ブレイバー・フィルリーク

うさぎ蕎麦

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1章「魔剣オルクストート」

13話

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「はにゃにゃ? えっと、ふぃるりーくさ~んわたしを助けてくださいですぅ☆」
「なんだ、ちなみさんか、助けてくれと言われても助ける必要がないように見えるが」
「ゆーしゃさまぁ? 流石にソレはないっすよ……」

 炎の精霊がため息を付きながら言った。

「そうか? フィア王女がそんな事をいうとは思わない」
「いやー、あっしにも聞こえたんっすけど、この小娘みたいなあざとさは無かったっすよ」
「ふむ、そう言われてみればそうかもしれん」
「にゃにゃにゃ~? ちなみちゃんわかんにゃーい☆」
「サイですか……」
「……女に興味ない、ほっとく」
「えええ? そりゃーマスターは女性っすから女性を助ける必要はないっすけど!」
「ちなみちゃんも女の子には興味ないですぅ~」
「いや、あんさんさっき助けてってゆーてましたやん」

 女性二人のやり取りに対して呆れ尽くした炎の精霊がフィルリークに対して救援の視線を送った。
 
「勇者として助けを求める者を見捨てる訳にはいかない」

 二人の意見を押し退け、フィルリークが凛とした声で言い放った。
 
「……チッ」
「マスター? 今舌打ちしたっすか?」
「何か……?」
「い、いえ、なんでもないっす、プリーストタウン王女であるフィア様がそんなはした無い事する訳ないっすよね……」

 フィアの威圧感に押された炎の精霊が、視線をキョドらせながらしどろもどろと応えた。
 
「いや、する」
「そ、そっすか」
「にゃにゃー? 私も困った人がいたら助けないと駄目だと思いますぅ☆」

 フィルリークの意見を聞いたちなみはものすごい勢いで手の平を返した。

「……チッ」
「マスター? 確かにどーでもいい女性を助けたところで魔剣オルクス・トートは手にはいらないっすけど」
「いや、魔物の気配はしない、助けるだけなら俺一人で十分だ、無理する必要はない」

 炎の精霊は、聞いた事の無い魔物という単語に対して一瞬キョトンとした表情を見せるが、

「そんな、勇者様一人に行かせる訳にはいかないっすよ!」
「大丈夫ですにゃ~☆ ちなみちゃんがいるんですにゃ~♪」
「……」

 フィアは、フィルリークに対し『王女様を一人残す訳ないよね?』と言いたげな視線をぶつけるが、等のフィルリークはそれに気がついていないようで、そんな彼女の思惑を無視し謎の少女を救出へ向かった。

『こっちです、そこを右です……』

 暫くして再び少女の声が聞こえて来た。
 フィルリーク達は、その声に従い分かれ道を進んだ。

「ここか?」

 声の主が指示する通り進むと行き止まりに到着した。

「はにゃにゃ? 誰もいませんよぉ~?」

 ちなみがキョロキョロと周囲を見渡すも、道中聞こえて来た声の主と思われる人物の姿は無かった。

「そうっす、精々薄汚い剣があるだけっす」

 炎の精霊がいう通り、黒いオーラに包まれた怪しげな剣が地面に転がっている。

『これが私です、悪しき魔物によって無残にも剣の姿にされてしまいました……このままでは何も出来ません、さぁ早く私を手に取って私を助けてください』

「ふむ、この世界には珍しい魔物がいるのか」

 フィルリークは、人間を剣に変える魔物の話など聞いた事は無いと思いながらもその剣に触れようとする。
 
「ダメ!」

 その直後、フィアがフィルリークの手元を目掛けハリセンによる一閃を放った。
 
「フィアさん?」
「にゃ、にゃ、にゃ? 魔物さんって何ですかぁ? ちなみちゃん、そんな事聞いた事ないですよぉ~?」
「そうなのか?」
「はいですにゃ~☆」

 この世界に住んでいるちなみさんがそういうならそうなのだろう、そう考えたフィルリークはフィアに止められた事も踏まえて触れようとする手を止めた。

『そ、そんな!? 悲運な目に遭った私を見捨てるのですか!?』

「でもでもですよぉ~? この女性サンって、魔剣オルクストートさんにそっくりじゃないですかぁ?」
「そうなんっすか? あっしはその手の事に詳しくないから分かんないっす」
「なるほど、確かにこのまがまがしいオーラ、魔剣と言われても違和感は感じない」

 フィルリークは、つい最近戦ったネザーリッパーの武器、魔剣ネザーリプトを思い出しながら答えた。

「きっとそうですよぉ~♪ でもですよぅ? 魔剣サンに触っちゃったら精神を乗っ取られちゃんですよ~」
「そう言われてみればそうだな、魔剣を扱い切れる人間も居ない訳じゃないが」

 魔剣に精神を乗っ取られた人間は、大体殺戮の使徒となってしまう。
 魔剣の魔力を上回る魔力、精神力を持った一部超人以外は制御不能となってしまう。
 最終的には魔族になってしまったり、命を落としてしまったりと悪い話しか聞いた事はない。
 勿論、フィルリークが元居た世界の話になるのだが。
 
「そう……」
「にゃにゃにゃ!? フィアさん!? にゃにするんですか!?」
「魔剣を扱い切れる人間が居ると言った」
「わ、わ、わ、天才魔導師のちなみちゃんでもどうなるか自信が無いんですよぉ!?」
「私はプリーストタウン王女、フィア・ラックフィルト」

 確かにちなみはマジックタウントップの魔術師である。
 そのちなみが慎重になってしまう、未知の物体に対する警戒は正しいだろう。
 だが、フィアも強大な魔力を持っている事も事実だ。
 ちなみの反応が意味する事を分かっているとは思うが、この魔剣を自分が手にする事で大陸の平和が守られる事を考えた上の行動なのかもしれない。
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