Ex冒険者カイル

うさぎ蕎麦

文字の大きさ
102 / 105
1章

93話

しおりを挟む
「はっはっは! 俺様は行かせて貰うぜ!」

 ダストが俺達を挑発し、部屋の外へ出た。

「クソッ」

 俺は闘気を込め威力の高い一撃を何度も放つ、だが勇気のオーラを身に纏ったスルーフさんの鮮やかな受け流しの前に全く歯が立たない!
 
『奴は防御をするしか無いのじゃ! 無視して攻撃あるのみじゃ!』
 
 じいさんの言う通り、スルーフさんは俺達との攻めにおける戦いは禁止されているが守る為の戦いまでは禁止されていない。
 かと言って、スルーフさんの命を奪った場合勇神の剣を入手出来なくなるかも知れない。
 ええい、細かい事は考えるな! 突破する事だけかんがえればいいんだ!
 闘神の斧の力を借りている俺は、ルミナスさんと戦った時の様に勢いに任せた思考しか出来なくなっている。

「これでも食らえ!」

 俺が放った渾身の一撃は、スルーフさんの軽い身のこなしによりあっさりと回避されてしまう。

「未熟でござる」

 空振りにより晒した膨大な隙に対し、スルーフさんが鋭い剣閃を放った。
 しまった。 防御に専念してる訳じゃなかったのか!
 スルーフさんの一撃は俺が身に付けている鎧の隙間に炸裂した。
 肉が切られ、赤い血が流れると思ったがそうではない。
 骨が軋む様な鈍痛が俺の腕を襲った。

 俺は痛みに耐えきれず3度バックステップを踏み、無詠唱で済む痛みを和らげる程度の『治療術(ヒーリング)』を掛けた。
 
「まだです!」

 隣ではルッセルさんが、ルカンさんに対し何度も連撃を放っているが、防御に専念しているルカンさんに対しかすり傷一つ付ける事が出来ずにいる。

「貴様の闘気はそんなものか!」

 ルカンさんが、集めた闘気をルッセルさんにぶつけ、大きく吹き飛ばした。
 ルッセルさんは空中で受け身を取るも、部屋の半分程距離を取られる。
 10歩ばかりで詰め寄れる距離であるが、そのわずかな時間すら稼がれた事が非常に歯がゆい!
 急がなければダストがルッカさんの元に辿り着いてしまう!
 焦りだけが俺の脳内を駆け巡っていたのであった。


―永氷の洞窟1F―


「はーっはっは! テメー等の戦力は俺様達が頂いていくぜ!」

 カイルとルッセルを待つ3人の前にダストが現れた。
 
「アンタは!」

 ダストの存在を認識したセフィアがクロスボウで彼を狙撃。
 鋭い矢がダストの急所を襲うが自らを守る盾として地属性の魔法を発動させ、周囲にカンと虚しい音を響かせた。

「僕だってやれますから!」

 エリクが風属性の魔法を放つ。
 だが、その言葉尻は弱い。

「あめぇんだよ! 雑魚がッ!」

 ダストが氷魔法を放ち、エリクの放った魔法を破壊、貫通した魔法が彼を襲う。
 
「だまらっしゃい!」

 エリナがエリクに『魔法抵抗(レジスト)』を掛けダストの魔法を打ち消した。
 アーティファクト同士の戦いでは、以前の戦いでの消耗を回復し切れていないダストが勝つ事は難しい様だ。
 だがしかし、それは防御の話であり攻撃は不得手な聖神の杖では今のダスト相手でも有効打を打つのは難しいだろう。
 かと言って、アーティファクトを持たないセフィアやエリクでは彼にダメージを与える事すら出来ないだろう。
 
「ケケケケ、俺様の目的はテメー等じゃねぇんだよ!」

 ダストは『瞬間移動(テレポーテーション)』を使い、バインドにより拘束されている魔聖ルッカの元へ近づいた。

「クッ、貴様ッ、私に近付くな! カイルとの勝負が終わって無いんだぞ!」

 ダストに近付かれたルッカは抵抗を見せるが、

「あーん? オメー、力が欲しいんじゃねぇのかよぉ? 人間みてぇなちんけな奴等に関わってねぇで俺様と一緒に魔族につけよなぁ?」

 続いて賢神の石もルッカに対し何かを告げる。
 力に溺れるルッカは彼等の言葉の前に成すすべなく抵抗の意思を解いてしまう。

「ルッカさん! 人間を裏切るんですか!」

 エリクが叫び、ルッカへ説得を試みる。
 だが、彼女の反応は無い。

「お嬢ちゃん!」

 セフィアは矢の刺さっていないクロスボウをルッカの肩に狙いを定め、適切な矢を道具袋の中から探そうとするが何も見当たらかったのかその狙いを外した。
 毒、麻痺、睡眠、どれを使っても今の状況を打開出来る物は無かった。
 だが、元々味方を狙う事を想定している武装で無い以上それは仕方が無いのかもしれない。
 
「フン、ワシは近接戦も出来るんじゃ!」

 アリナが聖神の杖を構えルッカ目掛けて跳躍し、彼女の太ももを狙い殴打した。
 ここで、賢神の石が何かを告げた。
 
「チィィィッ、分かっておったわい! アンタとワシの力じゃ精々5分じゃ! 本人の意志力がアンタに傾いてる以上ワシの力だけじゃ何も出来ない事位!」

 アリナは着地し、中腰で片膝を着いた態勢のままダストを見上げ、睨みつける。
 賢神の石が強引にルッカを支配していたのならば、自分の力で解放させられたがその可能性は無残にも打ち砕かれたのだ。
 
『多分この娘を魔王城に攫う胎よ。あたしがこの娘に聖なる呪いを掛けて、あたし意外の魔球に触れさせない様にするわ! 他の魔球ならどうなるか分からないけど、あたしが制御出来るなら最悪は起こらないから!』
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

お好きになさって下さい、私は一切気にしませんわ

Kouei
恋愛
婚約者のクレマンド様は、いつも私との約束を破ってばかり。 理由は決まって『従妹ライラ様との用事』 誕生日会にすら来なかった彼に、私はついに告げた。 「どうぞ、私以外のご令嬢をエスコートするなり、お出かけするなり、関係を持つなり、お好きになさって下さい。私は一切気にしませんわ」 二人の想いは、重なり合えるのだろうか …… ※他のサイトにも公開しています。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

【完結】悪役令嬢ですが、断罪した側が先に壊れました

あめとおと
恋愛
三日後、私は断罪される。 そう理解したうえで、悪役令嬢アリアンナは今日も王国のために働いていた。 平民出身のヒロインの「善意」、 王太子の「優しさ」、 そしてそれらが生み出す無数の歪み。 感情論で壊されていく現実を、誰にも知られず修正してきたのは――“悪役”と呼ばれる彼女だった。 やがて訪れる断罪。婚約破棄。国外追放。 それでも彼女は泣かず、縋らず、弁明もしない。 なぜなら、間違っていたつもりは一度もないから。 これは、 「断罪される側」が最後まで正しかった物語。 そして、悪役令嬢が舞台を降りた“その後”に始まる、静かで確かな人生の物語。

処理中です...