続・最後の男

深冬 芽以

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23 決別、そして、拉致

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「俺が死んだら、彩に喪主をしてもらいたい。俺の生命保険を受け取って、遺族年金とか貰ってさ、結婚しておいて良かったなって思われたい」

 なんつープロポーズだ、と思う。

 けれど、愛してる、とか、ずっと一緒にいたい、なんて言葉より、現実的で、きっと俺達らしい。

「んで、俺の生命保険も使い果たして、もう充分生きたなって思えたら、俺と同じ墓に入ってくれよ」

「……っ」

「そしたら、本当の意味で、俺は彩の『最後の男』だろう? 添い遂げる、ってそういうことだろう?」

「…………っ」

 俺を見つめて、ボロボロ涙を流す彩の姿が滲んで見えるのは、なぜだろう。

「彩」

 俺は緊張のあまり踏ん張っていた足に、もうひと踏ん張りだと指示を出し、立ち上がった。

 左右交互に足を出し、三歩目で彩の前に辿り着く。

 それから、俺は左膝を床に付き、右膝を立てた。

 彩の手を握り、彼女を見上げた。

 生温かい雫が、握った手に零れた。



「俺と結婚してください」



 涙が、溢れた。

「大事にするから」

 必死になり過ぎて、緊張し過ぎて、脳みそが爆発しそうで、涙腺が壊れた。

「マンションのローンはもうすぐ終わるし、生命保険も結構な額の入ってるし、お買い得だろ?」

 泣き過ぎて声が出なくなる前にと、早口でまくし立てる。

「嫁姑問題も心配ないし、あ、彩の親の面倒とか……見てもいい。それから——」

 もう、ハチャメチャだ。

 散々考えた言葉は、見事に吹っ飛んだ。

 こんなはずじゃなかった。

 もっと格好よく、キメるつもりだった。

「子供たちが父親に会うのも……構わないし……。もっと出世するから、退職金も期待できるぞ?」

「それって——」

 彩がボソッと言った。

「私がお金目当てに智也と結婚するみたいじゃない」

「愛があれば他に何もいらない、なんて浮ついた気持じゃないって、証明だよ。現実的で、打算的で、少しだけ感情的なくらいがちょうどいいだろ」

「……確かに」

 ここで、納得するのが、実に彩らしい。

 一般的に、こんなプロポーズをされたら、ムードがないと怒るだろう。

「打算的ついでに、結婚を認めてもらう代わりに、お父さんと真と約束したことがある」

「え……?」

「約束したんだ。子供は作らない、って」

「え――――?」

「お父さんは、彩の年齢とか、腰痛とか、真と亮との関係とかを心配してた。真は――、きっと、子供が出来たらお前を取られると思ってんじゃないか? ああ見えて、まだまだ――」

「智也! 私は――」

 俺のついた嘘を、見破ったのかもしれない。

 彩の言葉が音になる前に、唇を重ねた。

「お父さんと、真と約束したから、子供は作らない」

「違う、智也――」

 立ち上がり、彩を抱き締めた。

「男と男の約束だ。絶対に、守る。それに、真と亮がいれば十分だ」

「智也!」

 彩が俺の脇腹をグイグイ押して、逃れようとする。が、そうはさせない。

「まぁ、カッコいいこと言っても、俺も彩に構ってもらえなくなるのが嫌なだけなんだけどな?」

 彩の腕から力が抜けて、観念したのか自らの手を俺の背中に回した。
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