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23 決別、そして、拉致
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しおりを挟む「なぁ、彩? お前、釧路で俺がプロポーズしようとしてたこと、気づいてたろ」
「……」
「気づいてて、言わせなかったよな」
「…………」
「俺さ、今なら絶対イケるって思ってたんだよ。千堂と冨田の結婚とか、ホテルで夕日見て、避妊なしでセックスしたりとか、なんかもう、断られる要素なんかないだろって思ってたんだよ」
「…………っ」
「だから、言わせてもらえなかったのもショックだったし、空港で、あんな風に振られて、ショック通り越してムカついてさ。ぜってぇ、このまま終わらせないって思ったんだよ」
「智也……」
こんな言い方、彩を追い詰めているのはわかっている。だが、本心だ。
「着拒されて、会社に電話したら退職したって聞かされて、千堂に散々バカにされて、ムカつくの通り越したら泣きたくなった」
「ごめ――なさ……」
「で、お前の実家に乗り込んだら、入院してるって聞かされてさ。色んな感情一巡したら、笑えたよ。俺って、お前のなんだったんだろうな、って」
「ごめんな……さい」
彩の声はか細く、震えているのに、涙は見えない。それでも、今にも泣きそうだ。
今、自分が泣くのは違うと、耐えているのだと感じた。
「俺さ、ずっと、結婚する理由っていうか、結婚の意味がわからなかった。プロポーズしようと思ったのも、千堂と冨田に感化されたのが大きかったし。お前も言ってた通り、今時、事実婚だって妻と同等の扱いを受けるんだし。けど、やっぱり違うんだよな」
緊張で、彩の目を見れない。
落ち着け、と自分に言い聞かせた。
「お前が入院してる病院に行ったらさ、文字通り、門前払いされた」
「え……?」
「『家族じゃないから』って」
「……」
「情けないのなんのって……」
「智也、もう――」
「――で、思ったんだよ。お前の夫になりたい、って」
「——……っ!」
彩の眉根が寄り、唇が震える。
俺は、歯を食いしばって、深呼吸をした。
病院で門前払いされた時のことを思い出すと、泣きそうだった。
「結婚……てさ、お前は俺のモンだって周囲に認めさせるための手段、つーか、証拠? なんだよな、きっと」
彩の瞳に薄い膜が張り、徐々に膨らむ。
「だってさ、今のまんまじゃ……、彩が死んでも、俺には知らされないってことだろ? 人伝に、千堂や冨田から聞かされるまで、知る術がないってことだろ? 逆に……、俺が釧路で事故とかで死んでも、彩には伝わらないんだろ? 姉さんが知らせなきゃ、お前はずっと知らないままなんだよな」
「智也、もう……やめ――」
「――またっ! 彩が手術するようなことがあったら、一緒に医者の話を聞きたい。手術の同意書には、俺が名前を書きたい」
「とも……や」
「逆に、俺に何かあった時は、お前にそばにいて欲しい」
「智也……」
「お互いに何かあった時、無条件で、真っ先にお互いに知らされたい」
彩が瞬きをすると、大粒の涙がテーブルに真っ直ぐ落ちた。それから、彼女の頬を伝い、顎からも零れる。
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