15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~

深冬 芽以

文字の大きさ
63 / 89
8.今も愛していると言えますか?

「浮気は疑わないのに、時計のことはすごく気にして、なのに向き合おうとしなくて、正直わけわかんなかったけど、なんかわかった気がした」

 私でさえわからなかった感情。

 こうして並べられると、情緒不安定で意味不明だ。

「仕事から帰ったら柚葉がいなくて、すごく心配したし不安になったけど、離婚……されるんじゃないかとかは、思わなかったな」

「思わなかったんだ?」

「うん。全然、思わなかった。けど、怖かった」

「なにが?」

「柚葉の気持ちがわからなくて」

 そう言うと、和輝は私の手を離した。それから、ゆっくりと手を伸ばす。

 彼の手は、切ったばかりの私の髪に触れ、首に触れる。そして、人差し指でうなじを撫でた。

 くすぐったくて、肩に力が入る。

「いいな、この髪型」

 ドキッとした。

 こんな風に触れられたのも久し振りならば、『父親』ではない『男』の表情で見つめられるのも久し振りだ。

「和輝が短い髪が好きなんて、知らなかった」

「うん。俺も」

「え?」

「風呂上がりとか、髪をまとめて上げてるの、いいなと思ってただけ」

「いつの話――」

「――そう思ってたのを、思い出した」

「初めて聞いた」

 こうして話している間も、和輝の手は私の首筋を撫でている。余程、触り心地が気に入ったのか。

「若い子と付き合えて、年上なんだからって格好つけてたせいで、言えなかったこと結構ある」

「例えば?」

「ラブホ、来たかったとか」

「けど――」

 ラブホテルだろうと和輝のマンションだろうと、スルことは変わりないと思うが。

「――こういういかにもってところで、自分の家じゃデキないようなこと、シたいとか」

「えっ!?」

「柚葉に知られたら嫌われて結婚してもらえなかったかもしれないようなこと、結構考えてた」と、夫が苦笑いする。

「お揃いの物、持ちたいとか」

「ええっ!?」

 全く興味がないどころか、そういうのは嫌いなんじゃないかと思っていた。ただでさえこだわりの強い人だから、持ち物を彼女に合わせるなんて嫌がりそうだと思っていた。

 そうだ。

 だからこそ、元カノとお揃いの物を持っているのが嫌だった。

「付き合って初めての柚葉の誕生日のこと、憶えてるか?」

「うん」

 付き合い始めて半年もしないで私の誕生日がきた。

 私は初めてのカレと過ごす誕生日に舞い上がっていたが、その日は平日で、当然和輝は仕事。

 当日は家族とお祝いして、三日後に和輝に祝ってもらった。

「プレゼント買う時、俺もお揃いで買おうかなって言ったら、柚葉すごい困った顔してたろ。あれ、結構ショックだった」

「え? 私、困ってた?」

 記憶にない。



 初めての誕生日プレゼントは確か――。

 

「広田にお揃いの腕時計をねだられた時は興味持てなかったのに、柚葉とはお揃いの物持ちたいと思ったんだよな。あんまり会えなかったから……かな。でも、柚葉にはそういうの重いのかもとか思った……な。まぁ、柚葉に似合うもので俺も持てる物って、そんななかったかもしれないけ――」
感想 7

あなたにおすすめの小説

秘められた薫り

La Mistral
恋愛
エブリスタにて、トレンド#恋愛で最高位 55位を獲得した作品です。 「愛しているよ」という夫の言葉が、今の美咲には虚しい空気にしか聞こえない。 欠けていたのは、理性を焼き尽くすような衝動。 ​クライアントの慎吾と交わす視線。ビジネスという仮面の下で共有される、剥き出しの欲望。 指先が触れる。名前を呼ばれる。ただそれだけで、美咲の積み上げてきた「良き妻」としての世界は音を立てて崩れ去る。 ​完璧なアリバイ、塗り固めた嘘。 夫の隣で微笑みながら、心は別の男の指先を求めている。 一度知ってしまった濃厚な「薫り」は、もう彼女を元の場所へは戻してくれない。 ​守るべき家庭と、抗えない本能。 二つの世界の境界線で、美咲が選ぶ「最後の一線」とは――。 欲望の熱に浮かされた女の、美しくも残酷な堕落の記録。

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

偽りの愛の終焉〜サレ妻アイナの冷徹な断罪〜

紅葉山参
恋愛
貧しいけれど、愛と笑顔に満ちた生活。それが、私(アイナ)が夫と築き上げた全てだと思っていた。築40年のボロアパートの一室。安いスーパーの食材。それでも、あの人の「愛してる」の言葉一つで、アイナは満たされていた。 しかし、些細な変化が、穏やかな日々にヒビを入れる。 私の配偶者の帰宅時間が遅くなった。仕事のメールだと誤魔化す、頻繁に確認されるスマートフォン。その違和感の正体が、アイナのすぐそばにいた。 近所に住むシンママのユリエ。彼女の愛らしい笑顔の裏に、私の全てを奪う魔女の顔が隠されていた。夫とユリエの、不貞の証拠を握ったアイナの心は、凍てつく怒りに支配される。 泣き崩れるだけの弱々しい妻は、もういない。 私は、彼と彼女が築いた「偽りの愛」を、社会的な地獄へと突き落とす、冷徹な復讐を誓う。一歩ずつ、緻密に、二人からすべてを奪い尽くす、断罪の物語。

三度裏切られた私が、四度目で「離婚」を選ぶまで

狛犬
恋愛
三度、夫に裏切られた。 一度目は信じた。 二度目は耐えた。 三度目は――すべてを失った。 そして私は、屋上から身を投げた。 ……はずだった。 目を覚ますと、そこは過去。 すべてが壊れる前の、まだ何も起きていない時間。 ――四度目の人生。 これまでの三度、私は同じ選択を繰り返し、 同じように裏切られ、すべてを失ってきた。 だから今度は、もう決めている。 「もう、陸翔はいらない」 愛していた。 けれど、もう疲れた。 今度こそ―― 自分を守るために、家族を守るために、 私は、自分から手を放す。 これは、三度裏切られた女が、 四度目の人生で「選び直す」物語。

【完結】曖昧な距離で愛している

山田森湖
恋愛
結婚4年目のアラサー夫婦、拓海と美咲。仲は悪くないが、ときめきは薄れ、日常は「作業」になっていた。夫には可愛い後輩が現れ、妻は昔の恋人と再会する。揺れる心、すれ違う想い。「恋人に戻りたい」――そう願った二人が辿り着いた答えは、意外なものだった。曖昧で、程よい距離。それが、私たちの愛の形。

私と彼の恋愛攻防戦

真麻一花
恋愛
大好きな彼に告白し続けて一ヶ月。 「好きです」「だが断る」相変わらず彼は素っ気ない。 でもめげない。嫌われてはいないと思っていたから。 だから鬱陶しいと邪険にされても気にせずアタックし続けた。 彼がほんとに私の事が嫌いだったと知るまでは……。嫌われていないなんて言うのは私の思い込みでしかなかった。

隣の夫婦 ~離婚する、離婚しない、身近な夫婦の話

むらさきさゆり
恋愛
オムニバス形式です。 理解し合って結婚したはずの梓、同級生との再会が思わぬことになる雅美、年下の夫のかつての妻に引け目を感じる千晴、昔の恋の後悔から前向きになれない志織。 大人の女性のストーリーです。

愛のかたち

凛子
恋愛
プライドが邪魔をして素直になれない夫(白藤翔)。しかし夫の気持ちはちゃんと妻(彩華)に伝わっていた。そんな夫婦に訪れた突然の別れ。 ある人物の粋な計らいによって再会を果たした二人は…… 情けない男の不器用な愛。