Ex冒険者カイル

うさぎ蕎麦

文字の大きさ
101 / 105
1章

92話

しおりを挟む
 ルッセルさんとルカンさんの心境が気になるが、まぁそんな事は無いだろう。
 さて、二人の行動を見た限り強引に壊しに行ってもダメみたいだ。
 確か勇神の剣はこの氷柱に手を通せばって言ってたな。
 つまり、手を通す事は可能と考えれる。
 けど、氷漬けになってしまう。
 勇神の剣と言えば勇気を求めると思う。
 
『ふぉーっふぉっふぉ、悩んだ時は何も考えず気合と根性じゃ! なーにワシもアヤツと同じアーティファクトじゃ! 大船に乗ったつもりでワシの闘気を信じるのじゃ!』

 確かにじいさんの言う通りだ!
 よし、覚悟は出来た、行くぜ!
 俺は右腕に闘気を集中させ、赤いオーラを纏わせた。
 
「いくぜ!」

 俺は闘気を纏った右腕を氷柱向けて伸ばした。
 スッと水に触れる様な柔らかい感触が伝わると、俺の右手は氷柱の中へと潜って行った。
 このまま、勇神の剣の元まで届けば!
 そう思うが、段々と右手に対して冷たい感覚が襲って来る。
 クソッ、このままでは氷漬けにされてしまうのか!?
 
『気合と根性じゃ!』

 じいさんの喝と共に俺は右腕に更なる闘気を集め、凍結を防ぐ。
 そして遂に勇神の剣の柄に手が触れる!
 
『甘い! 我は勇神の剣也、闘神の剣有らず!』
 勇神の剣が一括し、先の2人と同じく俺も衝撃波か何かで吹っ飛ばされてしまった。
 だが、ある程度合格ラインに達したのかその勢いは軽く、氷柱より20cm程離れた所で安定した着地を取れる程度だった。

『次、参れ』

「つまるところ、勇気を求めるでござろう。 勇気の心得、拙者に任せるでござる」

 スルーフさんは上着を脱ぎ捨て精神を統一させた。
 そして、魔力、闘気を一切纏わず氷柱の中へ手を伸ばす。
 それでは勇神の剣が言った通り凍り付いてしまうのでは? と思うも敵対している相手なのだらそれでも構わないかと思いながら俺は傍観した。
 俺の心配とは裏腹にスルーフさんの手は勇神の剣の柄まで辿り着いた。
 
『汝の勇気しかと受け止めた。 我が力汝に貸そう』

 勇神の剣が言い終ると、氷柱が音を立て崩れた。

「これが、勇神の剣でござるか、真に美しい」

 勇神の剣を手にしたスルーフさんはその剣身が放つ美しき光に見惚れている。
 残念ながら勇神の剣は敵の手に渡ってしまった事になる。
 かと言って俺にはどうする事も出来なかった以上次の手を考えるしかない。

『ちょーーーっと待つんぢゃああああっ! 最後の奴が有利に決まってるぞい! 卑怯じゃーーーー』

 じいさんが不服に思ったらしく勇神の剣に抗議をするが、
 
『アーティファクトである貴殿の力を借りる事は卑怯では無いのか?』
『ぐぬぬ。 じゃが、魔族に手を貸す事も無かろう!』
『我に取って人も魔族も変わらぬ。 正義とは視点により変わるもの故』
『ばかもん! 魔族は人間を虐殺してるんじゃ! 残虐に虐殺し、人間の領土を侵略してるんじゃ!』
『貴殿から魔物の血の臭いを感じる。 人間の虐殺と魔物の虐殺何が違うのであろうか?』
『うぐっ、むぐぐ。 じゃが、じゃが!』
 
 勇神の剣の言う事正論に聞えて来る。
 確かに俺達人間は魔族を討伐している。
 彼の言う通り、それは魔族が人間を討伐するのと何ら変わりはない。
 これでは俺は何も言う事が出来ない。
 
『我は我の感性に基づき生きるのみ。 偶々魔族と一致しただけにすぎぬ』
『くぅ、共に戦った仲間じゃろうに』

 じいさんの声から力を感じられない。
 勇神の剣が言う通り、絶対的に魔族の力になる訳ではないのは唯一の救いだろうか?
 だとすれば、スルーフさん次第では。

「はっはっは、勇神の剣は俺様達のモンだろ! ルッセルの野郎どもをやっちまおうぜ!」

 しまった、ダストの言う通りだ!
 勇神の剣が相手に渡った今、俺達は明らかに不利だ!

 俺はルッセルさんの元に近付き闘神の斧を持ち身構える。
 ルッセルさんもまた、ルカンさんから距離を取り抜刀、身構える。

『愚か者め! 武人の心得に反する事に我は手を貸さぬ!』

「ダスト殿。 勇神の剣無くして勝利はなかろう致し方無きござろう」
「あ、く、クソ、畜生、分かったよ、分かったよッ」

 賢神の石が何かを言ったのか? ダストさんがシェルターの壁を蹴っ飛ばして怒りを発散したみたいだ。

「だがよぉ、オメー等大事な事忘れてるよなぁ?」

 ダストがねっとりとした笑いを見せ天井を指差した。

「クッ! ルッカさんが!」

 ダストが言いたい事を理解した俺は部屋の外へ出ようとするが、

『賢神のやった事は我の管轄外也』

 勇神の剣が、スルーフさんに対し自分を使えと言った。
 だったらやるしかない! と俺は闘神の斧を振りかざしスルーフさんに斬りかかる。
 
「拙者に任せるでござる」

 勇神の剣の許可を受けたスルーフさんがルカンさんの前に立ちふさがり、俺の攻撃を受け流した。

「私も参ります!」

 ルッセルさんが回り込み抜け出そうとするが、
 
「俺の出番だな」

 ルカンさんが、仁王立ちをしルッセルさんの行く手を阻んだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

お好きになさって下さい、私は一切気にしませんわ

Kouei
恋愛
婚約者のクレマンド様は、いつも私との約束を破ってばかり。 理由は決まって『従妹ライラ様との用事』 誕生日会にすら来なかった彼に、私はついに告げた。 「どうぞ、私以外のご令嬢をエスコートするなり、お出かけするなり、関係を持つなり、お好きになさって下さい。私は一切気にしませんわ」 二人の想いは、重なり合えるのだろうか …… ※他のサイトにも公開しています。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

【完結】悪役令嬢ですが、断罪した側が先に壊れました

あめとおと
恋愛
三日後、私は断罪される。 そう理解したうえで、悪役令嬢アリアンナは今日も王国のために働いていた。 平民出身のヒロインの「善意」、 王太子の「優しさ」、 そしてそれらが生み出す無数の歪み。 感情論で壊されていく現実を、誰にも知られず修正してきたのは――“悪役”と呼ばれる彼女だった。 やがて訪れる断罪。婚約破棄。国外追放。 それでも彼女は泣かず、縋らず、弁明もしない。 なぜなら、間違っていたつもりは一度もないから。 これは、 「断罪される側」が最後まで正しかった物語。 そして、悪役令嬢が舞台を降りた“その後”に始まる、静かで確かな人生の物語。

処理中です...