続・最後の男

深冬 芽以

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9 女の闘い

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「チーズオ〇レット、食べてみたい」

『はっ?』

「ショコ〇フォンデュも」

『何だよ、それ。食えばいいだろ』

 電話が繋がるなり、私の食べたいものを聞かされた智也は、ぶっきら棒に言った。

「札幌に売ってないんだもん」

『どこに売ってんだよ』

「函館」

『函館? なんで――』

 私がどうして函館で人気のスイーツを口にしたのか、気が付いたようだ。

「でも、賞味期限短そうだし……ねぇ」

 智也に当たるのは間違いだ。けれど、いつ決まった出張かは知らないけれど、智也より先に益井課長から聞かされて、私は不機嫌だった。そして、珍しくその不機嫌さを隠さなかった。

 いや、珍しくもない。

 最近、こうして大人気ない一面を、隠しきれていない。

『買って、送ってやろうか』

 心なしか、申し訳なさそうな声。

「……いいよ。そこまでしなくても」

『誰に聞いた?』

「誰かさんの元カノ」

『はぁぁぁー……』

 深いため息。

『一応、言っとくけど! 黙ってたわけじゃねーぞ? そもそも、俺が函館に行くことになったの、今朝決まったんだから』

「別に、智也が私に黙って元カノと仲良く出張だなんて思ってないから」

『当たり前だ!』

 ピシャリ、と言われて、しまった、と思った。

 智也が益井課長元カノとの出張を喜んでいるわけはない。

「――ごめん」

『いや』

「益井課長、私と智也のこと聞いたみたい」

『そうか……』

 何となく、智也が謝ってくるような気がした。智也は何も悪くないのに。

「智也」

『ん?』

「泊って来るの?」

『いいや』

「そっか。気を付けて行って来てね」

『ああ』

 最後に智也に会ったのは、彼の誕生日。

 どこの企業も、三月・四月は忙しいもので、次に会えるのはゴールデンウィークの予定。

 昨年もそうだった。

 けれど、昨年は真の小学校卒業と中学校入学で忙しくしていて、寂しいと思う暇もなかった。

 ゴールデンウィークに会った私があんまりあっさりしているので、智也がいじけたくらいだ。しばらく『お前は二・三か月会えないくらい、平気みたいだけど?』と根にもたれた。

 そもそも、私はそういう女なのだ。

 一人でいることが好きで、元夫が単身赴任中も、私から電話をしたことがあったかも怪しいくらい。

 その私が、遠距離恋愛一年半で何度思ったことか。

 会いたい、触れたい、と。



 あと三週間……。



 いっそ、会いに行ってしまおうか。
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