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20 芯まで蕩けて
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顔は見えなかったけれど、きっと照れてる。それに、怒ってる。
その証拠に、俺の手を握る彼女の手に力がこもる。
言ったらまた、照れて怒るから言わないけれど、かわいい、と思った。
ショッピングモール内を歩き回って、試食をつまんで、買ったり買わなかったりして、ホテルに入る頃には、二人とも両手に荷物を抱えていて、手を繋ぐどころではなかった。
いつもは、帰りに空港でお菓子をひと箱買うくらいなのに、今日は釧路の銘菓だの限定だのを片っ端から買った。それも、自分の金で。
「ホテルから送るか?」
「うん。そうしよっかな」
送料が勿体ないとか言いそうなのに、と思った。
冷蔵物があるからか。
俺は五つ、六つはある紙袋やビニール袋を見下ろした。それぞれ、中には数箱ずつ入っている。
「しっかし、買ったな」
「どれも美味しそうだったんだもん」
「それにしたって、こんなに一気に買わなくても良かったんじゃないか?」
「心残りになるのは嫌じゃない」
「大袈裟だな。季節限定じゃないなら、この次でも良かったんじゃね? 賞味期限内に食えんのかよ」
「……食べるよ。ちゃんと、全部食べるよ」
袋から箱を取り出しながら、呟く。やけに、愛おしそうに菓子を見つめながら。
そんなに、美味かったのか。
「真と亮にかかったら、あっと言う間なんだから!」と言いながら顔を上げた彩は、いつもの元気な笑顔。
「ホテルのお土産屋さんも見たいから、とりあえず冷蔵物だけ――」
彩はチョコレートやケーキなんかを部屋の冷蔵庫に入れ、俺はアメニティのドリップコーヒーの封を切った。
現在、十六時。
この時期の日没は、十六時二十分前後。
俺は二つのカップを窓際のテーブルに置き、窓にかかるレースのカーテンを大きく開け放った。眼下には、釧路川沿いの緑地と、その先には釧路港。今はまだ明るいから、古い倉庫が建ち並んでいるのも見える。
それから停泊している船。漁船、にしては大きい。タンカー? クルーズ船か。
予約なしだったが、十二階の海側ツインルームを取れたのは、運が良かった。
景色を臨む為に置かれているのであろうカウチに腰を下ろし、コーヒーを一口すすった。
夕日はまだ、その形を隠すことなく、太平洋に浮かんでいる。
「彩」
彩は土産を整理し、バスルームのチェックをしている。
「お風呂、結構広いよ」
「一緒に入るか」
「そこまでの広さじゃないから」
彩は一緒に風呂に入るのを嫌がる。
明るいところで裸を見られるのが嫌なのはわかるし、洗いっこ、なんて以ての外なのだろう。
ま、乱入するけど。
阿寒湖温泉の露天風呂は一緒に入った。
あの時、裸でぴったりと寄り添って、他愛のない話をしたのが、なぜかすごく記憶に残っている。
温泉の熱で身体を、彩の温もりで心を癒されるのが、この上なく幸せな瞬間なのだと思う。
その証拠に、俺の手を握る彼女の手に力がこもる。
言ったらまた、照れて怒るから言わないけれど、かわいい、と思った。
ショッピングモール内を歩き回って、試食をつまんで、買ったり買わなかったりして、ホテルに入る頃には、二人とも両手に荷物を抱えていて、手を繋ぐどころではなかった。
いつもは、帰りに空港でお菓子をひと箱買うくらいなのに、今日は釧路の銘菓だの限定だのを片っ端から買った。それも、自分の金で。
「ホテルから送るか?」
「うん。そうしよっかな」
送料が勿体ないとか言いそうなのに、と思った。
冷蔵物があるからか。
俺は五つ、六つはある紙袋やビニール袋を見下ろした。それぞれ、中には数箱ずつ入っている。
「しっかし、買ったな」
「どれも美味しそうだったんだもん」
「それにしたって、こんなに一気に買わなくても良かったんじゃないか?」
「心残りになるのは嫌じゃない」
「大袈裟だな。季節限定じゃないなら、この次でも良かったんじゃね? 賞味期限内に食えんのかよ」
「……食べるよ。ちゃんと、全部食べるよ」
袋から箱を取り出しながら、呟く。やけに、愛おしそうに菓子を見つめながら。
そんなに、美味かったのか。
「真と亮にかかったら、あっと言う間なんだから!」と言いながら顔を上げた彩は、いつもの元気な笑顔。
「ホテルのお土産屋さんも見たいから、とりあえず冷蔵物だけ――」
彩はチョコレートやケーキなんかを部屋の冷蔵庫に入れ、俺はアメニティのドリップコーヒーの封を切った。
現在、十六時。
この時期の日没は、十六時二十分前後。
俺は二つのカップを窓際のテーブルに置き、窓にかかるレースのカーテンを大きく開け放った。眼下には、釧路川沿いの緑地と、その先には釧路港。今はまだ明るいから、古い倉庫が建ち並んでいるのも見える。
それから停泊している船。漁船、にしては大きい。タンカー? クルーズ船か。
予約なしだったが、十二階の海側ツインルームを取れたのは、運が良かった。
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夕日はまだ、その形を隠すことなく、太平洋に浮かんでいる。
「彩」
彩は土産を整理し、バスルームのチェックをしている。
「お風呂、結構広いよ」
「一緒に入るか」
「そこまでの広さじゃないから」
彩は一緒に風呂に入るのを嫌がる。
明るいところで裸を見られるのが嫌なのはわかるし、洗いっこ、なんて以ての外なのだろう。
ま、乱入するけど。
阿寒湖温泉の露天風呂は一緒に入った。
あの時、裸でぴったりと寄り添って、他愛のない話をしたのが、なぜかすごく記憶に残っている。
温泉の熱で身体を、彩の温もりで心を癒されるのが、この上なく幸せな瞬間なのだと思う。
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