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5.知らなかったでしょう?
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こんな状況だが、和輝と二人で買い物なんて、とても久し振りだった。
週末に買い物に出る時は私一人か和葉と二人、もしくは和輝も入れた三人が多いから。
カートを押しながら、晩ご飯は何にしようかと考えていたら、鍋がいいと言われて、そうすることにした。
味噌だれで、〆はラーメン。
和輝もいることだしと、エコバッグぱんぱんに二つ分の買い物をした。
家に帰って買ったものを冷蔵庫に入れ、コーヒーを淹れる。
着替えてきた夫は、食卓の定位置に座った。
私はいつも由輝が座る席、和輝の正面に座った。
何の音もない空間に、互いの息遣いだけが響く。
「広田と会ったのは、半年……八か月前で、別れて以来だった」
コーヒーを一口飲んで、夫が話し始めた。
「広田は同期だったが、俺と別れた後で転職して、それっきりだったんだ。けど……、その会社も辞めて、うちの下請け会社に移っていた。それを聞いたのが一年くらい前だった」
私は黙って聞いていた。
和輝が言葉を選び、ゆっくり話すのを。
「広田と連絡を取っていた他の同期経由で一緒に仕事をすることになって、時々会っていた」
カップを握り、中の液体を眺めながら話す夫を見て、そろそろ髪を切った方が良さそうだと思った。
前髪が目にかかっているように見える。
「この前、地下でお母さんを見て、広田はすぐに近所の店の人だと気づいたらしい。それで、怖くなったんだそうだ。誤解されたんじゃないかって」
「だから、わざわざお店に来たのね」
「ああ。俺との打ち合わせの前に、どうしても誤解を解きたくなったって言ってた」
確かに、昨日の広田さんは焦った様子だった。
私はふっと息を弾ませた。
「誤解なんてしてなかったのに」
和輝が顔を上げ、私を見る。
「仕事とはいえ、夫が元恋人と会っていたら疑うのが普通だって……思ったらしい」
「……普通、ね」
「本当に、疑わなかった?」
「……うん」
「じゃあ、なんであのカフェから見てた?」
昨夜の続き。
和輝はどうしても、私があのカフェにいたことが気になるようだ。
ゆっくりと深く息を吸い込み、口を開いた。
「綺麗な女性だなぁ、って思って見てたの」
「は……?」
「相変わらず綺麗だなぁ、と思って。あの店でまた働き始めて、彼女がまだあのマンションで暮らしてるってすぐにわかったんだけど、私は平日と、たまに土曜の午前くらいしか店にいないから、顔を合わせることはなかった。そしたら、たまたまあのビルから出てくるのを見たの。昔と変わらないふわふわの髪で、スーツ姿が様になってて、格好良かった。いいなぁって思いながら、見てた」
和輝には理解できない心理なのだろう。
眉間に皺をよせ、私の言葉が本心かを測りかねている。
週末に買い物に出る時は私一人か和葉と二人、もしくは和輝も入れた三人が多いから。
カートを押しながら、晩ご飯は何にしようかと考えていたら、鍋がいいと言われて、そうすることにした。
味噌だれで、〆はラーメン。
和輝もいることだしと、エコバッグぱんぱんに二つ分の買い物をした。
家に帰って買ったものを冷蔵庫に入れ、コーヒーを淹れる。
着替えてきた夫は、食卓の定位置に座った。
私はいつも由輝が座る席、和輝の正面に座った。
何の音もない空間に、互いの息遣いだけが響く。
「広田と会ったのは、半年……八か月前で、別れて以来だった」
コーヒーを一口飲んで、夫が話し始めた。
「広田は同期だったが、俺と別れた後で転職して、それっきりだったんだ。けど……、その会社も辞めて、うちの下請け会社に移っていた。それを聞いたのが一年くらい前だった」
私は黙って聞いていた。
和輝が言葉を選び、ゆっくり話すのを。
「広田と連絡を取っていた他の同期経由で一緒に仕事をすることになって、時々会っていた」
カップを握り、中の液体を眺めながら話す夫を見て、そろそろ髪を切った方が良さそうだと思った。
前髪が目にかかっているように見える。
「この前、地下でお母さんを見て、広田はすぐに近所の店の人だと気づいたらしい。それで、怖くなったんだそうだ。誤解されたんじゃないかって」
「だから、わざわざお店に来たのね」
「ああ。俺との打ち合わせの前に、どうしても誤解を解きたくなったって言ってた」
確かに、昨日の広田さんは焦った様子だった。
私はふっと息を弾ませた。
「誤解なんてしてなかったのに」
和輝が顔を上げ、私を見る。
「仕事とはいえ、夫が元恋人と会っていたら疑うのが普通だって……思ったらしい」
「……普通、ね」
「本当に、疑わなかった?」
「……うん」
「じゃあ、なんであのカフェから見てた?」
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和輝はどうしても、私があのカフェにいたことが気になるようだ。
ゆっくりと深く息を吸い込み、口を開いた。
「綺麗な女性だなぁ、って思って見てたの」
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和輝には理解できない心理なのだろう。
眉間に皺をよせ、私の言葉が本心かを測りかねている。
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