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20 芯まで蕩けて
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「そろそろ日没じゃない?」
オレンジ色の太陽が、ゆっくりと太平洋に近づいてゆく。
漂う雲が、オレンジ色に染まって際立ち、美しくも妖しく輝く。
子供の頃に見たアニメで、こんな赤みがかった雲間から妖怪が現れるシーンがあった。
なるほど。
逢魔が時、とはよく言ったものだ。
夕日を呑み込む水面までも妖しく輝き、けれど、それを覆いつくさんとする漆黒の闇がその輝きを鈍らせる。
深紅、赤錆、橙、黄金、漆黒。
様々な色彩が太陽を取り巻き、染めてゆく。
それはきっと、見る者の感性や心情によって違って見えるのだろう。
俺は、夕日そのものよりも、夕日に照らされる彩の後姿に目を奪われていた。
神々しくもあり、儚気でもあり、寂し気でもあり、恐ろし気でもある。
そう思うのは、プロポーズを決意した俺の、期待と不安、緊張、恐怖なんかのせいかもしれない。
「彩」
窓の外を見つめ、俺の視線になんか少しも気づかない彼女を、背後から抱き締めた。
「彩……」
「すごい……ね」
彼女のうなじに口づけ、頬擦りする。
「晴れて、良かったな」
彼女の耳朶を咥えた時、ようやく気付いた。頬が、濡れている。
「彩?」
瞬きもせずに夕日を見つめる彩の頬に涙が伝い、銀色に輝いて見える。
「どうした?」
「なんだろう。すっごい、胸が締め付けられるって言うか……」
景色に感動することはあまりないと言っていたが、世界三大夕日の前では感動しまくりのようだ。
「忘れないね」
「ん?」
「智也とこうして夕日を見たこと、一生忘れないね」
そう言って微笑むと、彩は首を捻って俺の瞼にキスをした。それから、唇にも。
「大袈裟だな。また、見れるだろ」
瞼を閉じた彼女の目尻から大粒の雫がこぼれ、俺の頬を濡らした。
「ありがとう、智也」
今日の彩は随分感傷的だな、と思った。
夕日がすっかり沈んだ頃、俺たちは薄暗い部屋のベッドで抱き合っていた。
食事の前は嫌がるかと思ったのに、予想外にも彩の方が積極的だった。
沈む夕日に、彩は何を思ったのか。
恐らく、俺と同様に、己の中の欲望に火をつけられたのだろう。
少なくとも俺には、夕日が纏う赤はエロティックな深紅、オレンジは焔の橙に見えた。
「彩……」
久し振りに触れる彩は、夢に見たよりも温かくて柔らかくて、心地良い。
「待って」
胸の先端を口に含みながら、彩が纏う最後の一枚であるショーツに手をかけた時、その手を掴まれた。俺は舌で硬くなった乳首を舐め上げ、彼女の手が更なる快感を期待して俺の手を解放するのを待った。
女の『待って』や『ダメ』は、鵜呑みにしてはいけない。セックスに関しては、殊更。
が、彩は快感に抗い、起き上がると、逆に俺を押し倒した。
攻守交替。
今度は彩が俺の乳首を口に含み、舌で転がす。
オレンジ色の太陽が、ゆっくりと太平洋に近づいてゆく。
漂う雲が、オレンジ色に染まって際立ち、美しくも妖しく輝く。
子供の頃に見たアニメで、こんな赤みがかった雲間から妖怪が現れるシーンがあった。
なるほど。
逢魔が時、とはよく言ったものだ。
夕日を呑み込む水面までも妖しく輝き、けれど、それを覆いつくさんとする漆黒の闇がその輝きを鈍らせる。
深紅、赤錆、橙、黄金、漆黒。
様々な色彩が太陽を取り巻き、染めてゆく。
それはきっと、見る者の感性や心情によって違って見えるのだろう。
俺は、夕日そのものよりも、夕日に照らされる彩の後姿に目を奪われていた。
神々しくもあり、儚気でもあり、寂し気でもあり、恐ろし気でもある。
そう思うのは、プロポーズを決意した俺の、期待と不安、緊張、恐怖なんかのせいかもしれない。
「彩」
窓の外を見つめ、俺の視線になんか少しも気づかない彼女を、背後から抱き締めた。
「彩……」
「すごい……ね」
彼女のうなじに口づけ、頬擦りする。
「晴れて、良かったな」
彼女の耳朶を咥えた時、ようやく気付いた。頬が、濡れている。
「彩?」
瞬きもせずに夕日を見つめる彩の頬に涙が伝い、銀色に輝いて見える。
「どうした?」
「なんだろう。すっごい、胸が締め付けられるって言うか……」
景色に感動することはあまりないと言っていたが、世界三大夕日の前では感動しまくりのようだ。
「忘れないね」
「ん?」
「智也とこうして夕日を見たこと、一生忘れないね」
そう言って微笑むと、彩は首を捻って俺の瞼にキスをした。それから、唇にも。
「大袈裟だな。また、見れるだろ」
瞼を閉じた彼女の目尻から大粒の雫がこぼれ、俺の頬を濡らした。
「ありがとう、智也」
今日の彩は随分感傷的だな、と思った。
夕日がすっかり沈んだ頃、俺たちは薄暗い部屋のベッドで抱き合っていた。
食事の前は嫌がるかと思ったのに、予想外にも彩の方が積極的だった。
沈む夕日に、彩は何を思ったのか。
恐らく、俺と同様に、己の中の欲望に火をつけられたのだろう。
少なくとも俺には、夕日が纏う赤はエロティックな深紅、オレンジは焔の橙に見えた。
「彩……」
久し振りに触れる彩は、夢に見たよりも温かくて柔らかくて、心地良い。
「待って」
胸の先端を口に含みながら、彩が纏う最後の一枚であるショーツに手をかけた時、その手を掴まれた。俺は舌で硬くなった乳首を舐め上げ、彼女の手が更なる快感を期待して俺の手を解放するのを待った。
女の『待って』や『ダメ』は、鵜呑みにしてはいけない。セックスに関しては、殊更。
が、彩は快感に抗い、起き上がると、逆に俺を押し倒した。
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今度は彩が俺の乳首を口に含み、舌で転がす。
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