続・最後の男

深冬 芽以

文字の大きさ
98 / 231
12 家族とは

しおりを挟む


 当然のことながら、ゴールデンウィークは学校も休みで、彩と二人きりの時間は持てなかった。連休中、亮の野球の試合や真の塾、彩の妹家族が帰省したりして、合間を縫って会えたのは連休二日目の一日だけだった。

 以前、彩が三人では遊園地に行けない、と話していたのを思い出して、遊園地に行く計画だった。が、生憎の雨予報。予報はあくまでも予報だと、俺はとにかく彩たちを迎えに出た。が、札幌市内を出る前にザーッと雨が降り出した。

「どうする?」

 高速の手前のメガ〇ンキの駐車場に車を停めた。

「雨だから、中止でしょ」

 真は遊園地に乗り気ではなかったようで、即決した。

「えー……。途中で止むかもしれないしょー」

 亮は楽しみにしていたから、納得できない。

「けど、予報では一日中雨だよ?」と、彩がスマホを片手に言った。

 なんとも間の悪い雨だ。

 俺が子供たちに会うのは正月休み以来。

 一緒に飯を食って、マンションで真心と勇気も一緒に過ごした。

 割と最初からだが、真は俺を快く思っていないようだった。年齢的に、俺と彩の関係は理解しているだろうし、本人も思春期だから仕方がないとは思うが、もう少し距離を縮めたい。

 せめて、『溝口さん』から『智くん』に昇格したかった。

 逆に、亮はなんの躊躇いもなく懐いてくれた。いつも笑顔で、学校の話や野球の話をしてくれる。俺の時代とは色々違っていて驚かされることも多く、新鮮だった。

 そういうわけで、俺は主に真との交流を深めるために、遊園地を提案したのだった。

 フロントガラスに打ちつける雨足は激しくなる一方で、行くだけ無駄だと思った。

「よし! 買い物して帰るか」

 俺は駐車場の隅から地下駐車場に車を移動させた。

「遊園地に行けなかった分、好きなもん買っていーぞ」

 カートを押していた彩が、今にもお菓子売り場に飛んで行きそうな亮の腕を掴むと、真が代わりにカートを持った。これが、母子三人の日常なのだろう。微笑ましいけれど、自分の立ち位置に困る。

 彩は亮に、勝手に歩かないように言い聞かせる。二年生だった頃と変わっていないやり取り。

 代わって、真は初対面の頃よりも大人びた。まだ中学二年生だというのに、既に亮の保護者のよう。

 彩も言っていた。『急いで大人にさせちゃったのは私なんだけど、もう少し子供らしく我儘とか言ってくれてもいいのに』と。

「よし!」と、俺はカートの先を引っ張った。

「彩と亮はお菓子選んで来い。俺と真で飯見てくるから」

「うん!」

 亮は嬉しそうに返事をした。

「智くんは何のお菓子食べる?」

「んーーー、しょっぱいのだな。後は亮に任せる」

「わかった!」

 心配そうに俺と真を見ていた彩に、大丈夫だからと軽く頷いて見せた。

「俺、ナッツ」

 真にそう言われて、彩は渋々お菓子売り場に足を向けた。

「さて、何食う?」

「寿司と肉」

 真がぶっきら棒に即答した。

 彩が聞いたら、どっちかにしろと言うだろう。

「おし! 好きなの選べ」

 真がカートを押し、俺は目についた美味そうなものを手に取って見る。明日以降、一人で過ごすための食材も買ってしまおうと、菓子パンやらカップ麺もカゴに放り込んだ。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

【ルーズに愛して】指輪を外したら、さようなら

深冬 芽以
恋愛
 インテリアデザイナーの相川千尋《あいかわちひろ》は、よく似た名前の同僚で妻と別居中の有川比呂《ありかわひろ》と不倫関係にある。  ルールは一つ。  二人の関係は、比呂の離婚が成立するまで。  その意味を深く考えずに関係を始めた比呂だったが、今となっては本気で千尋を愛し始めていた。  だが、比呂の気持ちを知っても、頑なにルールを曲げようとしない千尋。  千尋と別れたくない比呂は、もう一つのルールを提案する。  比呂が離婚しない限り、絶対に別れない__。 【ルーズに愛して】シリーズ ~登場人物~  相川千尋《あいかわちひろ》……O大学ルーズサークルOG                 トラスト不動産ホームデザイン部インテリアデザイン課主任                   有川比呂《ありかわひろ》……トラスト不動産ホームデザイン部設計課主任                千尋の同僚                結婚四年、別居一年半の妻がいる  谷龍也《たにたつや》……O大学ルーズサークルOB              |Free Style Production《フリー スタイル プロダクション》営業二課主任  桑畠《くわはた》あきら……O大学ルーズサークルOG               市役所勤務、児童カウンセラー  小笠原陸《おがさわらりく》……O大学ルーズサークルOB                 |Empire HOTEL《エンパイアホテル》支配人    小笠原春奈《おがさわらはるな》……陸の妻                   |Empire HOTEL《エンパイアホテル》のパティシエ  新田大和《にったやまと》……O大学ルーズサークルOB                新田設計事務所副社長                五年前にさなえと結婚  新田《にった》さなえ……O大学ルーズサークルOG  新田大斗《にっただいと》……大和とさなえの息子  亀谷麻衣《かめやまい》……O大学ルーズサークルOG               楠行政書士事務所勤務               婚活中  鶴本駿介《つるもとしゅんすけ》……楠行政書士事務所勤務

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end** ◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です! https://estar.jp/novels/26513389

ドSでキュートな後輩においしくいただかれちゃいました!?

春音優月
恋愛
いつも失敗ばかりの美優は、少し前まで同じ部署だった四つ年下のドSな後輩のことが苦手だった。いつも辛辣なことばかり言われるし、なんだか完璧過ぎて隙がないし、後輩なのに美優よりも早く出世しそうだったから。 しかし、そんなドSな後輩が美優の仕事を手伝うために自宅にくることになり、さらにはずっと好きだったと告白されて———。 美優は彼のことを恋愛対象として見たことは一度もなかったはずなのに、意外とキュートな一面のある後輩になんだか絆されてしまって……? 2021.08.13

楽園 ~きみのいる場所~

深冬 芽以
恋愛
 事故で手足が不自由になった悠久《はるか》は、離婚して行き場を失くしていた義姉の楽《らく》を世話係として雇う。  派手で我儘な女王様タイプの妻・萌花《もか》とは正反対の地味で真面目で家庭的な楽は、悠久に高校時代の淡い恋を思い出させた。 「あなたの指、綺麗……」  忘れられずにいた昔の恋人と同じ言葉に、悠久は諦めていたリハビリに挑戦する。  一つ屋根の下で暮らすうちに惹かれ合う悠久と楽。  けれど、悠久には妻がいて、楽は義姉。 「二人で、遠くに行こうか……。きみが一緒なら、地獄でさえも楽園だから――」  二人の行く先に待っているのは、地獄か楽園か……。

年下研修医の極甘蜜愛

虹色すかい
恋愛
医局秘書として市内の病院に勤務する廣崎彩27歳。普段はスマートに仕事をこなすクールな彼女だが、定期的にやって来る「眠れない夜」に苦しんでいる。 そんな彩に、5年越しの思いを寄せる3歳年下の藤崎仁寿。人当たりがよくて優しくて。仔犬のように人懐っこい笑顔がかわいい彼は、柔和な見た目とは裏腹に超ポジティブで鋼のような心を持つ臨床研修医だ。 病気や過去の経験から恋愛に積極的になれないワケありOLとユーモラスで心優しい研修医の、あたたかくてちょっと笑えるラブストーリー。 仁寿の包み込むような優しさが、傷ついた彩の心を癒していく――。 シリアスがシリアスにならないのは、多分、朗らかで元気な藤崎先生のおかげ♡ ***************************** ※他サイトでも同タイトルで公開しています。

Home, Sweet Home

茜色
恋愛
OL生活7年目の庄野鞠子(しょうのまりこ)は、5つ年上の上司、藤堂達矢(とうどうたつや)に密かにあこがれている。あるアクシデントのせいで自宅マンションに戻れなくなった藤堂のために、鞠子は自分が暮らす一軒家に藤堂を泊まらせ、そのまま期間限定で同居することを提案する。 亡き祖母から受け継いだ古い家での共同生活は、かつて封印したはずの恋心を密かに蘇らせることになり・・・。 ☆ 全19話です。オフィスラブと謳っていますが、オフィスのシーンは少なめです 。「ムーンライトノベルズ」様に投稿済のものを一部改稿しております。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

やさしいキスの見つけ方

神室さち
恋愛
 諸々の事情から、天涯孤独の高校一年生、完璧な優等生である渡辺夏清(わたなべかすみ)は日々の糧を得るために年齢を偽って某所風俗店でバイトをしながら暮らしていた。  そこへ、現れたのは、天敵に近い存在の数学教師にしてクラス担任、井名里礼良(いなりあきら)。  辞めろ辞めないの押し問答の末に、井名里が持ち出した賭けとは?果たして夏清は平穏な日常を取り戻すことができるのか!?  何て言ってても、どこかにある幸せの結末を求めて突っ走ります。  こちらは2001年初出の自サイトに掲載していた小説です。完結済み。サイト閉鎖に伴い移行。若干の加筆修正は入りますがほぼそのままにしようと思っています。20年近く前に書いた作品なのでいろいろ文明の利器が古かったり常識が若干、今と異なったりしています。 20年くらい前の女子高生はこんな感じだったのかー くらいの視点で見ていただければ幸いです。今はこんなの通用しない! と思われる点も多々あるとは思いますが、大筋の変更はしない予定です。 フィクションなので。 多少不愉快な表現等ありますが、ネタバレになる事前の注意は行いません。この表現ついていけない…と思ったらそっとタグを閉じていただけると幸いです。 当時、だいぶ未来の話として書いていた部分がすでに現代なんで…そのあたりはもしかしたら現代に即した感じになるかもしれない。

処理中です...