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番外編*甘いお仕置き
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しおりを挟む「好奇心よ。あなたを変えた女性に会いたかったの。それに、年上の子持ちと言えども未婚の女性を秘書にとお願いするのだから、奥様にも了承をいただこうと思って」
「只野姫を呼んだのは?」
「奥様の為人がわかるかと思って?」
私は話を聞きながら、サラダロールを口に運んだ。さっきから、私だけが食べている。
軽食とはいえ、着物では苦しくなるのが早い。
「ところで、奥様は夫が自分そっちのけで元カノと話し込んでいても、表情を変えないのね? 只野さんの時も思ったけど」
一部始終を見られていたのか。
まぁ、かなり目立っていたろうから……。
私はナプキンで口を拭いた。
「倉木社長は仕事相手、ですよね? それに、只野さんに至っては、何と言うか、誤解したり不機嫌になると皇丞が怒りそうだったので」
「ふふっ。デキた奥様ね。で、どうかしら? 先ほどの、如月りとというのだけれど、ご主人の秘書にしていただけない?」
『りと』とは、少し変わった名前だなと思う。
「私が嫌だといったら、仕事がいただけなくなるんですよね?」
「まさか! 公私は区別します。契約締結時までに多少の変更はあるでしょうけど」
多少って、契約金のゼロがひとつ減るとか?
「正直に申しまして、私は如月さんの為人も優秀さも知りません。如月さんを優秀だと推薦する倉木社長のことも、です。それに、彼女を秘書とするのは夫です。私は夫が良しとするならば反対はしません。ただ、夫の秘書が女性では嫌だとは、思いません」
本心だ。
如月さんを皇丞のそばに置きたくないとか、生理的に好めないなんて、思わない。
倉木社長の話を聞けば、きっとすごく真面目で責任感のある女性なのだろう。
あとは、皇丞が判断することだ。
「素敵な奥様、ね。きっと、あなたが働けなくなったら、本当に養ってくださるのでしょうね」
「そうですね。妻の帰りを家で待つ生活も悪くないかなと思えますよ」
実際のところ、ご飯を作って待っていてくれるのなら、その方がよほどいい。
「本当に、変わったわね」
倉木社長が切なげにそう言った時、ヴヴッとバイブ音が聞こえた。
「俺だ」と皇丞がジャケットのポケットからスマホを取り出す。
ちらりと見えた電話の相手は『母』。
「お義母さま?」
「ああ」
「どうぞ、出て?」
倉木社長に促され、皇丞が立ちあがる。
部屋の隅で壁に向かって立ち、スマホを耳に当てた。
「もしもし? ――ああ、大丈夫」
「梓さんは――」
皇丞に向けていた視線を、社長に移す。
「――皇丞の部下だとか」
「はい」
只野さんにも知られていたけれど、噂にでもなっているのだろうか。
『トーウンの御曹司は部下に手を出した』とでも。
まぁ、事実だから気にしないが。
「私のことは聞いているかしら?」
「はい」
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猫……。
想像してみてもできない。
まぁ、耳を撫でたら気持ち良くて鳴いちゃうのは同じか?
猫が耳を気持ち良いと思うかは知らないが。
「私は愛されたというよりも懐かれたのね。一緒にいても仕事の話ばかりだったし、皇丞は私といることで向上心を刺激されていたのね」
「はぁ……」
家では仕事の話をしたがらない彼からは想像しがたい。
社長はピアスに触れた。
「そういう彼だから、パートナーに相応しいと思ったわ。協力し合えると思った。でも、あっさりフラれたわ」
五年前、私はまだ皇丞とは出会っていない。
彼が営業部から開発部に移った頃のことだろう。
「皇丞と別れて、私は別の男と結婚した。それから、一年ちょっとして……二年、三年くらい前かしら、今日のようにパーティーで顔を合わせたの。雰囲気が随分変わっていて驚いたわ」
その頃なら、広報に来た後だ。
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