Ex冒険者カイル

うさぎ蕎麦

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1章

91話

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 勇神の剣に従い一本道を突き進むと部屋の入り口が見えた。
 俺とルッセルさんはその部屋の中へ入った。
 
 部屋の中に中央部分に氷の中に封印された1本の剣があった。
 本人も言う通りアレが勇神の剣との事。
 また、部屋の奥の方には何故かシェルターがあった。
 
「ようこそいらっしゃいました。 客人様」

 俺達の姿を確認し丁重にお辞儀をし挨拶をする女性、勇神の剣いわく彼女は氷の女王との事だ。
 俺とルッセルさんが同じく丁重にお辞儀をし挨拶を返した所で、何故か置かれているシェルターの中から誰かが出て来た。
 
「テ、テメェ! ルッセルじゃねぇかっ!」

 シェルターの中から出て来た背の低いウィザードっぽい人がルッセルさんを指差して叫んでいる。

「ダスト殿、あの時以来ですね」
「クソがッ! あん時だってテメーと一対一(サシ)だったら俺様が勝ってたんだぞっ!」

 ダストが、負け惜しみに聞こえる事を言っているが、
 
「確かにそうですね、賢神の石を手にしたダスト殿に私が勝つ事は不可能だと思います」

 ルッセルさんが表情一つ変えずに切り返すが、
 
「テ、テメェ! 少しぐれぇ悔しがれよ! テメーのそのいけ好かない態度が気に入らねぇっ!」

 強気な言動をするダストであるが、少しばかり苦しそうに見えるのは気のせいだろうか?

「ダスト殿、あまり叫ばれると身体に堪えるで御座ろう」

 犬型の獣人がダストの身を案じている。

「完治してない身体で賢神の石を使っているだろ。 お前は無理するな、後は俺達に任せろ」

 あれは以前俺達と戦った狼型の獣人、確かルカンか!
 あの時は逃しちまったが、今度こそいい勝負をしようぜ!
 と思ったが、ルカンさんはアーティファクト持って無いんだよな、これじゃ5分の戦いは出来そうにない。
 はぁ、折角だけど諦めるしかなさそうだ。

「う、うるせぇ! 俺様はッ。 クッちくしょう、分かった、大人しくしてやるから有難く思え!」

 賢神の石が何か言ったのだろうか?
 
『役者は揃った様だな。 ならば選ばれし者よ我を掴むのだ。 我を求めたくば、よからぬ事を起こすで無いぞ?』

 勇神の剣が告げると、氷の中に封印されている剣身が光り出した。
 
「先に辿り着いた俺から行かせて貰うぞ、スルーフ」
「拙者は見に回るでござる」
 
 スルーフさんが、ルカンさんの後に俺達がやれと目で合図を送った。

『よかろう。 ただしこの氷に手を通せばお主達は氷漬けになるだろう・・・

 おや? 勇神の剣が言った、だろう、の言葉が意味深に聞こえたが気のせいか?
 
「フン! 随分と簡単な話では無いか!」

 ルカンさんが激しく吠え、自らの周りに闘気を集め出した。
 
 闘気を集め終わりオレンジ色のオーラを全身に纏ったルカンさんは、勇神の剣が封印されている氷の柱に向け、渾身の右ストレートを放った!
 
 ギーーーーーン!
 
 と派手な音を立て、
 
「ぐ、この程度の痛みッ!」

 ルカンさんは自らの拳に襲った衝撃に対し歯を食いしばって必死に堪えているみたいだった。
 勇神の剣が封印されている氷柱はルカンさんの一撃を受けたにもかかわらず、かすり傷すら負っていない。
 
『愚か者め!』

 勇神の剣が叫ぶと、見えない衝撃波が発生したらしくルカンさんを派手に吹っ飛ばした。
 衝撃波により、壁に激突させられたルカンさんは一度身体が崩れ込んだのちに片膝を立てた中腰の態勢で勇神の剣を睨みつけた。
 
『貴様に我を扱う資格はあらぬ! 次、参れ』

「私が行きましょう」

 ルッセルさんが闘気を集め、全身に黄色のオーラを纏わせた。
 ルカンさんと違い、ルッセルさんは抜刀し身構えた。
 
「はぁぁぁぁぁっ! 奥義、冥破活昇斬!!!!」

 奥義を発動させたルッセルさんが縦横無尽に、氷柱を斬り刻む! 速度も威力も十分に見える。
 これなら氷柱を削りきって中にある勇神の剣を取り出せるかもしれない!
 と俺が思ったのも束の間。

『愚か者めっ!』

 ルカンさんの時と同じく見えない衝撃波が発生し、ルッセルさんを大きく吹き飛ばした。
 ルッセルさんは、吹き飛ばされながらも空中でクルリと前転をし体勢を整えるが!
 
 ドスン!
 
 派手な音を立て、先に居たルカンさんにぶつかってしまった。
 ルッセルさんは、背中を抑えながらルカンさんの方へ振り向き、

「す、すみません」
「いや、この程度気にするな」

 ルカンさんがルッセルさんの謝罪に対し返事をする。
 自然と二人の視線は重なる訳で、更に、その瞬間を見逃さない奴もいる訳だ。

『ぬ、ぬおおおおおおっ!!!! こ、ここに来てまさかのヴォーイズラブっちゅーやつかのぉ!!!! 良いぞ、良いぞもっとやるのじゃワシは応援するぞいっ、ちゅーかワシもまぜるんじゃああああッ!』

 鼻息を荒くし、叫ぶ闘神の斧だ。
 その間、ルッセルさんとルカンさんはお互いの視線を外していない。
 闘神の斧が言い終わった所でお互いハッとなり視線を外したのだが。

『愚かモノッ!』
『ぬ、ぬおおおおおおっ!!!! 止めんか勇神の剣! ワシは男が好きでも痛いのが好きじゃないぞい!!!!』

 勇神の剣が闘神の斧を精神攻撃か何かでシバいたみたいだ。
 
「ハハハ、カイルさん、お願いします」

 ルッセルさんがゆっくりと立ち上がり俺の方に向かいながら告げた。
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