続・最後の男

深冬 芽以

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11 彼女の本音

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 無意識に口が開き、欠伸が出た。

 先週末は、土曜は出勤、日曜は家で仕事をしていた。もともと、今週末は心行くまで眠る予定だった。

「彩も一緒に昼寝しようぜ」

「え?」

「お前は、俺が益井と泊りだって聞いて、眠れたのか?」

 言ってから、ヤベ、と思った。余計なことを蒸し返してしまった。

 実際、彩は少しだけ口を尖らせた。

「イビキがうるさくて眠れなくても、知らないから」

 拒否られるよりずっとマシだ、と思った。

 俺と彩の数少ない共通点の一つが、食後の歯磨き。

 俺は、営業という仕事柄、会社でも食後には歯を磨く。それが、休みの日でも習慣になった。

 彩の理由は知らないが、やっぱり会社でも歯を磨いているらしい。出来ない時は、タブレットを舐めたりしているようだ。同様に、俺の家にいても歯を磨く。

 俺はそこまで気にしないが、彩は食後に歯磨きなしでキスをするのも嫌がる。不意打ちで軽く、ならそうでもないが、舌でも入れようものなら全力で拒絶される。

 まぁ、その場の雰囲気で押し切る時もあるのだが。

 とにかく、俺たちは昼寝の前に歯磨きをした。

 二人で洗面所に並んで歯を磨いていると、なんだか笑えた。

 そして、思った。

「俺、さっきみたいに、並んで歯を磨いたことなんてなかったな」

「え?」

「益井と」

 彩は置いてあった部屋着に着替え、しっかりと寝る準備をした。昼寝というのは口実で、セックスの誘いかもなんて微塵も考えていないだろう。

 それに気付かずに手を出したら、『誰かさんのせいで眠れなかったから』とか言われて背を向けられるのが、容易に想像できる。

 まぁ、実際、俺も眠い。

 俺たちはベッドに入り、ぴったりと寄せた枕にそれぞれの頭を沈めた。

 こうして、彩が隣にいると、落ち着く。

 益井には持てなかった、感情。

 俺は、何の気なしに口を開いた。

「仕事に対する姿勢スタンスが似ていたから、気が合ったんだよ」

「え?」

「俺と益井」

「……」

 俺が話すと思わなかったのか、彩は気まずそうに目を伏せた。

「聞きたいんじゃないのか?」

「話すの、嫌じゃなければ」

「女に裏切られた話なんて、みっともなくて言いたくなかっただけだ。ま、十年も前のことだから、大して覚えてないのが本当のところだけどな」

 彩が益井と仕事をする以上、俺の益井に対する感情はハッキリさせておくべきだ。もちろん、何の感情もないが、それを彩に理解させなければ、益井につけ込まれかねない。

「仕事第一。人間は裏切るが、仕事とそれに付随する金は裏切らない。自分を認めさせるには、それに見合う仕事をすればいい。多少強引な手を使っても」

 自分で言って、最低だな、と思った。

 だが、十年前の俺は、確かにそう考えていた。
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