続・最後の男

深冬 芽以

文字の大きさ
87 / 231
10 全力で謝罪

しおりを挟む
『堀藤さんて、結構口が軽いのね。私に言われたこと、もう言いつけたんだ』

 さすがに、カチンときた。

『もう少し彩の口が軽かったら、俺は大助かりだよ。今回は言ってもらえたけど、一歩違えばバッサリ見捨てられるところだった』

 色んな意味で。

 フフッ、と息を吐く程度の声が聞こえて見上げると、彩が笑っていた。多分、俺の言わんとすることがわかったのだろう。

 俺は彼女の腕を引き寄せ、腰を抱いていた腕を首に回した。彩は腰をかがめる格好になり、俺は有無を言わさずキスをした。

『見捨てられる? 智也が?』

「ああ」

 唇が僅かに触れたまま、答える。

 彩は腰を引いて逃れようとするが、許さなかった。

 再び、しっかりと唇を重ねる。

『――彼女のどこがいいの?』

「お前には関係ない」

 ゾクゾクした。

 元カノに冷たく言い放つ唇は、彩に触れて熱く熱を帯びる。

『部下を庇って地方に異動になるなんてらしくないことをしたのは、彼女のせい?』

「お前には関係ない」と、繰り返す。

 舌を入れようと唇を開くと、さすがにマズいと彩が力いっぱい俺を突き放した。

『彼女のどこがそんなに――』

「――とにかく! 俺と彩のことはお前には関係ないし、お前と彩の仕事にも関係ないことだ! 二度とふざけた真似をするな!!」

 俺は受話器のマークをタップして通話を終え、ガタンッと勢いよく立ち上がった。

「電話中に、何考えてんの?」と言って、彩が唇を拭った。

 大した意味はないのかもしれないが、ムカついた。

 今度は逃げられないように、彩の背を壁に押し付け、強く抱き締めてキスをした。

 彩が抵抗するのを諦めるのに、そう時間はかからなかった。

 服の上から彼女の身体を弄り、ソノ気になったところで、インターホンが鳴った。

 伝えられた時間より早いピザの到着に、俺は軽く舌打ちをして玄関に向かった。

 残念がる俺とは対照的に、彩は嬉しそうにピザを受け取る。

 いつも、こうだ。

 色気より食い気、というか、彩にとっての俺の優先順位が低すぎる気がする。

「智也、包丁の置き場所変えた?」

 金を払ってリビングに戻ると、聞かれた。

「包丁? 俺は――」


『変えてない』と続けようとして、思い出した。

 どうする。

「なんか……、切るもんあったか?」

「ピザ、四枚にしか切れてなくて。忙しくて、切り忘れたのかな」



 よりによって、こんな時に!



 嘘だろ、と思いながらダイニングテーブルの上に置かれたピザを凝視する。確かに、二枚とも十字にしかカットされていない。

 彩が注文したのは、チーズのみのと、サラミとトマトのと、照り焼きのと、シーフードの。それぞれハーフ&ハーフでLサイズが二枚。

 Lサイズのピザを四つ切のまま食べるのは、さすがにナイ。

 俺は観念して、食器棚の一番上、一番奥に隠した包丁を取り出した。

「なんで、そんなところに?」

『ぶった切られないように』なんて言えるはずがない。

 俺は何も言わずに包丁を彩に渡し、冷蔵庫を覗いた。コーラを二本、取り出す。

しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

【ルーズに愛して】指輪を外したら、さようなら

深冬 芽以
恋愛
 インテリアデザイナーの相川千尋《あいかわちひろ》は、よく似た名前の同僚で妻と別居中の有川比呂《ありかわひろ》と不倫関係にある。  ルールは一つ。  二人の関係は、比呂の離婚が成立するまで。  その意味を深く考えずに関係を始めた比呂だったが、今となっては本気で千尋を愛し始めていた。  だが、比呂の気持ちを知っても、頑なにルールを曲げようとしない千尋。  千尋と別れたくない比呂は、もう一つのルールを提案する。  比呂が離婚しない限り、絶対に別れない__。 【ルーズに愛して】シリーズ ~登場人物~  相川千尋《あいかわちひろ》……O大学ルーズサークルOG                 トラスト不動産ホームデザイン部インテリアデザイン課主任                   有川比呂《ありかわひろ》……トラスト不動産ホームデザイン部設計課主任                千尋の同僚                結婚四年、別居一年半の妻がいる  谷龍也《たにたつや》……O大学ルーズサークルOB              |Free Style Production《フリー スタイル プロダクション》営業二課主任  桑畠《くわはた》あきら……O大学ルーズサークルOG               市役所勤務、児童カウンセラー  小笠原陸《おがさわらりく》……O大学ルーズサークルOB                 |Empire HOTEL《エンパイアホテル》支配人    小笠原春奈《おがさわらはるな》……陸の妻                   |Empire HOTEL《エンパイアホテル》のパティシエ  新田大和《にったやまと》……O大学ルーズサークルOB                新田設計事務所副社長                五年前にさなえと結婚  新田《にった》さなえ……O大学ルーズサークルOG  新田大斗《にっただいと》……大和とさなえの息子  亀谷麻衣《かめやまい》……O大学ルーズサークルOG               楠行政書士事務所勤務               婚活中  鶴本駿介《つるもとしゅんすけ》……楠行政書士事務所勤務

やさしいキスの見つけ方

神室さち
恋愛
 諸々の事情から、天涯孤独の高校一年生、完璧な優等生である渡辺夏清(わたなべかすみ)は日々の糧を得るために年齢を偽って某所風俗店でバイトをしながら暮らしていた。  そこへ、現れたのは、天敵に近い存在の数学教師にしてクラス担任、井名里礼良(いなりあきら)。  辞めろ辞めないの押し問答の末に、井名里が持ち出した賭けとは?果たして夏清は平穏な日常を取り戻すことができるのか!?  何て言ってても、どこかにある幸せの結末を求めて突っ走ります。  こちらは2001年初出の自サイトに掲載していた小説です。完結済み。サイト閉鎖に伴い移行。若干の加筆修正は入りますがほぼそのままにしようと思っています。20年近く前に書いた作品なのでいろいろ文明の利器が古かったり常識が若干、今と異なったりしています。 20年くらい前の女子高生はこんな感じだったのかー くらいの視点で見ていただければ幸いです。今はこんなの通用しない! と思われる点も多々あるとは思いますが、大筋の変更はしない予定です。 フィクションなので。 多少不愉快な表現等ありますが、ネタバレになる事前の注意は行いません。この表現ついていけない…と思ったらそっとタグを閉じていただけると幸いです。 当時、だいぶ未来の話として書いていた部分がすでに現代なんで…そのあたりはもしかしたら現代に即した感じになるかもしれない。

ドSでキュートな後輩においしくいただかれちゃいました!?

春音優月
恋愛
いつも失敗ばかりの美優は、少し前まで同じ部署だった四つ年下のドSな後輩のことが苦手だった。いつも辛辣なことばかり言われるし、なんだか完璧過ぎて隙がないし、後輩なのに美優よりも早く出世しそうだったから。 しかし、そんなドSな後輩が美優の仕事を手伝うために自宅にくることになり、さらにはずっと好きだったと告白されて———。 美優は彼のことを恋愛対象として見たことは一度もなかったはずなのに、意外とキュートな一面のある後輩になんだか絆されてしまって……? 2021.08.13

楽園 ~きみのいる場所~

深冬 芽以
恋愛
 事故で手足が不自由になった悠久《はるか》は、離婚して行き場を失くしていた義姉の楽《らく》を世話係として雇う。  派手で我儘な女王様タイプの妻・萌花《もか》とは正反対の地味で真面目で家庭的な楽は、悠久に高校時代の淡い恋を思い出させた。 「あなたの指、綺麗……」  忘れられずにいた昔の恋人と同じ言葉に、悠久は諦めていたリハビリに挑戦する。  一つ屋根の下で暮らすうちに惹かれ合う悠久と楽。  けれど、悠久には妻がいて、楽は義姉。 「二人で、遠くに行こうか……。きみが一緒なら、地獄でさえも楽園だから――」  二人の行く先に待っているのは、地獄か楽園か……。

年下研修医の極甘蜜愛

虹色すかい
恋愛
医局秘書として市内の病院に勤務する廣崎彩27歳。普段はスマートに仕事をこなすクールな彼女だが、定期的にやって来る「眠れない夜」に苦しんでいる。 そんな彩に、5年越しの思いを寄せる3歳年下の藤崎仁寿。人当たりがよくて優しくて。仔犬のように人懐っこい笑顔がかわいい彼は、柔和な見た目とは裏腹に超ポジティブで鋼のような心を持つ臨床研修医だ。 病気や過去の経験から恋愛に積極的になれないワケありOLとユーモラスで心優しい研修医の、あたたかくてちょっと笑えるラブストーリー。 仁寿の包み込むような優しさが、傷ついた彩の心を癒していく――。 シリアスがシリアスにならないのは、多分、朗らかで元気な藤崎先生のおかげ♡ ***************************** ※他サイトでも同タイトルで公開しています。

なし崩しの夜

春密まつり
恋愛
朝起きると栞は見知らぬベッドの上にいた。 さらに、隣には嫌いな男、悠介が眠っていた。 彼は昨晩、栞と抱き合ったと告げる。 信じられない、嘘だと責める栞に彼は不敵に微笑み、オフィスにも関わらず身体を求めてくる。 つい流されそうになるが、栞は覚悟を決めて彼を試すことにした。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end** ◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です! https://estar.jp/novels/26513389

Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~

汐埼ゆたか
恋愛
絶え間なく溢れ出る涙は彼の唇に吸い取られ 慟哭だけが薄暗い部屋に沈んでいく。    その夜、彼女の絶望と悲しみをすくい取ったのは 仕事上でしか接点のない上司だった。 思っていることを口にするのが苦手 地味で大人しい司書 木ノ下 千紗子 (きのした ちさこ) (24)      × 真面目で優しい千紗子の上司 知的で容姿端麗な課長 雨宮 一彰 (あまみや かずあき) (29) 胸を締め付ける切ない想いを 抱えているのはいったいどちらなのか——— 「叫んでも暴れてもいい、全部受け止めるから」 「君が笑っていられるなら、自分の気持ちなんてどうでもいい」 「その可愛い笑顔が戻るなら、俺は何でも出来そうだよ」 真摯でひたむきな愛が、傷付いた心を癒していく。 ********** ►Attention ※他サイトからの転載(2018/11に書き上げたものです) ※表紙は「かんたん表紙メーカー2」様で作りました。 ※※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

処理中です...