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20 芯まで蕩けて
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しおりを挟むそうだ。
俺と結婚したら、食費の心配なんてなくなる。それくらいの稼ぎはある。
それは、彩を説得する大きなアピールポイントになりそうだ。
俺と彩は、スパカツを食った店から歩いて五分ほどの場所にある、ショッピングモールと植物園が隣接した施設にやって来た。全面ガラス張りの、蒲鉾型のドーム。北海道では珍しい植物が見られるらしい。
しかも、無料。
昨夜、検索して知った。
程よく腹を満たしている俺たちは、植物園を散歩することにした。
週末とはいえ、園内に人は多くない。
一階は木々の間の通路を歩き、二階は外周を回れるようになっている。二階は休憩用のベンチが設置されていて、今日のような天気のいい日は、日光浴しているようなものだ。
「やべ、眠みぃ」
「うん……」
二人してベンチに座って、ただボーッとガラス越しに太陽の光を浴びている。なんと、健康的なことか。
「彩」
「ん?」
「……呼んだだけ」
「なに、それ」
本当は、大事なことを言おうとした。
けれど、旅行客であろうおばちゃん集団が目の前を通過し、言わなかった。
俺の気持ちなど気づくわけもなく、彩は天井を見上げている。
俺も、少し仰け反るようにして、見上げた。
「彩」
「ん?」
「近くにホテル、あったよな」
この周辺にはビジネスホテルとシティホテルが数件ある。
「ん? うん」
「泊ろーぜ」
「なんで?」
「夕日が綺麗なんだと」
「幣舞橋、だっけ? 世界三夕日スポット。天気いいから綺麗に見えそうだよね」
「橋じゃなくて、ホテルから見るんじゃダメか?」
彩が顎を下げ、俺を見た。俺も、彩を見る。
「ダメか?」
「いいけど、どうしたの?」
「……」
黙って彩を見つめたまま、答えなかった。
人がいなけりゃ、キスしてた。
自分で思っていた以上に、彩に会えなくて寂しかった。触れたかった。
「賄賂」
「賄賂?」
「明日は俺の好きなモン、作ってもらおうと思って」
俺は立ち上がり、軽く伸びをして、彩の荷物を持ち上げた。
「だから、今日は彩の好きなモン食って、デカいベッドでゆっくり寝よう」
俺は空いている手を彼女に差し出した。
彩は少しだけ呆れたように、かなり嬉しそうに微笑んで、俺の手を取った。
「あんまり美味しいもの食べさせてもらっちゃったら、お返ししきれないんだけど」
「足りない分は、飯以外でもいいぞ?」
「……なんか怪し過ぎるから、がっつり作り置きして帰るわ」と、彩の冷ややかな視線。
「隣、お土産屋さんがいっぱいあったっぽいよね?」
彩が俺の手をしっかりと握り、引っ張った。
「試食、あるかな」
色気より食い気の一言に、俺は思わず吹き出す。
「ホテルディナーの前に、腹いっぱいになんなよ?」
「彩さんの胃袋をナメちゃいけませんよ?」
ふふん、と得意気だが、納得したら怒られそうだ。
「ま、いいさ。思いっきり、食え。きっちり食後の運動に付き合ってやるよ」
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