続・最後の男

深冬 芽以

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2 嫉妬

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「溝口と隼がり合うはずね」と、課長が大根を噛みながら言った。

「美味しい……」

「なにかあったんですか?」

「なにも」

 嘘だ。何もないのに課長が私のお弁当を食べたがるはずはない。

「課長は料理しないんですか?」

「この爪でこねたハンバーグが美味しいと思う?」と、課長は赤いマニキュアで彩られた爪を私に見せた。

「自分の為に爪を切ってマニキュアを落としてくれたら、嬉しいでしょうね」

『誰が』嬉しいかまでは言わなかった。

 冨田課長はらしくない、キョトンとした表情で私を見た。それから、微笑んだ。

 少し、寂しそうに。

「あなたが羨ましいわ」

「え?」

 今度は私が、キョトンとした表情で課長を見た。

「どんなに見た目を磨いても、料理上手とか心根が優しいとか、母性豊とか、そういう女性には敵わないもの」

 意外だった。

 課長はもっと、自信に満ち溢れていると思っていた。

「堀藤さん、私と溝口のことを疑ってたって?」

「え――?」



 どうしてそれを――。

 

 わかっている。

 智也しかいない。

「誤解しないでね? プライベートで連絡をしたのは、今回が初めてよ」

「……」

「隼に……飲みに付き合ってくれたお礼を……ね?」

 智也と千堂課長が飲みに行ったのは、二週間以上前。

 今更、だ。

 きっと、お礼なんて口実。

「疑っていたって程でもないんです。先輩後輩の距離感には思えなかったけれど、元恋人だったとかまでは……」

 だからと言って身体の関係を疑わなかったわけじゃない。

 智也はこれまで、一人の女性と長く続いたことはないと言っていた。互いに執着しない関係が多かったと。

 智也と課長がそういう関係でもおかしくないと思ったし、むしろお似合いだとも思った。

「溝口の昔の女関係、知ってる?」

「長く続いた人がいない……ってことは聞きました」

「別に派手に遊んでたってわけじゃないのよ? 女と距離を置いていた時期もあったみたいだし、同時進行なんて面倒なこともしてなかったし。けど、女に振り回されることを嫌っていたし、仕事以上に考えられる女はいなかったみたい」

 やっぱり、課長は智也をよく知っているんだな、と思った。

 それが少し寂しくて、それ以上にモヤモヤする。

「だから、溝口が部下の不始末で異動になったと聞いて、驚いたわ。上司としての責任を放棄するような男でもないけど、部下の為に自分の首を懸けるような男でもなかったから」

『恋人ごっこ』を始める以前の智也は、そんな感じだった。

 ミスをした部下を怒鳴り、重要な案件は自分で抱え込む。

「あなたが、変えたのね」

「――そんなこと……」

「溝口、言ってたわよ? 『彩を見てたら、自分がしがみついてたものに価値を感じなくなった』って」



 智也がそんなことを――?



「わかる気がするわ」

「え?」
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