Ex冒険者カイル

うさぎ蕎麦

文字の大きさ
99 / 105
1章

90話

しおりを挟む
『そうじゃ。 恐らく近くに賢神の石がおるのじゃろう。 居る理由までは分からんがのぉ』

 賢神の石をどうにかすれば、ルッカさんは正気に?

『うむ。 じゃが、ワシは闘志溢れるナイスガイじゃ。 闘気では賢神の石をどうにかする事はできんぞい。 聖神の杖もそうじゃ。 魔族程度相手なら破魔の効果を出せても賢神の石相手は無理じゃ』

 かと言って、本気でぶつかり合う訳には。
 
『一旦行動の自由を奪うしか無かろう。 賢神の石の事はその後考えるぞい』

 そうするしか無いだろう。
 方針の決まった俺は、闘神の斧を持ち防御寄りに身構えた。

「私の方が貴方より上って事を思い知らせたいのよッ!」

 魔聖ルッカさんが再度突撃、俺の懐に潜り込み拳と脚による格闘ラッシュを仕掛けた!
 壁を背負わされ回避がし辛い状況だが、俺は闘神の斧を上手く操りルッカさんによる格闘ラッシュを受け止めた。
 ルッカさんの攻撃を受け止めた際、闘神の斧から伝わる振動が全身をわずかながらにマヒさせる感覚を与えてくれる。
 俺は、ルッカさんの格闘ラッシュが終わった際の隙をついて、右方向へステップし壁から離れる事を試みた。
 
「そんな事をして何になるんだ!」

 俺が叫ぶとほぼ同時に、闘神の斧の話を聞いていたルッセルさんがエリクさんとセフィアさんに指示を出した。

「私が一番って事をみんなに証明したいのよッ!」

 ルッカさんがのがいる方へ反転し『雷球(サンダーボール)』を4連射。
 俺は壁から回り込むようにステップを踏みながら盾を使い受け流す。
 
「そんなどうでも良い事かよ!」

 俺は『機動減少(スロウリィ)』をルッカさんに向け放つ。
 だが、魔聖石の保護を受けたルッカさんの前に俺の魔法はあっけなく打ち消された。
 しかし、俺の詠唱を見ていたアリナさんが同じく『機動減少(スロウリィ)』を放ってくれた。
 さすがは聖神の杖だ。 彼女の魔法は魔聖石の保護を貫きルッカさんの機動力を大きく奪った。

「ハッ! 敗者の気持ちが分からないお前は目障りなんだよッ!」

 機動力を下げられたルッカさんは、それでもお構いなしに突撃し俺に格闘戦を仕掛ける。
 これでもまだルッカさんは早い。 だが、アリナさんのお陰でルッカさんの攻撃を全て回避する事が出来た。
 
「俺は自分の為に鍛錬し続けただけだ! 勝ち負けなんかしったこっちゃないッ!」

 俺は一度バックステップを踏み、ルッカさんとの距離を取る。
 
 このタイミングを待っていたと言わんばかりに、エリクさんが地上から、エリナさんが跳躍をし空中へ置く様に『拘束(バインド)』の魔法を、セフィアさんが大きく左方向に回り込みネットボウガンを放った。

「タイマンの邪魔するなッ」

 正面からエリクさん、自分の右側からセフィアさんを把握したルッカさんは2M程跳躍し、滞空して回避を試みようとするが。
 
「ぶわっはっは! 掛かりおったわい!」

 エリナさんが放った『拘束(バインド)』が、まるで吸い寄せられるかの様にルッカさんに直撃した。

「クソッ! 卑怯だぞ貴様らっ!」

 『拘束(バインド)』の効力により空中で身体の自由を奪われたルッカさんが叫び声をあげ抗議する。
 
「それは仕方ありません。 カイルさんとて本気で貴女とやり合う訳にはいきませんから。 ルッカさんに何かがあった事くらいは察します。 まずは事情をお話しください」

 ルッセルさんだ。
 
「クッ、だ、誰が」

 ルッカさんが言葉を詰まらせた。
 何かが可笑しい気がする。
 
『ふむ、賢神の石がお嬢ちゃんの言論を操ってるみたいじゃのぉ』

「それなら仕方がありません。この洞窟にダスト殿が居る可能性が高いので、彼を探します」
 ルッセルさんがダストの捜索指示を出した所で、
 
『我を求める者達よ』

 何者かの声が俺の脳に話掛けて来た。
 少しばかり年老いているが、声のキーは闘神よりも高い。
 男性の様だが、聞き覚えの無い声だ。
 
『おお、勇神の剣か! ひさしぶりじゃのぉ!』

 つまり、今の声は勇神の剣と言う事か。

『御無沙汰しておる』
『ふぉっふぉっふぉ、こんな寒い場所でよく平気じゃったのぉ』
『今は試練の時也』
『むほーーー、旧友の再会なのになんじゃーーーっ、昔からお主はいつも空気を読めん奴じゃのぉ!』

 隙あらば下らないギャグをかます闘神の斧も空気読めないと思うのは俺だけだろうか?

『我の元へ参るが良い』

 勇神の剣がルッセルさんに、自分の元へ辿り着く方法を説明した。
 勇神の剣の元へ向かうのは、俺とルッセルさんの二人だ。
 残りのメンバーは勇神の剣と合わ無いとの事で、ルッカさんの見張りに回って貰う事となった。
 
 俺とルッセルさんは、勇神の剣が説明した通りの手順を踏んだ。
 今居る部屋の壁にある隠しスイッチを押し、地下への階段を出現させて。
 階段を降りた先の一本道をひたすら突き進んでくれと。
 
 氷で出来た空間はひんやりと冷たさを感じさせる。
 炎防壁(フレイムバリア)を使い自身の気温調整をしているにも関わらずそう感じてしまうのは氷が引き出す印象のせいなのかもしれない。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

お好きになさって下さい、私は一切気にしませんわ

Kouei
恋愛
婚約者のクレマンド様は、いつも私との約束を破ってばかり。 理由は決まって『従妹ライラ様との用事』 誕生日会にすら来なかった彼に、私はついに告げた。 「どうぞ、私以外のご令嬢をエスコートするなり、お出かけするなり、関係を持つなり、お好きになさって下さい。私は一切気にしませんわ」 二人の想いは、重なり合えるのだろうか …… ※他のサイトにも公開しています。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

【完結】悪役令嬢ですが、断罪した側が先に壊れました

あめとおと
恋愛
三日後、私は断罪される。 そう理解したうえで、悪役令嬢アリアンナは今日も王国のために働いていた。 平民出身のヒロインの「善意」、 王太子の「優しさ」、 そしてそれらが生み出す無数の歪み。 感情論で壊されていく現実を、誰にも知られず修正してきたのは――“悪役”と呼ばれる彼女だった。 やがて訪れる断罪。婚約破棄。国外追放。 それでも彼女は泣かず、縋らず、弁明もしない。 なぜなら、間違っていたつもりは一度もないから。 これは、 「断罪される側」が最後まで正しかった物語。 そして、悪役令嬢が舞台を降りた“その後”に始まる、静かで確かな人生の物語。

処理中です...