Ex冒険者カイル

うさぎ蕎麦

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1章

94話

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 ルミナスが、エリク、セフィア、アリナに告げる。
 恐らくカイルとルッセルにも聞かせていただろう。
 ルミナスの問い掛けに対し3人は黙ってうなずくしか無かった。
 仮にルッカに掛けている拘束(バインド)を解いたとしても、魔聖ルッカとダストの2人を相手にして勝つのは不可能どころか自分達の命が危うくなってしまう。
 良くてもカイルとルッセルを置き去りにして、転移魔法で逃げる事しか出来ないだろう。
 
 ダストもまた、完全回復しておらず賢神の石の力を使っている状況下で3人を倒す事は不可能だろう。
 ルッカの拘束(バインド)を解いても、エリナとエリクの手により何度でも拘束(バインド)を掛け続け最終的にはダストの魔力が先に尽きてしまうはずだ。
 
「はっはっは、残念だったな! この娘は魔王城に転移させて貰うぜ!」

 ダストがルッカに対し転移魔法を発動させ、魔王城へ転移させた。
 続いて賢神の石が地下で戦っているルカンとスルーフに撤退の指示を出した。
 程無くして、地下よりルカンとスルーフが戻って来た。
 
 同時にカイルとルッセルの声も聞こえた。
 彼等の姿を見付けた3人は、カイル達との合流を見込みほぼ反射的に攻撃を仕掛けるが、それは想定していたかの如く勇神の剣を使い鮮やかに全ての攻撃を受け流した。

 3人は、それでもカイル達と挟撃が取れてる状況と判断し追撃を試みるが、やはり全ての攻撃を受け流される。
 
「けーっけっけ。 ばーーーーーかじゃねぇの~? 俺様達はとっとと魔王城に帰っちまうぜ、あばよ」

 ダストは『瞬間移動(テレポート)』を使い、ルカンとスルーフに合流し転移魔法を発動させた。
 誰も彼もが、転移魔法が放つ光がダスト達を包み込み姿を消す様を虚しく見届ける事しか出来なかった。
 
「クソッ! 畜生、ふざけやがって!!!!」

 ルッカが誘拐されてしまった事か、自分の力が誰にも通用しなかった事か。
 それは本人にしか分からないがカイルが珍しく取り乱し、両ひざを地面に付きながら凍り付いている地面を何度も何度も拳で叩いた。
 誰もがカイルの抱く心境をそれと無く分かる手前、誰一人として彼を止める者は居なかった。

「まだ終わった訳じゃないぞい」

 ある程度カイルの気が済んだと判断したところで、アリナがカイルにそっと近寄り優しく肩に手を添えた。
 
「すみません」

 カイルは細々とした声でゆっくりと立ち上がった。
 
「ワシ等かて賢神の石の前では無力だったんじゃ。 お主一人が謝る事じゃないぞい」
「全てはリーダーである私が」

 アリナに続いてカイルをなだめ様としたルッセルであったが、

「お主もリーダーだからと一人で背負うでない。 その内潰れるぞい、今回の事は仕方が無いと諦める事しか無かろう。 人間100%予想をする事は不可能じゃからのぉ。 次どうするかを考えるしかあるまい」

 アリナに止められ、ルッセルが諭されてしまう。
 
「ははは、これしきの事で挫ける私ではありませんよ」

 強がるルッセルであるが。
 
「お主、顔に出てるぞい。 声のトーンも適切な感情に比べて1音低くなっておるぞ。 リーダーである以上仲間の前で強く振舞うのも大事じゃが、一人になった後はしっかり発散しておきなされ」

 再びアリナに諭されてしまう。
 
「マスター? 私ならいつでも大丈夫だから」

 ルッセルの耳元で囁くセフィアだ。
 
「お主が嫌っている訳で無ければ、そこの姉さんの為にも応えてやるといいぞい。 なぁに、証拠が無ければどうという事は無い事じゃ。 生死が掛かっている状況下である以上人間の生存本能として正しい事じゃからのぉ」

 真面目に言うアリナだ。
 これも年功上の知識であると推察が付く。
 
「そこのとんがり帽子。 お主もセリカとやらに泣き付けばそれ位はしてくれるじゃろうが。 お主はそこまでせんでもいつも通りで十分じゃろう。 切り札は残しておくが良いぞい」

「ハハハ、その通りですよ、僕は問題ありませんよ」

 アリナの言葉に対しエリクもまた強がって見せる。

「かと言って無傷では無い事は覚えた方がいいぞい。 精神へのダメージは自分の力だけで気付くのは難しいからのぉ」

 自分の事に対しやっぱり見抜かれていた、とエリクは苦笑を見せた。

「カイルよ。 ワシの見立てではお主は真面目過ぎじゃ。 それに迷いも深いじゃろう、止めておけとしかワシからは言えん。 どうしてもにしても店を使えとしか言えんぞい」

 エリナは一旦言葉を止め、カイルの様子を伺った。
 カイルは、何のアクションも起こさないまま黙ってアリナを見据えたままだった。
 
「万が一ワシの見立てが間違っていたならば言いなされ。 ワシの方からひ孫達なりセリカとやら辺りに打診しておくぞい。 くれぐれも、中途半端な相手にだけは手を出すんじゃないぞい。 お主の傷を深めるだけじゃ」
「大丈夫です、分かっています」

 カイルはそっと瞳を閉じ静かな返事をした。
 
「帰るぞい、転移魔法は任せたわい」

 アリナさんの合図を受け、エリクが転移魔法を発動させた。
 カイル達は勇神の剣を手に入れられず、賢神の石の力により操られたルッカを魔族軍に奪われる酷い結末の中ヴァイスリッターへ帰還した。
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