった。
 それはそれでどこか不気味な感じがするのだが、何かできる事があるかと言われたら無いと答えるしかない。
 
 ルミナスさんが言うには、ルッカさんは必ず合流するとの事だった。
 魔聖玉は既にルッカさんが確保しており現状阻止するのは不可能だとの事。
 ダストは療養中だったし、永氷の洞窟に彼が同行するかと言われたら多分無いと思うけど絶対無い訳じゃないとの事だった。
 
 あくまでルミナスさんの計算上、賢神の石とルッカさんが対峙する可能性は低いが、それでも万が一があるから念の為対策はして欲しいだそうだ。
 俺達は永氷の洞窟があるとされる山岳地帯の入り口に辿り着いた。
 ここから洞窟目指して歩いて行くけど、目の前は真っ白で数M先もまともに見えない位な吹雪が巻き起こっている。
 今俺達が居る場所は晴れており、どうも特殊な境界が引かれている様だ。
 一般冒険者だったら1歩でも先に進むだけですら危険極まりないだろう。
 
「フフフフフ、ここは漆黒の覇者エリク・ロードの出番ですよ」

 エリクさんが眼鏡の中心部分をクイッと上げながら得意気に言う。
 セリカさんが居ない今、犬の付け鼻も無ければ語尾に『ワン』ともついていないが、いささか見ていて滑稽な気分になってしまうのは何故だろうか?
 本人はカッコ良く決め台詞を言っているんだろうけど。

 エリクさんに対し、呆れている俺だ。
 ルッセルさんは目の前に吹雪がある中無機質な拍手を送る。
 セフィアさんは、エリナさんの肩を叩き彼はああいう人なのよと憐みの声を出しながら教えていた。
 だが、エリナさんはと言うと。
 
「ふぉっふぉっふぉ! 私を忘れてはならん、このホーリィ・プリンセスエリナもおるぞい!」

 エリクさんの隣を位置取り杖を空に向け差し、一緒になってポーズを決めていたのであった。
 美少女の綺麗な声質で、言葉尻は老婆と言う嬉しくもなんともない奇跡を見せながら。
 何ともおかしな前座を終えると、アリナさんがエリクさんに『魔力増強(マジックアップ)』を掛けた。
 続いてエリクさんが『炎防壁(フレイムバリア)』を展開させ周囲の気温を確保し、アリナさんが『照明(ライティング)』を掛けた。
 
 アリナさんの産み出した光体は丁度いい光量を広範囲に保ち、吹雪で失われた視界を十分取り戻してくれた。
 これで目の前にある雪山を進むに問題無いだろう。
 俺達は、ルッセルさんを先頭に永氷の洞窟を目指し進んだ。
 
 
―永氷の洞窟内部―


「ほー、内部は随分と広いんだな」

 永氷の洞窟に入ったダストが言う通り、入り口から5-6人は同時に入る事が出来る広さがありその広さが続いていたかと思うと、1kmほど歩いた所でさらに広がった。

「部屋の様な感じでござる」

 犬型獣人スルーフの言う通り、更に奥を眺めると前、左右に1つずつ出口のある部屋と同じ様な構造となっていた。

「む、お主?」

 ルカンの肩に鳥型の魔物が肩に乗った。
 この洞窟に生息しているのか、まるで生きた氷の彫刻と言わんばかりに美しく透き通った身体を持つ小鳥がルカン達の来訪を歓迎している様だ。

「かーっ、何か羨ましいぜ!」

 ダストが、自分も何か可愛い動物にでも歓迎されたい様に言う。
 ダストの声に応えたのか、部屋の奥からズシンズシンと音を立て何者かが彼の元へやって来た。

「これはこれは、氷の巨人殿」

 ダストの目の前に現れたのは氷で作られた巨人に魂が込められたアイスゴーレムだった。
 アイスゴーレムは、ダストの目の前で立ち止まると長年待ちわびた主との再会を示すがごとく丁寧に一礼をした。

「ハ、ハハッ、俺様は氷の猫でもと思ったがよぉ、ま、まぁ良いぜ、悪い気はしねぇ」
「ダスト殿、猫でござる」

 噂をすれば何とやら、今度は部屋の左出口から氷塊より作られた猫がサッと華麗な身のこなしを見せダストの前に舞い降りた。
 ただし、先にカイル達が戦ったサーベルタイガーに近い大きさだ。

「ばっ、俺様は確かに猫って言ったがよぉ! もっとちっこい」

 ダストの目の前に舞い降りたアイスタイガーは身体こそ大きい物の、主人に忠誠を誓うと言いたげに猫特有の愛くるしさを見せた。

「ムッ、貴様中々悪くない、フン仕方無い可愛がってやらん事も無いぞ」
 
 その姿に魅了されたのか、ダストは視線をチラチラと視線を泳がせていた。
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