続・最後の男

深冬 芽以

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10 全力で謝罪

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 情けないことに、俺は彩に許された安心感から、眠ってしまった。

 目が覚めると、彩の膝ではなくてソファに突っ伏していた。肩には彩のコート。

 ハッとして彩の姿を探す。

「起きた?」

 寝室のドアが開いていて、彩が顔を覗かせた。

「悪り……」

「疲れてるんでしょう? シャワー浴びて、ちゃんとベッドで横になったら? シーツ、掛けていたから」

「何時だ?」

「もうすぐ十二時」

 眠っていたのは一時間ほど。

 腹が減った。

 朝は、飯どころじゃなかった。

「お昼、何食べる? シャワー入ってる間に買って来るから」

「いや、なんか頼もう」

「え? いいよ。私――」

「いいから。今日は予定になかったんだし、お前は何もしなくていいから」

 肝心のところで眠ってしまった自分への苛立ちで、言葉の選択を間違えた気がした。が、彩はにっこりと微笑んで、スマホを手に取った。

「そ? じゃ、ピザ!」

 注文は彩に任せて、俺は熱いシャワーを浴びた。ようやく、一息つく。

 昼時でピザが届くまで一時間ほどかかると聞き、俺は出張の報告書を作るために、寝室の机でノートパソコンを開いた。起動するのを待っていると、ドアがノックされた。

「スマホ、鳴ってる」

 彩がスマホを持って入って来る。仕事用の方。それを見て、ハッとした。

 スマホを手渡され、画面を見て再びハッとして、背を向けた彩の腕を掴んだ。

「智也?」

 俺はスマホを机に置き、〈応答〉をタップした。スピーカーのマークも。

「はい」

『智也?』

「ああ」

 益井からだった。

 俺の手を振りほどこうとする彩の腰を抱き寄せた。

「なに」

『帰るの早くない? 釧路行きの便、そんな早くなかったでしょ。一緒に朝ご飯でもって――』

「釧路には帰らなかったからな」

『え?』

「朝一の札幌行きに変更したから」

 彩が気まずそうに俺から視線を逸らす。

 恋人と、恋人の元カノとの会話なんて、聞きたいはずがない。けれど、気にならないはずもない。

 電話の相手を知った上で、わざわざ電話を持ってくるんだから、仕事だから仕方がないと割り切ってのことだろう。それでも、これ以上彩を怒らせるのも、不安にさせるのも嫌だった。

『札幌にいるの? なら、一緒に――』

「昨日のスマホ、わざとだろ」

『えっ――?』

「飲みに行った店で出したから、その時に取り違えたのかと思ったけど、違うよな。俺がテーブルに置いたのは仕事用だったから」

 全く、年は取りたくない。

 年々、酒に弱くなる。

 こんなことにも気づけないほど、飲んだつもりじゃなかったが、思ったよりも酔っていたらしい。

 会社から支給されるスマホは、全て白。だから、プライベート用は白以外を持つ人が多い。俺は、黒。益井もそうだった。別に驚くような偶然じゃない。彩だって黒だ。ケースに入れているからわからないだけ。

 とにかく、俺は、昨日は仕事用のスマホしか使っていない。ただ、店で脱いだジャケットにはスマホを入れっ放しにしていたし、そのジャケットを置いたままトイレに立ったりもした。そして、店を出る時にジャケットを俺に手渡したのは、益井だった。

「彩に、俺がシャワー浴びてるなんて嘘までついて、何がしたいんだよ」
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