【完結】死に戻り王女は男装したまま亡命中、同室男子にうっかり恋をした。※R18

かたたな

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同室決定

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 いつもの雰囲気とは違い、仕事モードで私達の部屋の前に立つ管理人は新鮮だった。
 貫禄?それが追加された感じ。


「コハクと新入りは明日から学園の入学が認められた。これより二人は相互監視人として住む寮へ移動して貰う。直ちに準備を整えるように。」


 あれ?相互監視人の話は合格したら考えるって言っただけなのに既に学園としては決定事項の様だ。
 コハクさんもそれを気にしているのか気遣わしげに視線を送ってくる。

 彼は私が相互監視人にならなければココから出られないと言うのに、管理人の言葉に慌てて言葉を返してくれた。


 「待ってください、彼は合格したら考えると言っていただけで…」
 「僕は何も持っていく物は有りませんから。このまま行けます。」


 そう言う彼を横目に言葉が出ていた。コハクさんが驚きつつ戸惑う仕草がまたいい。なんかこう…凄く面白い。

 少し間を置いてから私の意志が変わらない事を確認すると、パッと嬉しそうに「俺も。」と話して綺麗な牢獄から外へ足を踏み出した。


 その一歩がとてもワクワクした。


 収容された施設の外に出ると空は青く、元気な風が時折ザァッと吹き抜ける。

 こんなに堂々と何かに怯えず外を歩けるのは久しぶりだな。

 空を見て、風の行く先を見て、歩く人々を見て。それだけがとても楽しかった。

 管理人は親切に色々案内してくれたけど、一回では覚えるのが難しい程広い学園だった。
 更に在学生達の私達を見る目が痛い。
 
 両手足に壊れた枷を着けてる上に壊れたこの国の重罪人様の手枷が追加で付いている私。
 黒い霧の魔力を纏うお面にフードのコハクさん。目立つコンビだと思う。
 私の枷はそろそろ外して貰えないだろうか。

 「管理人、そろそろ僕の手枷って外して貰えないんでしょうか?」
 「あぁ、試験用のは外して貰えるだろうが元から着いているのは無理だろうな。」
 「それは何故?」
 「学園長が君の経歴調査を警備監視課の学生のテスト課題にするから外させない。って言っていたからね。君の素性を探る為の重要アイテムってところだ。」
 「…テスト課題。」

 きっと祖国では私を探している人が居るかもしれない。学生から私がこの国に居ることがバレるという事は無いだろうか・・・。不安が過り、お腹の辺りをギュッと苦しくする。

 いや、待てよ。

 学生が暫く私を監視するという事はその分、人目が多くあると言う事。
 祖国から処刑所まで搬送される間に逃げたのはバレてるはずだから、そこから逃げるとしたらトロルゴアだろうとすぐに推測できる。
 となれば人目が多い方が安全と言えば安全。もし婚約者が私を暗殺しようと人を雇ったとしても人目が有れば難しくなる。

 「まぁ、いいか。」
 「いいの!?」

 隣を歩いていたコハクさんにとても驚かれた。

 「あぁ、うん。知られたくない恥ずかしい過去とかなら結構あるけど、後ろめたい罪歴なんて無いから。
 国の人間に情報が漏れたら嫌だなって思ったけど、行先は限られているからすぐバレそうだし、それなら身を守る為に人目が多い方が優先ですね。」

 そんな会話をした後、やっと寮に着いた。

 「ここが君達二人の部屋だよ。じゃあ後は二人で協力して住まいを整えてくれ。」

 寮の説明も終わり部屋に入るコハクさんと二人だけになった。管理人さんはさっさと帰ってしまってあっさりしたものだ。

 寮の部屋は小綺麗で温かみのある部屋だった。綺麗だけど使い込まれた机が2つとカーテン付の二段ベッドのある部屋には優しい太陽の光が差し込む。
 お風呂・トイレ・キッチン・玄関。寮の二人部屋にしては設備が整っていて上等だと思う。

 そんな良い部屋なのだけど、大きな争いが起こるかもしれない一つの懸念を見つけてしまった。

 
 「コハクさん。僕たちに最初の問題が起こりました。」
 「ん?」
 「二段ベッドのどっちが上かですよ。」
 「ぷっ、ははは、どっちでも良いよ俺は。」

 コハクさんが目を丸くした後、お腹を抑えて笑った。

 「どっちでもいいんですか!?本当に!?僕が上でもいいですか?」
 「いいよ。」
 「やったー!」

 二段ベッドといえば上が一番と思っていた私はベッドの上へ続く梯子に早速登るとベッドに飛び込んだ。

 よかった!争いは起こらなかった。

 ベッドへ付けられたカーテンから顔を出せば少し高い位置から見える部屋の風景に嬉しくなる。おおー!と声が漏れた。秘密基地みたいだ!!
 
 「君の年相応な反応が見れて少し安心したよ。そう言えば君を何て呼んだらいいかな?本当の名前は言えないんだろ?」
 「コハクさんは察しが良いんですね。」
 「さっきの話を聞いていたら何となくね。」
 「呼び名なんて考えてませんでした。ドロッピーで良いんじゃないですか?」
 「名前に拘り無さすぎるぞドロッピー。」
 「じゃあ何にするっピー…。」
 「ふっ、ははは。」
 「っはは。」

 二人で笑うとぎこちなかった友達スタートが嘘の様に感じる。本当に前から友達だったみたい。

 楽しい。

 これなら名前を捨ててずっとここに住むのも良い。この学園を卒業して庶民として仕事を探し、働いて。週末は友達と飲んだりして騒いで。

 他愛もない話をしながらお酒を飲む自分とコハクさんの姿を思い浮かべた。

 きっととても楽しい。
 
 「名前、コハクさんが付けてくださいよ。」
 「えー。責任重いな。」
 「でも名前付けると愛着沸が沸くらしいですよ。」
 「愛着ならもう沸いてるよ。俺にとっても初めての友達だからね。」
 「コハクさんも?」
 「うん。」
 「…へぇ、嬉しいですね。コハクさんの初めてですか。」
 「その言い方からかってるだろ。」
 「いいえ。初めて同士仲良くしましょう。」

 ニヤニヤ笑うとため息をつくコハクさん。

 「名前、名前・・・。あ、ヒスイってどう?」
 「ヒスイ、何か思い入れとか有るんですか?」
 「両親が俺の名付けの時、コハクとヒスイが最終候補だったって。兄弟にヒスイは居ないし勿体ないなって思ってたんだ。」
 「ヒスイ、カッコいいですね。じゃあヒスイって呼んでください。」
 「あぁ、宜しく。ヒスイ。」

 
 新しい名前と新しい部屋。
 この日から私の新しい生活がスタートする。
 胸ポケットにある【王家の印章】に何気なく触れると優しい温かさが触れた気がした。
 

◆◆◆


 自分たちの部屋が分かった所で、生活で必要な物を確認し揃える事にした。

 大体は学園内の売店で揃うらしい。とても便利な学園だ。今回はお金の無い私達用に無料の支給品を取りに行く。

 売店の扉を手で押せばリンッと可愛らしく鈴が挨拶をする。店頭にはふくよかなおばちゃんがニコニコ笑顔で迎えてくれる。

 「今日から入寮する者です。日用品を頂きに来ました。」
 「あぁ、聞いているよ。さぁ、持っていきなさい。他の物は追加料金がかかるからね。しっかり考えて買うんだよ。」
 「分かりました。」

 あまり近づくと気味悪がられるからと、売店の外で待機するコハクさん。
 相互監視人の分もと売店のおばちゃんに話しかけるとドンッとカウンターに二つの大きな袋が乗せられる。明らかに音が重そうだ。

 「重いから気を付けてね!まぁ、男の子なら大丈夫ね。」
 「は、ぃ。」

 相互監視人という犯罪歴が有るかも知れない人にも態度が変わらないトロルゴアの人達。これってすごいと思う。
 二つの袋を両脇に抱えようとするけれど重すぎる。売店のおばちゃん、コレを軽々と持ち上げるとは…。売店を出れればコハクさんが居るからとヨロヨロと根性で運んで見るのだけど出口が後少しの所で足がもつれた。

 「ぅわあ!!」
 
 もし荷物に割れ物があったら困る!お金無い!!

 必死に荷物を守り転ぶ・・・と思いきや、店内の様子を影から見ていたのかコハクさんが助けに入ってくれた。
 売店のおばちゃんに気付かれる前に二つの荷物を持ち、私を支えてから外へ出る彼はヒーローなのか!?と思う程の手際の良さ。

 「ごめん、無理させて。もっと早く手伝いに入れば良かったね。」

 荷物を彼に持たせたまま追いかけると、持つと言っても聞いて貰えず寮の部屋まで帰ってきた。

 …今は男なんだ、もっと筋肉つけなくちゃ。


 二人分の荷物を持っても安定して歩く彼の背中を見て自分の腕を触りながらハァ…とため息をついた。
 
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