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24 願い
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しおりを挟む「……独りでいるのは、平気……なの。だけど、独りになるのは……嫌」
涙で、液晶に映る自分が滲む。
右目から溢れた涙が左目に伝い、質量を増してこめかみに流れる。
「このまま……独りでいるのは……、きっと、平気なの。だけど……、智也と結婚して……幸せを……感じてっ……、それからまた独りに……戻るのは……耐えられない……から――」
幸せにも色んな種類がある。
私が持てる幸せは、真と亮と両親と共にある平穏。女としての悦びはなくても、心穏やかに過ごせる毎日も、十分な幸せ。
けれど、智也と結婚することで女として愛される幸せを知ってしまったら、もう、それがなくても幸せだなんて思えなくなる。
失う恐怖や絶望を味わうくらいなら、悦びを知らないままでいい。
それに、子供たちの名字を何度も変えるのは、忍びない。
そう思った。
「そうか……」
智也が身体を起こすと同時に、私も抱き起された。
傷に響かないよう、ゆっくりと。
それから、智也と向かい合い、両手できつく抱き締められた。
「俺は、もう、独りは嫌だ」
そう言うと、智也は私のこめかみに口づけた。横を向いて泣いたせいで、髪までベトベトなのに。
「独りでいるのも、独りになるのも、もう嫌だ」
濡れてぐちゃぐちゃになった髪を、智也が指ですく。
「俺を……捨てないでくれ」
「そんな……こと――」
「二度も俺をフッておいて?」
フッと鼻で笑う彼の息が、耳をくすぐる。
「彩は俺に捨てられるみたいな心配ばっかしてるけど、俺だって不安だぞ? それに、俺がいなくても彩には真と亮がいるけど、俺は独りだ。真との繋がりがなくなったら、真心にも愛想尽かされそうだし」
茶化すように言う智也の鼓動の速さに気づいて、驚いた。
ドッドッドッ、と耳に低温が響く。
「なぁ、彩」
智也が身体を引き、鼓動が遠のく。
ほぼ同時に、智也は私を見下ろし、私は彼を見上げた。
表情はいつもと変わらない。
穏やかで、だけど、口元はちょっと意地悪そうに笑っている。
だけど、違う。
鼓動が速かった。
瞳が潤んでいる。
唇が震えている。
「お前と付き合うまで知らなかったんだけど、俺って実は寂しがりなんだよ」
知っている。
電話やメッセージの頻度、会った時の甘え方を見れば、わかる。
「だからさ、孤独死とか、ホント嫌なんだよ。頭とか心臓が痛くなっていきなりぶっ倒れて、たった一人で苦しみながら死んで、マンションの住人が異臭に気づくまで見つけてもらえなくて、葬式の時にお見せ出来ない無残な姿になって焼かれるなんて、ホント、嫌なんだよ」
それは、誰でも嫌だろう。
「そうならないように、家族になって一緒に暮らしてくれよ」
「智也」
「俺さ、両親に唯一感謝していることがあるとしたら、容姿くらいなんだよ。お陰で、それなりに女にモテたし? きみちゃんにも、いい男だ、って言ってもらえたし。なのに、最期は腐ってドロドロとか、死んでも死にきれねーだろ?」
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