ダブル・ミッション 【女は秘密の香りで獣になる2

深冬 芽以

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Mission 21*作戦

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 翌週末。

 咲さんが蒼さんと仲直りしていて、本当に良かった。

 私と圭は、結婚の報告も兼ねて咲さんと蒼さんの住むマンションを訪れていた。

「まさか、こんな大事な任務ミッションの最中に結婚しちゃうとはな」

 蒼さんが笑った。

「俺たちでさえ、面倒ごとが片付いてからにしたよな?」と、咲さんに目配せをする。

「私たちの時とは、状況が違うじゃない」

 咲さんが、カップが四つのったトレイをテーブルに置いた。圭と私の前に、ペアのカップを置く。蒼さんはトレイから自分のカップを取り、そのまま口に運んだ。

「面倒ごとと一緒に片づけられたら堪んないんで」と、圭が言った。

「伊織ちゃん、悪女なの?」

『伊織ちゃん』と呼ばれて、ドキッとする。

「なんで急に名前呼びなんですか?」と、圭が少しムッとした表情で聞いた。

「だって、二人とも芹沢になったんだろ? 紛らわしいだろ」

 なるほど。

 SIINAでは圭との結婚は報告していないから、実感がなかった。



 そっか、もう『古賀』じゃないんだ……。



 ちょっと照れ臭くて、すごく嬉しくなる。

「幸せそうな顔しちゃって」

 咲さんと目が合い、恥ずかしくなる。

「一緒に暮らしてるの?」

「新居を探すので、まだです」と、圭が答える。

「別の部屋に帰ったりはしませんけど」

 入籍して一週間。

 お互いのベッドは狭く、着替えに帰るのも面倒だからと言っても、全く取り合ってもらえなかった。



 早く新居を探さなきゃ……。



 圭との暮らしは楽しい。その反面、戸惑いもある。

 私はこれまで、まともに誰かと暮らしたことがない。親も含めて。

 歴代の義母はみんなキャリアウーマン。結婚生活よりも仕事を大切にする人たちだった。

 祖父母と暮らしたこともあったけれど、二人は小さな食堂を営んでいて、忙しかった。

 そんな私に、誰かと生活を共にすることなんて出来るのか。

「職場も家も一緒なんて、伊織ちゃんは疲れるだろうね」と、蒼さんが言った。

「粘着質っぽいからな、芹沢」

「人のこと言えるの?」と、咲さんが横目で蒼さんを見る。

 咲さんがケーキの箱を開けた。私と圭が手土産に買って来た。

 どれにする? と聞かれて、圭は私に選ぶように言った。

「疲れるくらい一緒にいないと、慣れてもらえないですから」

「え?」

「一人にすると、結婚したことを忘れられそうなんで」

「意外ね」と、咲さん。

「芹沢くんて、釣った魚に餌をやらないタイプかと思ったけど、実は水槽から出られなくなるほど太らせる溺愛タイプなんだ」

「そうなんだ」と、蒼さん。

 圭は満足そうに笑っている。

 私を大切にしているアピールが見え見え。

「違いますよ。圭が寂しがり屋なだけです」

 私はチーズケーキを選んだ。咲さんはフルーツタルト。

「なんだ。そっちが本音か」

 蒼さんが楽しそうに圭に言う。

「違いますよ!」と、圭がムキになる。

「いいじゃない。T&Nうちに戻ったら二人とも忙しくなるんだし、今のうちに二人の時間を大事にした方がいいわよ」

 咲さんが蒼さんのお皿にガトーショコラを、私は圭のお皿にショートケーキをのせた。

「そうそう。お前んとこの部長がキレかけてるしな」

「部長が?」

「二、三日前も怒鳴り込んできたよ。早くお前を返せって」

「ははは……」

 蒼さんがガトーショコラを一口食べて、お皿を咲さんの方に押した。当然のように、咲さんがお皿を引き寄せた。

 こういう夫婦になりたい、と思った。

 圭はというと、無断で私のチーズケーキにフォークを入れる。

 最近、一緒に食事をしていても、よく私のものを食べたがる。同じものを食べていても。

「で、伊織?」と言って、咲さんがフルーツを口に入れた。

「準備は整ったの?」

「はい」

「聞こうか」

 蒼さんが座り直し、少し前のめりに言った。
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