続・最後の男

深冬 芽以

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25 家族

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 翌日。

 前日の疲れのせいか、彩は体調が悪そうで、一日中ベッドで過ごした。

「ごめんね、智也」

 晩ご飯のチャーハンを食べた後で、彩が言った。

「仕事、忙しいのに無理して休みを取ったんでしょう?」

 否定はしない。

 実際、札幌本社に出勤し、部下への指示は出しているし、部長印が必要な書類に目も通している。

 だが、無理をしているつもりはないし、有給休暇がたんまりと残っていたのは事実。

 俺は食器の片付けを後回しにして、ベッドに上がった。彩の隣で足を伸ばし、彼女の肩を抱く。

「釧路に戻りたくないな」

「なに、言ってんの。しっかり稼いでくれるんでしょ?」

「そこは『私も離れたくない』とか言うとこだろ」

「現実はそんなに甘くないんです」

 この前の小遣いの話といい、しっかり者の嫁さん口調が、やけにくすぐったくて嬉しい。

 俺は自分が思っていたよりも、尻に敷かれるのが好きらしい。



 ほかならぬ彩の尻になら、いくらでも――。



 変態的な考えに、ゾッとした。

「智也?」

 首元から、彩が俺を見上げる。

 俺は、彼女の額に口づけた。

「あ、テカった」

「え? やだ! もうっ」

 チャーハンを食べた後のキスは、彼女の額を輝かせた。彩は手で額を拭う。

 俺は笑って、額を拭う彼女の手の甲に口づけた。

「婚姻届を出したら、釧路に戻るよ」

 しっかり稼げ、と言ったくせに、彩の表情が曇る。

「正月は一緒に過ごそう」

「ん……」

「姉さんも心配してたから、真と亮も一緒に顔を見せに行こう」

「ん」

「義兄さんも彩たちに会うのを楽しみに――」

「――智也」

「ん?」

 彩が俺の腹に腕を回す。彼女の頬擦りが、服の上からでもくすぐったい。

 俺は、彼女の腕に手を添えた。

「欲しいものがあるの」

「ん?」

 珍しいな、と思った。

 二年ほど一緒にいて、定番のイベント以外で彩が俺にねだったのは、腕時計だけ。ペアにしたのは、俺の希望。

「指輪……欲しい」

「指輪?」

「結婚指輪。……高価なものじゃなくていいから、智也とお揃いの」

 そう言いながら、彩は俺の手から腕を抜き、その手の薬指に触れた。

 左手の薬指。

「変なの」と、呟く。

「何が?」

「指輪なんて興味なかったのに。指が太くて似合わないし、隙間に水が入るのも嫌だったのに」

「じゃあ――」

「――女除け」

 彩が、俺の手に自分の手を重ね、指の間に指を差し込んだ。

「智也は私の、って印」

「それ、普通は逆じゃね?」

「そっか」

 彩が、ふふふっと笑う。

 こんなに可愛いことを言われて、平常心でいられるほど俺は出来た男じゃない。

 下半身が過剰反応する前に、俺は膝を立てた。

「彩の調子のいい時に、買いに行こう」

「うん」
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