15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~

深冬 芽以

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5.知らなかったでしょう?

 同じ年頃で、同じ年頃の子供を持っていても、自分磨きを怠らない綺麗な母親はたくさんいる。

 由輝も言っていたように、子供が自慢できるような母親だ。

 子供ができた頃は、そんな自分を思い描いていた。すぐに、現実を思い知ったけれど。

 そして、今の私がいる。

 どんなに目を背けたくても、私は私でしかない。

 そう。問題は私。夫じゃない。

「卒業式、ビデオ回す?」

「え?」

 急に話が変わり、和輝が何のことかと聞き返す。

「発表会の時、動き悪かったじゃない」

「ああ」

「充電も、しておかなきゃね」

「……うん」

 和輝はなにも悪くない。

 彼は良き夫で、父親だ。

 名前を呼んでくれなくても、触れてくれなくても、ちゃんと私を、家族を大事にしてくれる。




 悪いのは、私――。



 負のオートループに足を踏み入れそうになり、ハッとしてコーヒーを飲み干した。

 そして、カップを持って立ち上がる。

「コーヒー、まだ飲む?」

「お母さん、話はまだ――」

「――ただいまぁ」

 娘のご帰宅だ。

 和輝がリビングのドアを振り返る。

「おかえりー」

「おかーさーん」

 娘の力ない呼びかけに、カップを置いて玄関に出た。

「どうした?」

「お腹痛い」

 ベルトをいっぱいいっぱいに伸ばして背負っているラベンダー色のランドセルを下ろしながら、呟いた。

「薬飲む?」

「うん……」

 大丈夫。

 まだまだ、子供に手がかかる。

 大丈夫。

 私はまだ、必要とされている。

 大丈夫。

 ランドセルを受け取り、娘の頭を軽く撫でた。

「おかえり」と、和輝が顔を出す。

「お父さん、どうしたの?」

「ん? あー……」

 困った表情で、夫が私を見る。

 隠すようなことじゃない。

 有休を消化しなきゃいけなくて、と言えばいい。

 理由もなく有休を取ったことがないから、仕事をサボっているような後ろめたさがあるのだろうか。

 妻と話をするために、は彼の中で有給取得の正当な理由ではないのだろう。

 だとしたら、真面目な夫らしい。

「お父さんも、ちょっとお腹が痛くなっちゃったんだって。有休も溜まってるし、無理して悪化したら大変だからって帰って来たの」

「薬飲んだ?」

「ああ、うん」

「じゃあ、寝た方がいいよ。お兄ちゃんが帰って来たらうるさくて寝られないよ?」

 まるで私の言い方そのものだ。

 私がハハッと笑うと、和輝も苦笑いした。

「私も薬飲んで寝るぅ」

「そうしなさい」

 手洗いに洗面所に向かう娘の小さな背中を見ながら、私は呟いた。

「もう、あのカフェには行かないね」

 夫は、何も言わなかった。
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