15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~

深冬 芽以

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1.今も好きですか?


「――ところ、っと。あとは?」

「そうねぇ。隠し事を――」と言いかけて、ギュッと唇を結んだ。

 嘘は言いたくない。

「――嘘をつかないところ」

「うそをつかないところ」

 和輝は、良くも悪くも嘘をつけない。

 良く言えば正直、悪く言えばバカ正直。

 私を傷つけないための優しい嘘すらつけない。

「次に、お父さんの嫌いなところ」

「嫌いなところ?」

「うん」

「それ、お父さんとお母さんが結婚した理由に結びつかなくない?」

「えー……。好きなとこだけじゃバカップルじゃん」



 どこで覚えるんだ、そんな言葉。



「たくさんあって言いきれないからパス」

「そんなにあるの?」

「嫌いなところって、好きなところと違って細かいの」

「例えば?」

「んーーー……」と、適当にいくつか言えばいいのに、本気で悩む。

「優柔不断なところ」

「ああ! 確かに」



 小学生の娘に納得されるとは……。



「あとは?」

「んー……。都合が悪いと笑って誤魔化すところ」

「ふんふん。あとは?」

「子供に甘すぎるところ!」

「え! 全然甘くないじゃん」

「じゃあ、お父さんに叱られたことある?」

「……ない」

 子供を叱るのは、いつも母親

 父親は知らんぷりか、慰め役。

 ずるい。

「ただいまー」

 玄関から声がして、和葉がリビングのドアを見る。

「最後! 生まれ変わってもお父さんと結婚したい?」

「え……」



 生まれ変わっても……。



 リビングのドアが開き、和輝がネクタイを緩めながら入って来た。

「お帰りなさい」

「ただいま」

「お父さん、お帰りなさい。お母さん、早く!」

 和葉が私の答えを書いた用紙を腕で隠しながら急かした。

 きっと、私の答えは和輝には内緒なのだろう。

「もちろん」と私が答えると、娘はぱあっと顔を綻ばせた。

 和葉は一旦宿題を片付け、私はカレーを温めた。

 和輝用の辛口のカレーライスとレタスのサラダをテーブルに並べる。

「ビール飲む?」

「いや、いい」

 短い会話の後で、私は麦茶をコップに注いでサラダの横に置いた。

「お父さんに質問するから、お母さんあっち行ってて!」

 お父さん用とお母さん用の質問用紙があったのだろう。未記入のものを持って和葉が戻って来た。

「なんだ? 何の宿題だ?」

 ワイシャツの袖を捲りながら、和輝が食卓に着く。

 娘から宿題の内容を聞いて、チラッと私を見た。

「お母さんは終わったから、シャワー浴びてくるね」

 和葉は父親の隣に座り、質問を始める。

「お母さんと初めて会った時の感想は?」

 私はキッチンから廊下に出て、ドアを閉め切らずにじっと中の声に耳を澄ませた。

「若いなぁ」

「それだけ?」

「第一印象だろ?」

「そうだけど!」

 和葉が不満気に言った。

「次! どっちが最初に好きって言ったの?」

「……お母さんはなんて言った?」

「パスだって」

「じゃあ、お父さんも――」

「――ダメ!」

 カチャカチャと、スプーンがカレー皿に当たる音がする。

「……お父さん」

「お父さんなの?」

「どっちかと言えば、な」

「ほんとにぃ……?」



 ほら、嘘がつけない。



 廊下で、私は思わずくすりと笑う。



 友達に焚きつけられて、断れなくなったなんて言えるはずないか。



「お母さんのどこが好きで結婚したの?」

「親のそんなの聞いて楽しいか?」

「宿題だから、楽しいかどうかじゃないんですぅ」

 完全に楽しんでいる娘に翻弄され、たじたじの夫が目に浮かぶ。

「はい! お母さんの好きなところ」

「んーーー…………」



 悩み過ぎじゃない?



「悩み過ぎ!」

 いつもの私と同じ口調で娘が言った。
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