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13 軋む心
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カチャリ、とドアが開く音。見ると、智也が濡れた髪をタオルでごしごし拭きながら立っていた。
「彩」
「早くない? ちゃんとお酒と煙草の匂い、消えた?」
「ああ」
体内のアルコールは残ったままのようで、智也はまだ少しボーッとしている。
「パン、食べられる? コーヒーだけにする?」
「……食べる」
子供みたい。
言うと絶対に不機嫌になるから、言わないけれど、思った。
「姉さんに言われて、来たのか?」
智也は徐にダイニングの席に着き、濃い目に淹れたコーヒーを一口飲んで、言った。
「悪かったな」
「寝過ごして飛行機に乗り遅れないか心配で来たのよ」
「寝過ごして、乗り遅れても良かったかもな」
智也はクロワッサンを口に入れた。サクッと気持ちのいい音がする。
「いっそのこと、仕事辞めて帰って来るかな」
随分と弱気な発言に、驚いた。
付き合い始める前、自分の進退もわからない状態ではと、智也は私との別れを受け入れた。釧路支社の業績を上げ、支社の存続が決まってから、智也が仕事を辞めたいなどと言ったことはない。
「真心ちゃん、おばあちゃんと一言も話さなかったんだって」
私はチーズ味のテーブルロールを手に取り、半分に千切って口に入れた。
「は?」
「智くんを苛めたから、嫌いだって」
「俺がいつ、苛められたんだよ」
「真心ちゃんにはそう見えたんでしょ?」
「納得いかないんだけど」
「てか、論点ズレてる」と言うと、私はキャラメルナッツのクロワッサンを自分の皿にのせた。智也の最寄り駅近くのパン屋さんのパンで、これが一番好きだ。智也には甘すぎるらしく、食べているのを見たことはない。
「真心ちゃんが、おばあちゃんよりも智くんを大切に想ってくれたことを喜ぶトコでしょ」
「ああ……、まぁ……」
「真心ちゃん、智也が買って行ったケーキしか食べなかったって。愛されてるね」
「けど、それじゃあ、真心が叱られたんじゃないか?」
「夏子も考えさせられたみたい」
「何を?」
「ご両親とのこと」
智也は塩パンに手を伸ばす。
私は、一昨日の夜、電話で夏子から聞いた話を始めた。
「夏子がご両親と連絡を取っていたのは、真心ちゃんと勇気くんの為だったんだよ」
「は?」
「夏子の旦那さんて、ご両親が亡くなっている上に、一人っ子なんでしょう?」
「ああ」
「夏子だってご両親へのわだかまりが消えたわけじゃないけど、真心ちゃんと勇気くんのおじいちゃんとおばあちゃんだから、連絡を取り続けていたみたい」
「子供たちの為?」
「彩」
「早くない? ちゃんとお酒と煙草の匂い、消えた?」
「ああ」
体内のアルコールは残ったままのようで、智也はまだ少しボーッとしている。
「パン、食べられる? コーヒーだけにする?」
「……食べる」
子供みたい。
言うと絶対に不機嫌になるから、言わないけれど、思った。
「姉さんに言われて、来たのか?」
智也は徐にダイニングの席に着き、濃い目に淹れたコーヒーを一口飲んで、言った。
「悪かったな」
「寝過ごして飛行機に乗り遅れないか心配で来たのよ」
「寝過ごして、乗り遅れても良かったかもな」
智也はクロワッサンを口に入れた。サクッと気持ちのいい音がする。
「いっそのこと、仕事辞めて帰って来るかな」
随分と弱気な発言に、驚いた。
付き合い始める前、自分の進退もわからない状態ではと、智也は私との別れを受け入れた。釧路支社の業績を上げ、支社の存続が決まってから、智也が仕事を辞めたいなどと言ったことはない。
「真心ちゃん、おばあちゃんと一言も話さなかったんだって」
私はチーズ味のテーブルロールを手に取り、半分に千切って口に入れた。
「は?」
「智くんを苛めたから、嫌いだって」
「俺がいつ、苛められたんだよ」
「真心ちゃんにはそう見えたんでしょ?」
「納得いかないんだけど」
「てか、論点ズレてる」と言うと、私はキャラメルナッツのクロワッサンを自分の皿にのせた。智也の最寄り駅近くのパン屋さんのパンで、これが一番好きだ。智也には甘すぎるらしく、食べているのを見たことはない。
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「ああ……、まぁ……」
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「けど、それじゃあ、真心が叱られたんじゃないか?」
「夏子も考えさせられたみたい」
「何を?」
「ご両親とのこと」
智也は塩パンに手を伸ばす。
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「夏子がご両親と連絡を取っていたのは、真心ちゃんと勇気くんの為だったんだよ」
「は?」
「夏子の旦那さんて、ご両親が亡くなっている上に、一人っ子なんでしょう?」
「ああ」
「夏子だってご両親へのわだかまりが消えたわけじゃないけど、真心ちゃんと勇気くんのおじいちゃんとおばあちゃんだから、連絡を取り続けていたみたい」
「子供たちの為?」
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