続・最後の男

深冬 芽以

文字の大きさ
168 / 231
18 まさかのデキ婚!?

10

しおりを挟む

 一先ず、課長には帰ってもらい、私は凪子さんと話した。

 昨日、玄関で課長の匂いを嗅いだ瞬間、話どころではなくなったらしい。

 妊娠中の女性にはよくある拒絶反応。

 ご飯の炊ける匂い、味噌汁の匂い、コーヒーの匂い、旦那の匂い。

 ちなみに私は、旦那の匂い以外はセーフだった。

 とにかく、凪子さんはとてもじゃないけれど、千堂課長と顔を合わせて話ができる状態ではなく、というか、ベッドから起き上がれる状態にもなく、私が代わりに妊娠を告げることになった。

 千堂課長にしてみれば、二泊の出張から帰った途端に恋人から顔も見るのも拒絶され、何が起こったかわからずにいるところに、恋人からではなく部下から、自分の子供の存在を知らされたのだ。そりゃ、驚いていいのか、喜んでいいのか、心配していいのかわからなくもなる。

 何はともあれ、凪子さんと話をしようと電話をしたが、出てもらえず。

 動揺のあまりコーヒーを零し、今に至る。

『で? 俺にまでそんな話を聞かせて、なんて言って欲しいんだ?』

 そんないい方しなくても、と思った。

『男として責任を取るべきだ、とでも言ってやろうか?』

 千堂課長はスマホを睨みつけて、グッと唇を結んでいる。

「智也――」

『そんなことはわかってんだろーが!』

「わかってます!」



 お、喋った。 



『だったら、格好悪かろうが腹括るしかないだろ』

「ですよね」

『――ったく! 彩! 土産受け取ったら、とっととそっから出ろ』

 それを最後に、スマホはホーム画面に切り替わった。

「堀藤さん、お願いがあります」

 スマホをバッグにしまって顔を上げると、覚悟を決めた千堂課長が、今度は私をじっと見つめていた。

 一時間後、私は千堂課長と区役所の入り口にいた。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

ヘンタイ好きシリーズ・女子高校生ミコ

hosimure
恋愛
わたしには友達にも親にも言えない秘密があります…。 それは彼氏のこと。 3年前から付き合っている彼氏は実は、ヘンタイなんです!

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

小野寺社長のお気に入り

茜色
恋愛
朝岡渚(あさおかなぎさ)、28歳。小さなイベント企画会社に転職して以来、社長のアシスタント兼お守り役として振り回される毎日。34歳の社長・小野寺貢(おのでらみつぐ)は、ルックスは良いが生活態度はいい加減、デリカシーに欠ける困った男。 悪天候の夜、残業で家に帰れなくなった渚は小野寺と応接室で仮眠をとることに。思いがけず緊張する渚に、「おまえ、あんまり男を知らないだろう」と小野寺が突然迫ってきて・・・。 ☆全19話です。「オフィスラブ」と謳っていますが、あまりオフィスっぽくありません。 ☆「ムーンライトノベルズ」様にも掲載しています。

癒やしの小児科医と秘密の契約

あさの紅茶
恋愛
大好きな佐々木先生がお見合いをするって言うから、ショックすぎて……。 酔った勢いで思わず告白してしまった。 「絶対先生を振り向かせてみせます!」 そう宣言したものの、どうしたらいいかわからずひたすら「好き」と告白する毎日。 「仕事中だよ」 告白するたび、とても冷静に叱られています。 川島心和(25) 小児科の看護師 × 佐々木俊介(30) 小児科医

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

Home, Sweet Home

茜色
恋愛
OL生活7年目の庄野鞠子(しょうのまりこ)は、5つ年上の上司、藤堂達矢(とうどうたつや)に密かにあこがれている。あるアクシデントのせいで自宅マンションに戻れなくなった藤堂のために、鞠子は自分が暮らす一軒家に藤堂を泊まらせ、そのまま期間限定で同居することを提案する。 亡き祖母から受け継いだ古い家での共同生活は、かつて封印したはずの恋心を密かに蘇らせることになり・・・。 ☆ 全19話です。オフィスラブと謳っていますが、オフィスのシーンは少なめです 。「ムーンライトノベルズ」様に投稿済のものを一部改稿しております。

なし崩しの夜

春密まつり
恋愛
朝起きると栞は見知らぬベッドの上にいた。 さらに、隣には嫌いな男、悠介が眠っていた。 彼は昨晩、栞と抱き合ったと告げる。 信じられない、嘘だと責める栞に彼は不敵に微笑み、オフィスにも関わらず身体を求めてくる。 つい流されそうになるが、栞は覚悟を決めて彼を試すことにした。

処理中です...