続・最後の男

深冬 芽以

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25 家族

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 四日後。

 俺と彩は揃って区役所に婚姻届を提出し、ネットで決めておいた店に行って指輪を買った。

 実は、店に入るギリギリまで攻防が続いていた。

 彩は俺が検索した店はどこも高いと言い、今時高校生でもバイトして買えそうな店の物を欲しがった。明らかに、俺の財布事情に遠慮してのこと。

 確かに今後の生活を考えれば、贅沢はしない方がいいのだろう。

 だが、一生に一度の結婚指輪だ。彩にとっては二度目だが。だからこそ、見たこともない一度目の指輪よりいいものを贈りたかった。

 結局、婚約指輪は買わないからということで、妥協した。

「やっぱイニシャル入りか?」

「刻印入ってると、売る時安くなるんだよね」

「は?」

「……冗談よ」

 まるで冗談に聞こえない。

 前の結婚指輪は刻印入りで、離婚後売る時に刻印のせいで減額されたのだとわかった。

「売ることないから、刻印入れるぞ。あ! お互いの指輪に好きな刻印を入れようぜ。見るまでお楽しみってことにして」

 彩は嫌がったが、俺は勝手に彩の指輪に入れる刻印を注文用紙に記入した。

『Tomoya's beloved Aya is my last woman』

 彩がなんて刻印したかは、知らない。

 二週間ほどで出来上がると言われたが、正月に俺が帰省した時に二人で取りに来ることにした。

 彩との幸せな結婚生活を始めるためには、片付けなければならない問題がいくつかある。それを片付けるべく、俺は釧路に戻った。

 それからの三週間。

 俺は毎日彩に電話して、『大丈夫か』と聞いた。最初の一週間は穏やかに『大丈夫よ』と返していたが、次の一週間は呆れた口調で『もう、ホントに大丈夫だから』と言い、更に次の一週間は面倒臭そうに『しつこい』と言われた。

 なかなかに辛辣な彩の一面を知った。

 年末。

 仕事納めの後で部下たちに一杯奢り、家に帰った俺はそそくさと荷物をまとめた。

 明日の朝一の便で札幌に帰る。

 飛行機を降りたら、真っ直ぐ彩の家に行くつもりだ。

 寝過ごしては堪らないと早々にベッドに入るが、着信音に飛び起きた。

 姉さんからだった。

『メッセージの返事くらいしなさい!』

 何度かメッセージが届いていたが、後回しにしていてすっかり忘れていた。

「忙しくて忘れてた。なんだっけ?」

『今年の年越しはどうするの?』

「ああ……」

 毎年、年越しは姉さんたち一家としていた。十二月三十一日から一月二日まで泊まり込みで義兄さんと飲む。

『バタバタしてたとはいえ、結婚して初めてのお正月なんだから、まずは彩の実家に顔を出すのが筋でしょう? うちには何日に来る? あ! 来る時は彩たちも連れて来てね』

 珍しく姉さんはきびきびとした口調でまくし立てた。

『智也、最初が肝心よ。彩のご家族に歓迎してもらうためにも、やり過ぎなことはないの。どっさりお土産を買って来なさいよ。もちろん、うちの分もね!』

「はぁ……」

『シャキッとしなさい。お正月は彩の妹さん一家も帰省するみたいだし、第一印象は大切よ』

「……そうなの?」

『当たり前でしょ!』

 姉さんの怒声に、俺は思わずスマホを耳から離した。そのまま、スピーカーに切り替える。

「違う、違う。正月に彩の妹が来るって話」

『ああ。そう聞いたけど?』

「ふぅん」

 俺は、聞いていない。

 と言うか、正月の予定は決まっていない。

 一緒に過ごそうと話したっきり。
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