続・最後の男

深冬 芽以

文字の大きさ
14 / 231
2 嫉妬

しおりを挟む
 小会議室で待っていると言われ、私はお茶を淹れてお弁当を持って行った。先に来ていた課長の前には、会社近くのカフェのサンドイッチやサラダ、会社に出入りしているお弁当屋さんのお弁当が二つ、並んでいた。

「他にも誰か来るんですか?」

 とても、課長一人で食べる量じゃない。

「いいえ? あなたの好きなものがわからなかったから」

 やっぱり、課長が何を言いたいのかわからない。

「堀藤さんのお弁当とコレ、交換してくれない?」

「はい?」

「あなたのお弁当、食べてみたいの」

「……はぁ」

 別に、出し惜しみするほどのものじゃない。じゃないけれど、課長が私のお弁当を欲しがる理由がわからず、躊躇した。

「そんなに警戒しないでよ。ただ、あなたのお弁当が食べたいだけ。溝口やはやとが食べたがるお弁当」

「千堂課長は食べたことないと思いますけど」

「そうなの? じゃあ、溝口から聞いて食べたかったのね」と言った冨田課長は、いつもの課長らしくないぎこちない笑みを浮かべた。

 千堂課長と冨田課長に何かあったのかもしれない。

 いつかの噂のこともある。

 そんな気がした。

「サンドイッチとサラダ、いただけますか?」

 私はお弁当が入ったポーチを課長に差し出した。

「ありがとう」

 私は課長の隣に座り、サラダのパックを開けた。イタリアンドレッシングをかける。サンドイッチは、クラブハウスサンドとBLTサンドイッチ。食べ応えがありそうだ。

 お洒落なカフェでこんなサンドイッチを食べてみたいと思っていた。



 私のお弁当なんかより、絶対こっちの方が美味しいのに……。

 

「いただきます」

 私は早速、大口を開けてクラブハウスサンドを頬張った。レタスで挟んだグリルチキンに照り焼きソースとマヨネーズが絡んでいて、濃厚。お隣のエリアの卵とトマトは味付けされていなくて、さっぱり。同時に口に入れると、ちょうど良い味の濃さ。

「おいひー……」

 思わず声が出た。

 真な好きそうだな、と思った。

 亮はマヨネーズがあまり好きではないから、食べないだろう。

 それでも、学校の給食を食べるようになって、大分好き嫌いがなくなってきた。

 私の隣では、冨田課長がザンギを口に運んでいた。

「課長は東京の人だから、唐揚げの方が馴染みがありますよね?」

「そうね。でも、味が染みていて美味しいわ」

「良かった」

 今日は亮がスキー授業で、お弁当を持って行った。だから、私のお弁当もいつもよりちゃんとしている。私一人分なら、前の日の残り物と冷凍食品で完成させてしまうところだけれど、今日はいつもより早起きして味付けしておいたザンギを揚げて、ハム入りの卵焼きとウインナーを焼き、枝豆もさやごとではなく豆をピックに挿して隙間を埋めた。唯一の冷凍食品は、亮の大好きなお〇つちゃん。

 私のお弁当は、お〇つちゃんの代わりに大根の昆布煮と、枝豆の代わりにほうれん草のお浸しが入っていた。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

【ルーズに愛して】指輪を外したら、さようなら

深冬 芽以
恋愛
 インテリアデザイナーの相川千尋《あいかわちひろ》は、よく似た名前の同僚で妻と別居中の有川比呂《ありかわひろ》と不倫関係にある。  ルールは一つ。  二人の関係は、比呂の離婚が成立するまで。  その意味を深く考えずに関係を始めた比呂だったが、今となっては本気で千尋を愛し始めていた。  だが、比呂の気持ちを知っても、頑なにルールを曲げようとしない千尋。  千尋と別れたくない比呂は、もう一つのルールを提案する。  比呂が離婚しない限り、絶対に別れない__。 【ルーズに愛して】シリーズ ~登場人物~  相川千尋《あいかわちひろ》……O大学ルーズサークルOG                 トラスト不動産ホームデザイン部インテリアデザイン課主任                   有川比呂《ありかわひろ》……トラスト不動産ホームデザイン部設計課主任                千尋の同僚                結婚四年、別居一年半の妻がいる  谷龍也《たにたつや》……O大学ルーズサークルOB              |Free Style Production《フリー スタイル プロダクション》営業二課主任  桑畠《くわはた》あきら……O大学ルーズサークルOG               市役所勤務、児童カウンセラー  小笠原陸《おがさわらりく》……O大学ルーズサークルOB                 |Empire HOTEL《エンパイアホテル》支配人    小笠原春奈《おがさわらはるな》……陸の妻                   |Empire HOTEL《エンパイアホテル》のパティシエ  新田大和《にったやまと》……O大学ルーズサークルOB                新田設計事務所副社長                五年前にさなえと結婚  新田《にった》さなえ……O大学ルーズサークルOG  新田大斗《にっただいと》……大和とさなえの息子  亀谷麻衣《かめやまい》……O大学ルーズサークルOG               楠行政書士事務所勤務               婚活中  鶴本駿介《つるもとしゅんすけ》……楠行政書士事務所勤務

年下研修医の極甘蜜愛

虹色すかい
恋愛
医局秘書として市内の病院に勤務する廣崎彩27歳。普段はスマートに仕事をこなすクールな彼女だが、定期的にやって来る「眠れない夜」に苦しんでいる。 そんな彩に、5年越しの思いを寄せる3歳年下の藤崎仁寿。人当たりがよくて優しくて。仔犬のように人懐っこい笑顔がかわいい彼は、柔和な見た目とは裏腹に超ポジティブで鋼のような心を持つ臨床研修医だ。 病気や過去の経験から恋愛に積極的になれないワケありOLとユーモラスで心優しい研修医の、あたたかくてちょっと笑えるラブストーリー。 仁寿の包み込むような優しさが、傷ついた彩の心を癒していく――。 シリアスがシリアスにならないのは、多分、朗らかで元気な藤崎先生のおかげ♡ ***************************** ※他サイトでも同タイトルで公開しています。

なし崩しの夜

春密まつり
恋愛
朝起きると栞は見知らぬベッドの上にいた。 さらに、隣には嫌いな男、悠介が眠っていた。 彼は昨晩、栞と抱き合ったと告げる。 信じられない、嘘だと責める栞に彼は不敵に微笑み、オフィスにも関わらず身体を求めてくる。 つい流されそうになるが、栞は覚悟を決めて彼を試すことにした。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end** ◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です! https://estar.jp/novels/26513389

Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~

汐埼ゆたか
恋愛
絶え間なく溢れ出る涙は彼の唇に吸い取られ 慟哭だけが薄暗い部屋に沈んでいく。    その夜、彼女の絶望と悲しみをすくい取ったのは 仕事上でしか接点のない上司だった。 思っていることを口にするのが苦手 地味で大人しい司書 木ノ下 千紗子 (きのした ちさこ) (24)      × 真面目で優しい千紗子の上司 知的で容姿端麗な課長 雨宮 一彰 (あまみや かずあき) (29) 胸を締め付ける切ない想いを 抱えているのはいったいどちらなのか——— 「叫んでも暴れてもいい、全部受け止めるから」 「君が笑っていられるなら、自分の気持ちなんてどうでもいい」 「その可愛い笑顔が戻るなら、俺は何でも出来そうだよ」 真摯でひたむきな愛が、傷付いた心を癒していく。 ********** ►Attention ※他サイトからの転載(2018/11に書き上げたものです) ※表紙は「かんたん表紙メーカー2」様で作りました。 ※※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

Home, Sweet Home

茜色
恋愛
OL生活7年目の庄野鞠子(しょうのまりこ)は、5つ年上の上司、藤堂達矢(とうどうたつや)に密かにあこがれている。あるアクシデントのせいで自宅マンションに戻れなくなった藤堂のために、鞠子は自分が暮らす一軒家に藤堂を泊まらせ、そのまま期間限定で同居することを提案する。 亡き祖母から受け継いだ古い家での共同生活は、かつて封印したはずの恋心を密かに蘇らせることになり・・・。 ☆ 全19話です。オフィスラブと謳っていますが、オフィスのシーンは少なめです 。「ムーンライトノベルズ」様に投稿済のものを一部改稿しております。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

やさしいキスの見つけ方

神室さち
恋愛
 諸々の事情から、天涯孤独の高校一年生、完璧な優等生である渡辺夏清(わたなべかすみ)は日々の糧を得るために年齢を偽って某所風俗店でバイトをしながら暮らしていた。  そこへ、現れたのは、天敵に近い存在の数学教師にしてクラス担任、井名里礼良(いなりあきら)。  辞めろ辞めないの押し問答の末に、井名里が持ち出した賭けとは?果たして夏清は平穏な日常を取り戻すことができるのか!?  何て言ってても、どこかにある幸せの結末を求めて突っ走ります。  こちらは2001年初出の自サイトに掲載していた小説です。完結済み。サイト閉鎖に伴い移行。若干の加筆修正は入りますがほぼそのままにしようと思っています。20年近く前に書いた作品なのでいろいろ文明の利器が古かったり常識が若干、今と異なったりしています。 20年くらい前の女子高生はこんな感じだったのかー くらいの視点で見ていただければ幸いです。今はこんなの通用しない! と思われる点も多々あるとは思いますが、大筋の変更はしない予定です。 フィクションなので。 多少不愉快な表現等ありますが、ネタバレになる事前の注意は行いません。この表現ついていけない…と思ったらそっとタグを閉じていただけると幸いです。 当時、だいぶ未来の話として書いていた部分がすでに現代なんで…そのあたりはもしかしたら現代に即した感じになるかもしれない。

処理中です...