ダブル・ミッション 【女は秘密の香りで獣になる2

深冬 芽以

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Mission 16*役者

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 誰にも告げずに来た。

 柔らかい雰囲気に包まれた女性が、聞いた。

「コーヒーと紅茶、どちらが好き?」

「あ、いえ。お構いなく」

 そう言っても、女性は私の答えを待っている。

「コーヒーが好きです」と私が答えると、女性は嬉しそうに微笑んだ。

「じゃあ、すぐに持って行きますから、奥の部屋へどうぞ」

「ありがとうございます」

 促された部屋のドアを二回、ノックする。

「どうぞ」

 私はゆっくりとドアノブを押した。

 マンションの五階だというのに、その部屋はレースのカーテンを閉め切っていて、まだ二時なのに薄暗かった。

 正面の窓の下には長テーブルが置かれ、二台のワークステーションと一台のサーバー、三台のディスプレイが並んでいた。

 三台のマシンは電源が入っているが、ディスプレイは全てオフになっていた。

 私の部屋に似ているな、と思った。

「お邪魔します」

「散らかっていますが、どうぞ。古賀伊織さん」

 彼は、女性と同じ微笑みを見せた。



 やっぱり、私を知っていた――。



「アポイントも取らずに、すみません」

「僕には予定なんてありませんよ」

「けど、お忙しいでしょう?」

「そう見えますか?」

「いえ? そうだと知っているんです」

 ほんの数秒の沈黙と、張り詰めた空気。それは、ドアのノックで破られた。

「あら、立ったままでどうしたの? ソファへどうぞ」

 女性がコーヒーを二つ、運んできて言った。

 私は言われた通り、ソファに腰を下ろした。

 女性は床に片膝をつき、慣れた手つきでカップをテーブルに置く。

「お砂糖とミルクはお好みで入れてくださいね」

「ありがとうございます」

 女性は嬉しそうだった。

 来客が珍しいのだと、思った。

「ご用件を伺いましょうか」

 女性が部屋を出ると、彼が言った。

 彼は、私の正面に移動し、カップを手に取った。

「木島悟之からSIINAを守るために、協力してください」

 私は、単刀直入に言った。

「単刀直入ですね」

「遠回しに言う必要はないでしょう?」

「そう……ですね」

「はい」
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