続・最後の男

深冬 芽以

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9 女の闘い

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 今週末、子供たちは父親の元へ行く。仕事で一か月半ほど札幌にいるから、その間は時間の許す限り子供たちに会いたい、と連絡があった。とはいえ、真は塾、亮は野球が忙しくて、そう時間もない。

 塾はお金がかかるからと行くのを渋っていた真も、中学校に入ると部活か塾で忙しい友人たちに感化され、塾に行きたいと言った。私には言わないけれど、千堂課長には家から近い高校に入りたいと漏らしていたらしい。そして、そこは札幌でトップクラスの東西南北校と肩を並べる。

 離婚した直後、『真がこの高校に通ってくれたら嬉しいなぁ』と話したことを思い出した。家から近いから交通費がかからないし、あなたなんかいなくても立派に子供を育てたと元夫を見返したい気持ちで言ったこと。

 もし、そんな私の後ろ暗い気持ちで発した言葉に真が囚われてしまっているのなら申し訳ないけれど、理由はどうあれ勉強することはいいことだし、志望校を決めるまでにはまだ一年以上ある。



 一年……か。



 一年後、私はどうしているのだろう。

 そんなことを考えているとやっぱり智也に会いたくなって、電話した。

 金曜の二十時。

 日帰りならば、既に家に帰っているか、会社にいるか。

『もしもし?』

 電話に出たのは、女。私は間違えたかと、発信先の名前を確認した。

 間違えていない。

『堀藤さん?』

 まさかと思ったけれど、益井課長だった。

『智也、今、シャワーを浴びてるの。出たら掛け直すように伝えるわね』

 得意気な声。

 智也がシャワーを浴びているのが事実ならば、ホテルだろうか。

 いや、事実なわけがない。

「人の電話に勝手に出るなんて、非常識じゃありませんか」

 何か言わなくては無理に口を開いて出た言葉が、これだった。

『ごめんなさい? 昔のクセで、つい』

 クスクスと笑う声。

『とにかく、智也には伝えるわ? 時間があったら、掛け直すんじゃないかしら』

 そう言って、一方的に切られた。

 驚き、怒り、疑問、悲しみ。

 どれも入り混じると、色濃くなるのは、やはり、怒り。



 事情がどうであれ、他の女に電話を取らせるような隙がある智也が悪い!



 十五分後、電話がかかってきた。が、私は無視した。それから三度の着信と、二件のメッセージも。

『電話、くれたろ?』

『もう、寝たか?』

 智也がこうして連絡してくるということは、後ろめたいことがないということだろう。

 そう思って、こちらから電話をかけようとした時、更にメッセージを受信した。

『仕事が長引いて、一泊することになった。明日、帰ったら電話する。おやすみ』



 元カノとの外泊を、堂々と報告してくるとは――!



 怒るか、泣くか。

 私は、怒った。

『次に会ったら、ぶった切ってやる』

 絵文字もないこの文章に、すぐに智也から着信があったが、無視するのではなく、着信拒否にした。

 自分で自分の怒りに、驚いた。
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