続・最後の男

深冬 芽以

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15 暴れだす感情 

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「どーせ! お前にしたら俺は子供ガキだよな? 仕事の愚痴も言えない、悩みも言えない、その原因が俺だとしても! 言っても意味がないからな。頼りなさすぎて、言うだけ無駄だよな。俺はどうせそばにいて守ってやれないからな」

「なにが言いたいのよ。何でも話せって? 謹慎になった理由? あなたの元カノの挑発に乗って暴言を吐いたこと!? 言ってどうなるのよ。なに? 智也がどうにかしてくれるの?」

 静かな室内に、互いの声が響く。

 私こそ、大人気ないことを言っている。もっと他の言い方を知っているはずなのに、口をついて飛び出す言葉は、智也を追い詰め、責めるようなものばかり。

 言ってはいけないとわかっているのに、止められない。

「違うだろ! どうにかするとかじゃなく、何でも話せよってことだろ。それに、俺が原因でお前が環に嫌がらせされてるなら、放っておけるわけ――」

「――そういうのが嫌なの!!」と、私は彼の言葉を大声で遮った。

 大きく息を吸い込み、キッと智也を睨みつける。智也が一瞬、ハッとしたように口を噤んだ。

「十年前に別れた女のすることの尻拭いを智也がするの? 結婚を考えるほど好きだったから? それとも、別れた他の女にもそうなの? いつまでも俺の女扱い? そうよね? 今でも名前を呼び捨て合う仲だし?」

 最低だ。

 こんな女、最低だ。

 ドラマなんかでこういうことを言う女を、そういう目で見てきた。

 男に鬱陶しがられる、典型的な女。

 けれど、頭の片隅でそうは思っても、今の私の九割以上は感情に支配されている。こんなことを言っては嫌われてしまうと理性が訴えても、その声は九十九人の応援歌に一人の子守歌が対抗できるかというほど、意味のないもの。

「だから! そういう不満をため込むなってことだろ。た――益井のことで俺に言いたいことがあるなら、そう思った時に言えばいいだろ!」

「言ってどうなるのよ。智也が謝るの? 俺の元カノが悪かった、って? 冗談じゃない! それに、智也だって言わなかったじゃない。元カノが会いに行ったこと。後ろめたいことでもあった? 言い寄られて嫌な気はしないわよね? 私と別れて自分とよりを戻してくれって言われた? それで気持ちが揺れた? 私をけしかけて、怒らせて、別れ話にでも持ち込む気だった? そんな回りくどいことをしなくても――!」

「彩!!」

 興奮のあまり呼吸も忘れて、涙が頬を伝い零れるのにも気づかなかった。

 情けない。

 いつもの自分はどこへ行ってしまったのか。

 結局、私は何もかも中途半端。

 大人ぶったところで、それなりにやり過ごすのが精いっぱい。

 真が私と智也の関係に不満や不安を持っていると感じても、直接聞く勇気もなくて、真の前では智也の話題を避けることでやり過ごしている。

 益井課長が釧路に行ったと聞いて、本当はムカついた。けれど、理解ある振りをして、智也を信じているから大丈夫だと自分に言い聞かせた。

 益井課長と険悪なことを智也に言わなかったのは、情けない女だと思われたくなかったから。元カノに苛められていると泣きつけるほど可愛くも、か弱くもないのは自分でもわかっている。

 そうやって、私はいつも、自分の首を絞める。
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