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4.秘密の関係
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しおりを挟む「鶴本くんは、どうして私なんかがいいの?」
私を抱く腕に、力がこもる。
「初めは……単純に可愛いなって思って……、七歳年上なのには驚いたけど、ふわふわしててそんな感じに見えなくて、なのに仕事の時はすげぇ真面目で厳しくて、そのギャップがまた良くて……」
自分で聞いたくせに、恥ずかしくなる。
抱き締められていて、顔が見えなくて良かった。きっと、真っ赤で、口元緩んでて、みっともない顔をしている。
「俺の前ではしっかり者の先輩って態度なのに、男の視線とかに過敏に反応して怯えた顔するのとか、たまんなくって。守ってあげたくて……」
これは、本当に恥ずかしすぎる。
「鶴本くん、もういい。わかった!」
「何が?」
「鶴本くんの気持ち……は」
「ホントに?」
「ホントに」
鶴本くんがゆっくりと私を手放し、私は顔を伏せた。
「麻衣さん?」
「なんか……、恥ずかしいから……見ないで……」
手で顔を覆おうとしたら、鶴本くんの手に妨害された。私の指と鶴本くんの指が、交差する。
「麻衣さん、可愛い」
言われ慣れたはずの言葉なのに、今はうまく流せない。
「可愛い」
「恥ずかしすぎるから、やめて」
「どうして? 本当のことだよ」
鶴本くんの唇が、チュッと音を立てて私のおでこに触れる。
「キスしてい?」
頭が、身体が、沸騰しそう。
流されてるだけなんだと、わかっている。
イケメンの後輩に迫られて、調子に乗ってるだけ。
「拒まないなら、しちゃうよ?」
だけど、拒める?
三十過ぎの男運の悪い女が、年下の男に優しくされて、好きだと言われて、一時だけでも夢を見たいと思うのは悪いこと?
「麻衣さん?」
どうせ、すぐに飽きられる。
なら、良くない?
「顔、あげて?」
悪魔の囁きに、私はあっさり降伏した。
恐る恐る顔を上げると、もう唇が触れそうなほど近くに鶴本くんの顔があった。
一瞬、彼と視線が交わり、それから、唇が触れた。
触れるだけの、キス。
カーテンの隙間から差し込む朝陽に照らされて、とても神聖な気持ちになった。
寝起きで髪はボサボサ、顔もテカテカ、下着にTシャツを着ているだけのクセに。
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