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9 女の闘い
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怒り狂っていたのは自分なのに、なぜ叱られているのかと腑に落ちないのだろう。
気持ちはわかる。
焚きつけたのは、確かに私。
こんな風に怒鳴られるのは、承知の上。
「冨田部長。私が益井課長に叱責されるようなことをしたのは事実です。意見の相違があったとはいえ、打ち合わせ内容の詳細を報告しなかったのは、間違いでした」
「そうね。それはそれで、問題だわ」
「申し訳ありませんでした」
仕事をしながらも、チラチラと私たちの様子を窺っていた面々が、これで収束かと緊張を解いたのがわかった。
「意見をぶつけ合うのはいいことよ。けれど、納得のいかない状態でお客様により良いサービスは提供できないでしょう。まずは、チームの方向性を明確にすること。納得がいかないことを未消化にしない」
「はい」と、私は答えた。
私だけ、が。
益井課長が返事をしなかったことに、凪子さんの目つきが変わる。
「それから、益井課長。上司だからと言って、頭ごなしに従わせようというやり方は、部下の不満を助長させるだけよ。まして、奥山商事の担当は一課なんだから、あなたはヘルプに徹するべきでしょう?」
「冗談じゃありません! なぜ、課長である私が、経験の浅い部下の尻拭いをしなきゃいけないんですか!? それも、顧客の商品だと知らせもせずに飲ませていい気になっているような――」
「いい加減にしなさい!」
益井課長につられて、凪子さんもヒートアップする。フロア全体の手が止まり、注目を浴びていた。
当事者で、煽ったのは私だけれど、さすがにこれ以上はマズい。
どうにかしなければとチラリと辺りを見ると、千堂課長が机に頬杖をついて見ていた。目が合うと、笑みを浮かべた。
笑ってないで、どうにかしてください――!
私は目で必死の訴えを送り、千堂課長は気づいていながらも笑っているばかりで動こうとしない。
なんなの――!!
「部下の尻拭いをするのが上司の役目でしょう! 偉そうにふんぞり返っているだけなら、小学生でも出来るのよ!! そんなこともわからないなんて――」
凪子さん、それ以上は――!!
「冨田部長」
ようやく腰を上げた千堂課長は、受話器を置きながら立ち上がった。
「小会議室、空いているそうです」
ほんの一瞬だけ、千堂課長と凪子さんが目配せし合い、意思疎通した。
「ありがとう、千堂課長」
凪子さんがそう言うと、千堂課長が机を離れ、私の横に並んだ。
「堀藤さんの上司として同席させてもらっていいですか」
「そうね」と言い、凪子さんは冨田課長と向き合った。
「場所を変えて話しましょう」
「必要ありません」
益井課長はキッと凪子さんを見上げ、ハッキリと言った。
「部長の仰りたいことはわかりました。確かに、私も慣れない環境で堀藤さんの言動に過剰反応したようです。申し訳ありませんでした」
まるで申し訳ないと思っていない、目つきと口調。
「堀藤さんも私への言動を謝罪してくれましたし、二人で話し合います。いいわよね、堀藤さん?」
和解の提案、というよりも、堂々たる宣戦布告。そして、勝利宣言。
私にNOと言わせぬ挑発的な態度に、私の闘争心が掻き立てられる。
「はい」
私は答えた。
気持ちはわかる。
焚きつけたのは、確かに私。
こんな風に怒鳴られるのは、承知の上。
「冨田部長。私が益井課長に叱責されるようなことをしたのは事実です。意見の相違があったとはいえ、打ち合わせ内容の詳細を報告しなかったのは、間違いでした」
「そうね。それはそれで、問題だわ」
「申し訳ありませんでした」
仕事をしながらも、チラチラと私たちの様子を窺っていた面々が、これで収束かと緊張を解いたのがわかった。
「意見をぶつけ合うのはいいことよ。けれど、納得のいかない状態でお客様により良いサービスは提供できないでしょう。まずは、チームの方向性を明確にすること。納得がいかないことを未消化にしない」
「はい」と、私は答えた。
私だけ、が。
益井課長が返事をしなかったことに、凪子さんの目つきが変わる。
「それから、益井課長。上司だからと言って、頭ごなしに従わせようというやり方は、部下の不満を助長させるだけよ。まして、奥山商事の担当は一課なんだから、あなたはヘルプに徹するべきでしょう?」
「冗談じゃありません! なぜ、課長である私が、経験の浅い部下の尻拭いをしなきゃいけないんですか!? それも、顧客の商品だと知らせもせずに飲ませていい気になっているような――」
「いい加減にしなさい!」
益井課長につられて、凪子さんもヒートアップする。フロア全体の手が止まり、注目を浴びていた。
当事者で、煽ったのは私だけれど、さすがにこれ以上はマズい。
どうにかしなければとチラリと辺りを見ると、千堂課長が机に頬杖をついて見ていた。目が合うと、笑みを浮かべた。
笑ってないで、どうにかしてください――!
私は目で必死の訴えを送り、千堂課長は気づいていながらも笑っているばかりで動こうとしない。
なんなの――!!
「部下の尻拭いをするのが上司の役目でしょう! 偉そうにふんぞり返っているだけなら、小学生でも出来るのよ!! そんなこともわからないなんて――」
凪子さん、それ以上は――!!
「冨田部長」
ようやく腰を上げた千堂課長は、受話器を置きながら立ち上がった。
「小会議室、空いているそうです」
ほんの一瞬だけ、千堂課長と凪子さんが目配せし合い、意思疎通した。
「ありがとう、千堂課長」
凪子さんがそう言うと、千堂課長が机を離れ、私の横に並んだ。
「堀藤さんの上司として同席させてもらっていいですか」
「そうね」と言い、凪子さんは冨田課長と向き合った。
「場所を変えて話しましょう」
「必要ありません」
益井課長はキッと凪子さんを見上げ、ハッキリと言った。
「部長の仰りたいことはわかりました。確かに、私も慣れない環境で堀藤さんの言動に過剰反応したようです。申し訳ありませんでした」
まるで申し訳ないと思っていない、目つきと口調。
「堀藤さんも私への言動を謝罪してくれましたし、二人で話し合います。いいわよね、堀藤さん?」
和解の提案、というよりも、堂々たる宣戦布告。そして、勝利宣言。
私にNOと言わせぬ挑発的な態度に、私の闘争心が掻き立てられる。
「はい」
私は答えた。
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