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Mission 16*役者
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しおりを挟む「随分と意気投合したみたいだから、私は帰っていい?」
「はあ?」と、圭と大吾が声を揃えた。
お互いに顔を見合わせ、嫌そうな顔をする。
「お互いに何が気に入らないんだか知らないけど、私は二人を気に入ってるの。だから、もめるなら私のいない場所でどうぞ。すみません。鶏串と豚串とつくねを三本ずつください。全部タレで」
「塩だろ!」と、また声が揃う。
私より気が合ってんじゃない。
「タレと塩の両方で」と、店員さんに伝える。
「大吾、頼んでたのは?」
「出来てる」と言って、テーブルにUSBメモリを置く。
「SIINAのネットワークに実装させれば、俺で監視できる」
「ありがとう」
私はUSBメモリを受け取った。
「お前の方は? 書き換え、終わったのか?」
頷く。
「あとは……悟之さんが動くのを待つだけか?」
「多分……そう長くは待たないと思う。笠原さんも辞めたし、悟之さんはネットワークに仕込んだウイルスだけで勝負しなきゃならなくなった。時間をかければウイルスが除去される可能性があるから」
「今、こうしている間にも攻撃されているかもしれないってことか?」
通路側に座った圭が、店員からビールを受け取り、自分と大吾の空のグラスを渡す。
「防御策は講じてあるけど、そういうことだ」
大吾は圭からグラスを受け取り、一口飲んだ。
「さて、どうする? QUEEN」
「クイーン?」
圭が聞く。
「そ。ハンドルネーム。伊織がQUEEN、俺がKING、悟之さんがJACK」
「トランプ?」
圭と目が合い、私は頷いた。
「そ。昔、俺たちの役割をそう例えたんだよ」
「なんで、一番年上で講師だった木島がジャック? キングじゃないのか?」
「あの人は、自分はそんな器じゃないって言ったんだよ」
「兵隊はこんなこと仕出かさないだろう?」
「だから、質が悪い」
大吾が私を見て言った。
「王になりたかった兵隊《ジャック》か?」
「今となっては、王になり損ねた兵隊ね」
「なり損ねた?」
「そう。四年前、私のアイデアに頼らなければ、なれたはずなのよ」
大吾が頷く。
「お前と大吾が認めてた男なら、そうなんだろうな」
あの時、間違えなければ――。
そう思うと、胸が痛い。
「圭は……Aceか?」
「エース?」
「そ。切り札。俺と伊織が地上戦なら、お前は空中戦」
「空中戦……ねぇ」と、圭は怪訝な表情。
「対木島に関しては、俺は戦力外だと思うけど?」
「そうでもないぜ? なぁ、伊織」
「んーーー。どっちかって言うと、圭はJokerかな」
「俺にそんな能力はねーぞ?」と、圭は更に眉間に皺を寄せて難しい顔をする。
「私たちと同じ土俵で戦っていたら奥の手の意味がないでしょ?」
「じゃあ、どこで戦うんだよ?」
「強いて言うなら……地中戦?」
「地中!?」と、聞き返したのは大吾。
「裏工作的な?」
「そ」
「あーーー。わかった気がする」
圭が、ため息交じりで言った。
「要するに、俺の敵は木島じゃないんだな?」
「そういうこと」
「は? 何だよ、それ」
「俺の任務は、もう一人の奥の手の攻略ってことだ」
ますますわからないといった顔で、大吾がビールを飲み干した。
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