楽園 ~きみのいる場所~

深冬 芽以

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2.目標

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 毎日、お義姉さんのいない小一時間。

 気味が悪いほど静かになるこの時間が、今は嫌でたまらない。

 お義姉さんがいると賑やか、ってわけじゃない。ただ、彼女の気配だけで落ち着けた。



 なんで離婚したんだろ……。



 一人でいると、どうしようもないことばかり考える。



 早く帰って来ないかな……。

 ――って、高校生以下じゃん。



 俺は沈み過ぎるソファの上で、ただひたすらに彼女の帰りを待っていた。

 ゆっくりと瞼が下りてきて、暗闇に包まれる。

「間宮くん……」

 懐かしい声に、懐かしい名前。

 柔らかな感触と、石鹸の香り。

 甘い夢を見ていた。

 戻れない、幸せだった瞬間ひとときの夢を。

「はやさ……か」

 夢の中で、彼女は涙を浮かべて微笑んでいた。

 夢の中だとしても、彼女に会えて嬉しいはずなのに、意識を手放す瞬間に思い出したのはお義姉さんの顔だった。



 早く帰って来ないかな……。



 遠くでビニールの擦れる音が聞こえる。

 ピーッという電子音が聞こえた瞬間、止んだ。

 トントントン、ザクザクザク、というリズミカルな音が心地良い。

 ジューッという食欲をそそるフライパンの音に、ハッと目を覚ました。

 いつの間にかひじ掛けにもたれて眠っていた俺の身体には、タオルケットがかけられている。

 俺は右手をひじ掛けに置いて力を入れ、身体を起こす。

「あ! 目が覚めました?」

 ソファの軋む音に気が付いたお義姉さんが駆け寄ってくる。

 俺の体勢を落ち着けようと、正面から腰を抱えるように身体を密着させた。

 石鹸の香りに、朧げな夢の香りと感触を思い出す。

「ありがとう」

 彼女は柔らかく微笑むと、パッと離れて台所に戻った。

「お好み焼き、もうすぐ焼けますから」

 フライパンだと思っていた音は、ダイニングテーブルの上のホットプレートだった。

 肉やキャベツの焼ける匂いと音に、俺の腹が音を立てて喜んだ。
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