続・最後の男

深冬 芽以

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19 すれ違う未来

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 私は、顔が見えないのをいいことに、軽蔑の冷ややかな視線を送った。

「結局、湿布貼っててもいいからフェラしてほしい、って言いたかっただけのように聞こえるけど?」

『はっ!? お前、どうしてそうなるよ? 端折り過ぎだし、端折るとこ間違えてるし』

「誰かさんよりはマシだと思うけど?」

『……お前なぁ、恋人に電話したら男の声がして、『脱げ』とか『イけ』とか話してたら、想像することなんかひとつだろ』

 そんな言われ方をすると、返す言葉もない。

 確かに、私だって智也との電話の向こうで女の声がしてそんな会話をしていたら不安になるし、怒ると思う。

「……ごめん」

『悪いと思ってんなら、言えよ』

「だから、ごめんて――」

『――じゃなくて!』

 こだわる智也も大概だけれど、意地を張り続ける私も私だ。



 ――ってか、今更恥ずかしがるようなことじゃないよね……。



「好きだ……よ?」

『……なんで疑問?』

「そういうこと言うなら、もう言わない」

『……やだ……』

 全身がムズムズと痒くなるような会話。

 けれど、口を閉ざしてしまった智也の反応が、私と同じで照れてるからかな、なんて思ったら、ちょっと嬉しかった。

「好きだよ、智也」

『……ん』

「言わせといて、反応うすっ!」

『そういうわけじゃ――』



 やっぱり、照れてる……。



 電話を切った後も、しばらく表情筋が緩んで戻らなかった。



 ホント、いい年して……。



 眠るまで、何度も智也の囁きを思い返した。

 寝返りを打つたびに腰が痛んだけれど、なかなか眠れなかったのだから仕方がない。

 次に智也に会う時は、湿布を剥がすのを絶対に忘れない、と自分に言い聞かせて、目を閉じた。
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