続・最後の男

深冬 芽以

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10 全力で謝罪

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 くそっ――!



 俺は汗ばむ指先で画面をタップし、函館空港のサイトを開いた。

 札幌への便は、十八時台が最終だった。明日の朝一の便は八時台。札幌到着は九時半頃。

 俺は新しいタブでJRのサイトを開く。

 今日の札幌行きは十九時台が最終。明日の朝一は六時台で、到着は九時半過ぎ。

 俺は函館から釧路への便を、朝一の札幌行きへと変更した。

 それから、もう一度彩に電話をかける。

 さっきは六回目の呼出し音の後で『只今電話に出ることが出来ません』と、お決まりの文句が流れた。けれど、今度は、それすら流してもらえなかった。代わりの言葉は、『おかけになった電話番号は、現在使われていないか――』。

 まさかの着拒。



 嘘だろ……。



 凍りつく、とか、縮み上がる、という言葉は知っているが、体験したのは初めて。

 ほろ酔いで身体は火照り、下半身も程よくリラックスしていた俺は、彩が電話に出ないのは帰宅途中か風呂にでも入っているからだと思った。

 素面ならすぐに気づいたと思う。けれど、俺はイイ感じに酔っていた。

 何度か電話をかけ、メッセージを送り、諦めてシャワーを浴びようとして、酔いが醒めた。

『次に会ったら、ぶった切ってやる』

 醒めたなんてもんじゃない。

 氷風呂に入ったように、身体の芯から冷えた。入ったことはないけれど、きっと、本当に氷風呂なんかに入ったら、寒いとか冷たいとかも感じられないほど、痛いだろう。

 まさに、そんな感じ。

 俺は身震いして、彩の番号に発信する。が、出ない。

「ぶった切るって――」

 声に出すと同時に、下半身がギュッと縮み上がった。

 男はみんな同じだろうが、下半身は健康状態や感情を素直に表現する。体調が悪い時は締まりがなく、ふにゃふにゃ。緊張したり気を引き締めると、キュッと引き締まる。

 そして、今、俺の下半身は、あまりの恐怖に、これまでにないほど身を縮め、息を潜めた。

 それから、ようやく気が付いた。

『いつもと違う着信音に驚いて、落としちゃった』

 取り違えたスマホを届けに来た環――益井は、そう言った。が、考えてみれば、彩の言葉を知らせたのは、振動バイブ



 まさか――!?




 発着信履歴の一番上に表示されている彩の名前の右横にある〈i〉をタップする。

 今日の日付と、いくつかの時刻が表示された。その、一番下。

『20:03 着信 23秒』

 今日、俺は彩と会話していない。



 くそっっっ――!!



 益井だ。あいつが彩からの電話に出た。

 日帰りだと言った出張先で、女が電話に出たら、そりゃ疑う。

 俺だって、疑う。そして、怒る。



 くそっ! くそっっ!!



 益井の部屋に怒鳴り込んでやろうかと、部屋のドアノブに手をかけた時、廊下を歩くカップルの話し声が聞こえた。

 動揺はしていたが、怒鳴り込むのをやめられるくらいには正気を保っていた。

 どんな理由があっても、ホテルの女の部屋に足を踏み入れるのは、更なる誤解を生むだけだ。

 俺は乱暴にスーツを脱ぎ捨てると、熱いシャワーを浴びた。冷え切った身体を温め、正常な思考を取り戻すべく。
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