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3.許し
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しおりを挟む今日は、寂しくなかった。
楽が買い物に行っている間、足を引きずって和室に行き、綺麗に磨かれた仏壇の前に座った。左足を折り、右足を仏壇に向けて投げ出す格好で。ばあちゃんが見たら怒るだろうけど、仕方がない。
「ただいま」
仏壇に飾られた二人の写真を眺めながら、随分と遅い帰宅の挨拶をする。
ばあちゃんが死ぬ一年くらい前に撮ったもので、俺の大学入学の時のもの。
二人がどうしてもと言って、お洒落をして俺が入学式から帰るのを待っていた。ダイニングテーブルにデジカメを置いて、タイマーで撮った三人の写真。
カットされているが、二人の間には俺が写っていた。
ゴソゴソと段ボールを漁り、元の写真を探す。アルバムと段ボールに挟まれて、それはあった。
母さんの遺影に使った後、段ボールに放り投げたその写真中の俺は、ばあちゃんと母さんの間で、照れ臭そうに笑っている。
「どうして俺を手放したんだよ……」
わかっていて、聞いた。
わかっているから、聞いた。
答えてくれたら、「それは違う」と言えるのに……。
カラカラカラと玄関ドアが開く音と、ガサガサッとプラスチックやナイロンの擦れる音。
俺は慌てて、目を擦った。
涙は出ていない。ただ、そんな気がしただけだ。
「帰りました」
「おかえり」
いつものように、冷蔵庫に買ったものを入れて行く。
今日は、昼飯と晩飯をリクエストしなかった。何を作ってくれるのだろう、と楽しみになった。
食材を冷蔵庫に入れ終わると、楽が買って来たかりんとうとバタークッキー、花を仏壇に置いて、俺の隣に座った。
「ずっと座っていたんですか?」
「え?」
「足、辛くないですか?」
正直、曲げている左足が痺れて、動くに動けなくなっていた。痺れをほぐそうと左手で擦っていたからか、楽はすぐに気が付いてくれた。
「足、伸ばしましょう」
段ボールの下敷きになっていた木製の座椅子を引っ張り出し、座るように言った。旅館なんかにある、低い背もたれのついたものだ。
とは言っても自分では動けないから、俺が尻を浮かせた隙間に、楽が座椅子を差し込んでくれた。
「足、動かしますね」
楽が俺の左太ももを持ち上げ、ゆっくりと膝を立て、伸ばして下ろした。
「ありがとう」
「いえ」
「仏壇も、綺麗にしてくれてありがとう」と、ばあちゃんや母さんが生きていた時のように磨かれ、花や菓子が供えられた仏壇を眺めながら言った。
「……いえ」
「ばあちゃんも母さんも喜んでるよ」
「……余計な……ことかもしれないですけど……」と、楽が伏目がちに言った。
「……ん?」と、俺は彼女の覗き込むように首を傾げた。
「お墓参り……行きませんか?」
「……え?」
「明日、お母様の命日なんですよね?」
「……」
顔を上げ、視線を仏壇に戻す。
「……いいよ。古い墓地だから、石段とか斜面とか……あるし」
「お手伝いします」
「結構、遠いし」
「レンタカー借りましょう。私、運転しますから」
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