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5.知らなかったでしょう?
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*****
和輝は納得できていない様子だった。
じゃあ、どうすれば納得できるのだろうと考えても、きっとそもそも納得なんて出来ないのだろうと、私はそれ以上話さなかった。
だって、和輝の知りたい私の気持ちは、私にもよくわからない。
だからか、翌日の夫は少しだけ不機嫌そうに出社した。
彼が不機嫌そうだと気づいたのは、私だけだったろう。
いつもようにパートに出て、和葉が帰る時間に間に合うように帰宅し、和葉を連れてまたパート先に行った。今度は車で。
年に一、二度しか会わない和葉の成長に、哉太くんはいつも驚く。
そして、決まって言う。
「柚葉の若い頃に似てんな」
和葉はそれが嫌らしい。
それがわかっているのに、哉太くんは必ず言うのだ。
「性格は全然違うみたいだけどな」と、楽しそうに。
哉太くんの言う通り、娘は私とは性格がまるで違う。
似ているところもあるが、それは娘ならば大抵が似るであろう母親の口調や仕草。
それ以外は、父親に似ていると思う。
その一つが、優柔不断さ。
因みに、由輝は誰に似たのかズボラな性格で、悩むのにも飽きてしまう。
とにかく、悩み出したらとことんで、この日も、サイン帳とお友達三人へのプレゼント選びに一時間半かけた。
私がラッピングした。
「愛華ちゃんのは何色のリボンにする?」
「……ピンク」
娘の表情が浮かないことに気づいたが、ひとまずは急いで帰ることにした。
「あの店長さんとお母さん、仲いいよね」
家まであと十分ほどの場所で、しばらく黙っていた和葉が言った。
「うん? そうね。店長が子供の頃から、お母さん働いてたし」
「ふーん」
「どうしたの?」
チラッと、バックミラーで私のすぐ後ろに座っている娘を見る。
口を尖らせながら窓の外を眺めている。
「愛華ちゃんと喧嘩でもした?」
「……してない」
「そう? 同じ中学なんだし、卒業が寂しいわけじゃ――」
「――愛華、卒業式に出られるかわかんないんだって」
「え?」
「昨日も今日も休んでた」
卒業式は来週の土曜日。
十日後の式に出席できるかわからないなんて、インフルエンザにしても有り得ない。
「先生が言ってたの? 卒業式に出られないかもしれないって」
「ううん。実紗」
「実紗ちゃん?」
実紗ちゃんは、三年生からずっと同じクラスだが、和葉が嫌っているグループの子だから仲良くはない。
実紗ちゃんのお母さんは噂好きのお喋り好きで、驚くほど情報通。私は苦手だ。愛華ちゃんのお母さんと仲が良い印象もない。
「なんで実紗ちゃんが――」
「――あ、お兄ちゃん!」
すぐに見つけられなかった私は、後続車と間隔が空いているのを確認して、ハザードランプを点け、路肩に停車する。
「おにーちゃーん!」
和葉が窓を開けて手を振った。
右手の住宅街から歩いて来た学生服の男の子二人が和葉の声に気が付き、こちらを見た。
由輝と嵐くんだ。
嵐くんと愛華ちゃんの家は、二人が来た方向に向かって二丁先。
由輝と嵐くんは手を振って別れ、嵐くんは私たちに背を向けて走り出した。
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